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4月5日の債券相場の乱高下の要因

 4月4日の日銀による異次元の大胆な金融緩和は、円安・株高・債券高を演出したものの、5日の債券市場はいったん高値をつけながら急落するなど、非常に荒れた展開となった。長らく債券市場を見てきたが、これほどの値動きはあまり記憶にはない。この動きを見る限り、日銀の大胆な金融政策の影響により、今後の国債市場への流動性や市場機能(価格発見機能)の低下への懸念も出てきているように思われる。

 債券市場は他市場に比べて、いわゆる手口情報が表に出ることはない。債券市場の取引は債券先物などを除いて、業者と投資家が直接売買する店頭取引が中心である。その際、いわゆる業者と呼ばれるプライマリー・ディーラーを中心とした証券会社などは、投資家との具体的な取引を口外してはいけない、いわゆる守秘義務を負っている。このため、ある程度はそれぞれの債券の値動きなどからそれを推測しなければいけないが、それを前提の上で5日の債券市場の動きを再確認してみたい。

 4日決定された日銀の量的・質的金融緩和の導入を受けて、4日の引けあと10年債利回りは0.425%と2003年6月以来の過去最低利回りを更新した。これまでの10年債利回り、つまり長期金利の最低は2003年6月11日につけた0.430%であった。この日に30年債利回りは0.960%、20年債利回りも0.745%に低下しており、これがそれぞれの過去最低利回りだと思われる(私の手元の記録上)。

 日銀は4日の夕方に具体的な国債買入の方法も発表し、超長期債も含めて大量の国債買入の構図がはっきりした。基金による国債買入は残存1年から3年までのもので毎月2兆円程度を購入していたが、それを加味しても、大きく増えるのが1年から10年までのところであり、超長期債についても発行規模を考慮すると日銀による購入の影響は大きくなる。ただし、1年以下の部分についてはさほど大きくはなかった。

 4日の東証でのイブニング・セッションでは146円44銭の高値引けとなり、LIFFEの円債先物の清算値も146円44銭と買い進まれていた。このため5日の債券先物は買いが先行し、4日の15時の引けからは34銭高の146円38銭で寄り付いた。10年債も0.375%と4日に記録した過去最低水準0.425%を大きく更新しての出合いとなった。

 寄り付き後、債券先物は146円41銭まで買われたが、4日のイブニング・セッションでつけた146円44銭には届かなかった。イブニング・セッションは形式上は翌営業日の約定分に加わるため、5日の高値は146円44銭となり、これが過去最高値として記録に残るのかもしれない。

 10年債利回りも急低下し、0.4%を割り込み一時0.315%まで低下した。超長期債もショートカバーなどの動きも入ったのか、20年債、30年債ともに1%割れに。20年債利回りは0.845%に低下、30年債利回りは0.925%に低下した。これまでの記録は2003年6月11日につけた30年0.960%、20年0.745%であれば、30年債は過去最低利回りを記録したことになる。

 黒田東彦日銀総裁は5日午前の衆議院議運委員会で行われた所信聴取で、金融緩和策の出口戦略について語るのは時期尚早だが、出口のリスクについても検討したい、と述べた。これについては、ほとんど相場には影響はなかったと思われる。

 債券相場は次第に上値が重くなった。円安・株高の進行もあったが、買われた要因が同じである以上は、この株高が影響したことも考えづらい。このタイミングで債券が売られた最大の要因は、あたりまえではあるが、高値にあったための利益確定売りであったとみられる。

 債券先物は10時頃には146円を割り込み、5年債は0.140%、10年債は押し戻されて0.4%台に。1%を割った超長期ゾーンも戻り売りに押され、1%近辺に。この下落のひとつのきっかけとして、10時10分にオファーされるとみられた日銀による新方式の国債買入がなかったためとの見方がある。これはきっかけにはされた可能性はあるが、主因ではないと思われる。オペがないとの理由でその後の暴落を招いたならば、今後の債券相場は日銀のオペの有無で乱高下しかねない。新方式が前日夕方発表されたばかりで、翌日にそれを期待して買い込むような投資家がいるとは思えない。ただし、このあたりは日銀も神経質になったとみられ、7日の日経新聞一面には、日銀の新方式の国債買入は今週スタートするとの記事が掲載されていた。

 後場の債券先物は145円65銭で寄り付き、その後に相場が急落したわけだが、その要因として12時45分に発表された流動性供給入札結果が低調であったためとの見方もある。たしかに市場実勢に比べて低調な結果であったかもしれないが、5日の債券相場の急落は値動きや出来高を見る限り、超長期債主導ではない。ちなみに今回の流動性供給入札は対象が20年債、30年債であった。つまりこれも高値警戒が強まっていたところでのひとつの不安要因にされたに過ぎない。

 それではなぜその後の債券先物は2度のサーキットブレーカーが発動されて、2円94銭安の143円10銭まで下落し、10年債利回りも0.620%まで急落したのか。ここで注意すべきは、ここにきてほとんど動きをみせていなかった中期ゾーンの動きであった。特に5年債利回りが0.210%まで上昇していたのである。ここを最も注目すべきかと思われる。

 4日の日銀の異次元緩和では、超過準備への0.1%の付利は温存された。これは当座預金残高を維持というか増加させるためには必要であるためと思われる。つまりここが中短期ゾーンの利回りのひとつの下限となりうる。このため5年債はその0.1%近くで張り付いていたのだが、それが何故0.2%台にまで利回りが上昇したのか。

 ここで考えられるのは、日銀の大胆緩和を期待して、いわゆる噂で買って事実で売るというスタンスで望んでいたと思われる投資家の存在である。さらに10年債や30年債の利回りは2003年6月の水準以下に低下していたことで、その後のVARショックの経験者であれば、ここはいったん売っておきたい水準ともなりうる。

 超過準備の付利撤廃がなかったことや、短期債の日銀の購入額は減少することで、ある程度のポジション調整を行わざるを得なくなったところが、期初の売りなど伴って、中期ゾーンあたりまで入ったとの観測もあった。どうやらその売りは、日本相互証券の出来高などを見る限り、10年債あたりまで入っていたとみられる。

 そこそこまとまった売りが5年債を主体とした中期ゾーンから、10年債に入り、その結果、7年債に連動する債券先物も急落したものと考えられる。もちろん先物にはヘッジ売りも入った結果、サーキットブレーカーが発動したと思われる。ただし、一部投資家の押し目買いも入ったことで、引けにかけて買い戻され、債券先物は144円02銭で引けており、10年債利回りも0.5%台に低下した。

 5日の債券相場の乱高下で注意すべきは、さすがに高値警戒が出たこともあるが、今後は日銀が国債発行額の7割を購入し、それが長期債や超長期債にも波及することで、量的緩和政策時代には短期市場で、基金による国債買入の影響で2年債あたりまでの市場で起きていたような、市場機能の低下が起こりうることである。つまり流動性が低下し、その分、価格の振れが大きくなる懸念があることを、5日の債券相場は示していたように思われる。それとともにここからのさらなる利回り低下にも限度があることを暗示させるような動きであった。

アベノミクスを理解するための日銀入門

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by nihonkokusai | 2013-04-09 10:03 | 債券市場 | Comments(0)
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