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長期金利が1%に上昇した背景

 5月23日の債券先物は1円安の140円90銭で寄り付きとなった。1円安ではあったものの、寄り付き時点ではサーキット・ブレーカーは発動せず(当該値段以外で5分間取引が成立しない場合ではなかったためか)、その後141円01銭に買い戻された。その後再び140円90銭まで売られ、8時53分にサーキット・ブレーカー発動し取引が10分間停止した。解除後に140円70銭まで下落、その後買い戻しが入り141円台を回復。さらに東京株式市場の急落もあり、債券先物は142円74銭まで急上昇し、大引けは142円51銭となった。

 現物債は10年債主体に動きがあり、23日の朝方に10年328回の利回りは1.000%ちょうどまで上昇した。つまり日本の長期金利が昨年4月5日以来の1%台となったのである。その後、株価の急落による債券先物の買い戻しにも影響され、10年債利回りは0.825%まで低下した。

 今回は23日に日本の長期金利がなぜ1%まで上昇したのかについて見てみたい。もちろんヘッジファンドなどによる仕掛け的な動き(債券売り)があったためとも言えるが、ここにはいくつかの要因も重なっていたと思われる。そのひとつはFRBの動向とそれによる米債への影響であった。

 5月22日にバーナンキFRB議長は、上下両院合同経済委員会で証言を行い、「経済の勢いを示す徴候がさらに増えなければ緩和ペースを縮小させることはできない」と述べ、時期尚早の金融引き締めは、景気回復をリスクにさらす恐れがあるとの認識を示した。

 ところが、証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘。この日は4月30日~5月1日に開催されたFOMC議事要旨も発表されたが、複数の議員が、早ければ6月にも資産購入を減額したいとの意向を示していたことが明らかになった。

 FRBが早ければ6月にも「出口」というか「正常化」に向けた動きをはじめる可能性が出てきた。もちろんこのためにはあらためて雇用の改善等を確認する必要がある。ただし、世界的なリスク後退とそれを背景とした動きは、米国株式市場にも現れており、ダウ平均やS&P500種株価指数は過去最高値を更新してきた。22日、23日のダウ平均は続落となったが、それほど大きく下落したわけではなかった。

 バーナンキ発言等を受けて22日の米国債券市場で米債は下落し10年債利回りは2.02%と2%台に乗せた。23日の米10年債利回りも2%台を維持していた。これを見てもあらためて世界的なリスク後退による「超低金利時代の終焉」が意識されてきたものと思われる。これも今回の日本の長期金利が1%をつけたひとつの要因と思われる。

 22日の日銀の金融政策決定会合で金融政策は現状維持となった。現状維持との見方が多かったにもかかわらず、これを受けて債券は下落した。債券市場の動揺に対して何らかの政策を期待するむきも一部にあったようである。

 黒田日銀総裁の会見では、「債券市場、ボラティリティ高く十分注意が必要と警戒を示し、国債買い入れ頻度やペースの調整など弾力的にオペ行う、年間50兆円の買い入れペース変えず、その中で弾力的に対応」との説明があった(ロイター)。特にあらたな対策等が講じられるわけではなさそうである。

 総裁からは「長期金利は短期金利のように中銀が完全にコントロールすることはできないが働きかけはできる」との発言もあった。「量的質的緩和による金利低下圧力の下、長期金利が跳ね上がることは予想していない、長期金利の上昇は物価上昇や景気回復期待の要素ある」とも述べた。どうやら自らの政策が債券相場の流動性に影響を与えた面などは置いといて、あまり危機感は意識していないようにも受け取れた。

 黒田総裁は「長期金利上昇、今の時点で実体経済に大きな影響及ぼすとは見ていない」ともしており、1%程度は許容範囲なのかもしれない。しかし、その速度や価格変動幅はもう少し意識すべきではなかろうか。

 「景気や物価の回復期待、日銀のプレミアム圧縮効果を相殺して長期金利上げることもあり得る、実質金利はたぶん下がっている」との発言もあった。今回の長期金利の上昇は、インフレ予想もいくぶんかあるかもしれないが、市場参加者による日銀への信認への揺らぎなどが影響していた可能性もある。

 債券市場参加者は国債から他の資産に振り向けるというアロケーションなどよりも、日本国債そのものに内在するリスクが異次元緩和で炙り出されてくる懸念とかを意識している可能性もある。日銀がパンドラの箱を開けてしまい、国債市場を安定化させていた基盤が緩み始めたとの見方もできるかもしれない。長期金利は1%をつけたあと急低下した。しかし、一度1%をつけた以上、長期金利はあらたな水準に移行してくる可能性もありうるとみている。

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by nihonkokusai | 2013-05-24 09:56 | 債券市場 | Comments(0)
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