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日本の長期金利上昇を力ずくで抑えられない理由

 日本の長期金利の跳ね上がりが注目されている。5月23日に日本の長期金利は1.000%ちょうどまで上昇した。

 4月4日の日銀の異次元緩和を受けて翌5日に債券市場はまれにみる乱高下となった。これは期初の中期債を主体とする国債に対する利益確定売りなどとともに、池の中に日銀というクジラが入り込んだことで、国債の流動性への懸念も意識されて、超長期債などが売り込まれたのが要因と思われた。

 その乱高下した相場も次第に収まりかけたが、5月10日にドル円が100円台に乗せてきたことをきっかけに、再び国債は売られ5月23日に10年国債の利回り、つまり長期金利が1.000%に乗せてきたのである。

 5月30日に日銀の黒田総裁は参議院の財政金融委員会で、長期金利の変動について、「長期国債の一部で価格が乱高下して変動が高まり、せっかく金利を圧縮して実質金利を下げていこうとしているのにプラスにならない」と述べたそうである。異次元緩和を決定し、国債の発行額の7割強も日銀が買うというのに、長期金利は低下するどころか上昇したことに、ややいらだちも見せているかのような発言であった。

 ここで注意しなければいけないのが、4月4日の異次元緩和直後の国債の下落と、5月10日以降の相場下落の様子が明らかに異なっていた点である。異次元緩和直後の国債の下落は、中期債と超長期債の下落が全体を押し下げていた。ところが、5月10日以降の売りを先導していたのは債券先物と10年国債であった。つまり売りやすいところを売ってきている。円安・株高も相まって、ヘッジファンドなどが債券先物主体に売ってきたことがひとつの背景になったと思われる。

 それでは日本の長期金利は何故、1.000%に上昇したのか。そのキーは円安と株高にある。何をあたりまえのことを言っているとのご指摘を受けそうだが、そもそもそれでは何故、円安が進み、株が上昇しているのか。これをアベノミクスのおかげ、と取ってしまうと、本質が見えなくなってしまう。

 今回、日本国内の動きだけを見れば、アベノミクス万歳となりそうだが、海外の市場動向を確認すると、別の要因が見えてくる。円安というが、これは相手国通貨があってのものでもある。株高というが、米国株式市場ではダウ平均は史上最高値を更新しているのである。

 ここでひとつのヒントになりそうなものがある。欧米の国債の動き、つまり欧米の長期金利の動きである。日本の長期金利が上昇したが、同じようにここにきて長期金利が上昇している国がある。米国である。米国の長期金利は2.1%台に上昇している。これは何が原因であろうか。FRBがもしかすると6月にも債券買い入れ額を縮小に動きそうだから、と答えが返ってきそうだが、これは答えとしては完全な正解ではないだろう。では何故、FRBは出口政策を模索できるようになったのか。そもそも何故、FRBは非伝統的な緩和策をとらなくてはいけなかったのか。日本のようにデフレで困っていたわけではないはずである。

 この答えは欧州の長期金利の動きをみると見えてくる。日米の長期金利ほどではないが、ドイツや英国の長期金利もここにきて上昇しつつある。それに対して、イタリアやスペインの長期金利をみると、足下少し上昇気味ではあったが、トレンドとしては低下傾向が続いている。

 これが示しているのは、簡単に言えばリスクオフからリスクオンの動きである。FRBが非常時対応の超緩和策を行わなくてはいけなかったのは、リーマン・ショックに続いた欧州の信用リスクの拡大とそれによる金融や経済への悪影響、さらにはユーロそのものの崩壊危機等が原因であった。そのリスクが後退しているのである。だから、出口も見えてきた。さらに、世界的なリスクの高まりの最中に外為市場では何が起きていたか。それは円高であった。だから欧州リスクの後退で、円高調整が入り、そこにうまくアベノミクスが乗っかってきた。ドル円の100円台乗せはアベノミクスのおかげというより、世界的なリスクの後退が背景となり、米国とともに日本の株も上がって、米債とともに日本国債が売られ、日本の長期金利は1.000%をつけたとの見方が可能になる。

 日銀が年間発行額の7割もの国債を買おうとも、ほかの参加者が長期金利は上昇するとみれば、国債は売られる。これが相場である。世界的なリスク後退の傾向が続くとみるのであれば、日本の長期金利の1.000%は通過点となる可能性がある。この相場の流れを日銀が力ずくで押さえ込むことはできない。

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by nihonkokusai | 2013-06-01 10:21 | 債券市場 | Comments(0)
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