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財政ファイナンスとは何か、牛さん熊さんの国債入門

猫 前回の「アベノミクスを理解するための日銀入門」がたいへん好評だったので、その第二弾として、今度は「牛さん熊さんの国債入門」として、二人にお話を伺いたいと思います。最初に鳩派大学の専任講師の熊さん、よろしくおねがいいたします。

熊 鳩派大学の熊です。どうかよろしく。

猫 そしてもうおひと方は、鷹派総合研究所特別顧問の牛さんです。

牛 鷹派総研の牛です。よろしくお願い致します。

猫 今回はお二人に前回の日銀のお話にも絡めて国債のお話を伺いたいのですが、最初に財政ファイナンスについて、伺いたいと思うのですが。

熊 いきなり財政ファイナンスかね。いくらなんでも最初は国債とはなんぞや、あたりから進めるべきではないのかね。

牛 まあまあ、アベノミクスの人気化で、日銀とともに国債にも注目が集まっているので、話題のトピックを元に二人で話しをして、少しずつ国債のことを知ってもらえれば良いかと思いますよ。

猫 そうしていただけるとたいへん助かります。とりあえずそもそも財政ファイナンスとは何かについて教えてください。

熊 財政ファイナンスとは、中央銀行が政府に対してマネー(資金)をファイナンス(調達)という意味であり、財政赤字の拡大に中央銀行が直接協力をするという意味となる。これは国債のマネタリゼーション(貨幣化)とも呼ばれている。

猫 すみません、何を言っているのかさっぱりわかりません。

牛 政府が発行する国債を日銀が直接引き受けるこということは、政府の財政赤字に対して、日銀が資金を融通することになりますね。つまり政府は国債を市中に発行、つまり民間金融機関などに買ってもらうのではなく、日銀に強制的に引き受けさせて、日本で唯一の発券銀行である日銀は、その分の日銀券を発行して政府に資金を貸すことになるわけです。

猫 政府が民間から借金するのと、中央銀行から借金するのって、そんなに違いがあるのですか。

熊 日本では財政法という法律で、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせてはならないと定められている。つまり財政ファイナンスを禁じているわけだな。

猫 なんで禁じられているのですか。

牛 中央銀行が、いったん国債の引受などにより政府への直接の資金供与を始めてしまうと、その国の政府の財政規律を失わせ、通貨の増発に歯止めが効かなくなり、将来において悪性のインフレを招く恐れが高まります。中央銀行による国債引受は麻薬に例えられることがあります。いったん踏み入れてしまうと常用することになり、元には戻れず最後に身を滅ぼすことになります。先進主要国が中央銀行による政府への信用供与を厳しく制限しているのは、こうした考え方に基づくものです。

猫 禁じられているのは日本だけではないのですか。

熊 米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。また、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっておる。

牛 欧州では1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなっています。ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されているのです。

猫 でも米国の中央銀行であるFRBも、欧州中央銀行(ECB)も、さらに日銀も国債を大量に買っていますよね。国債を大量に買っていても財政ファイナンスとはならないのですか。結果は同じじゃないですか。

熊 結果はさておき、その目的が問題となるわけだな。日銀が金融政策の手段として民間から国債を買い入れて資金を供給するのであれば、それはひとつの金融緩和手段となるわけだ。ところが財政の穴埋めを目的としてしまうと、日銀がまさに政府の打ち出の小槌となってしまうということだ。

牛 有名な高橋是清氏が日銀による国債引受を行った際に、途中まではデフレの解消等のためにうまくいっていたのですが、いったん甘い汁を吸ってしまった政府は、この打ち出の小槌を離そうとしなかったのです。それが結果として、二・二六事件で高橋是清蔵相が暗殺され、その後の日本のハイパーインフレーションの原因となりました。それで戦後に財政法で日銀による国債引受は禁じられたのです。

猫 でも金融緩和を目的しすれば、日銀はいくらでも国債を買って、結果として政府の財政を助けることになりませんか。

熊 日銀が財政ファイナンスではないと言っていれば問題はあるまい。政府も財政再建をしているというポーズを取っていれば良い。それよりも日銀の大胆な金融緩和でデフレを脱却することが、まず先決だろう。

牛 その点にはたいへん危険性が伴いますね。それでなくても国債の買い手として日銀の存在感が強まっている中、日本政府の債務残高はすでに1000兆円も存在しています。このまま日銀が大量に国債を買い続けるとなれば、財政ファイナンスに近いものとの認識が出てくる懸念もあります。このあたり節度ある国債の買入をする必要があると思いますよ。

熊 そう簡単にマーケットが不安がることなどなかろうて。日銀は輪番オペと呼ばれる通常の国債買入には銀行券ルールがある。つまり日銀の保有する国債残高が、日銀の発行している銀行券の残高を抜かないという自主ルールだ。しかし、これは短期債を含んでおらず、さらに基金による買入を含むと、すでに破られたルールとなっているが、市場は一切、動揺は見せておらんだろう。

牛 市場心理というのは、移ろいやすいもので突然変化します。2010年初頭のギリシャもそうだったでしょう。いま大丈夫、こんなに買っても大丈夫、ならこれからもっと買っても大丈夫なんて、どなたが保証してくれるのでしょうか。

熊 そんな悲観的な見方ばかりするから、これまでも大胆な金融緩和を日銀はできなかったのだろう。そのあたりの意識からまず変える必要がある。

猫 でも素人の私が言うのも何ですが、とてもリスクがあるような気もするのですが。

牛 やってみなくちゃわからない。でもやってみたら失敗した、なんてことになったら取り返しが付きませんよ。このあたりはとにかく慎重にする必要があり、たとえ銀行券ルールを撤廃することになっても、その代わりに何かしらの歯止めを設けるなどする必要はあると思います。

アベノミクスを理解するための日銀入門

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by nihonkokusai | 2013-03-31 10:53 | 国債 | Comments(4)
Commented by リバタリアン at 2013-04-02 00:28 x
通貨には価値保存媒体としての機能があります。

財政ファイナンスを行うことは、円の発行体が価値に見合わない不良資産(ジャンク化した国債)を大量に抱えること。その代償は、既発通貨の購買力毀損という形で現れます。

こんなことを恒常的に行う中央銀行の通貨なんて、持ちたくありませんよね。その国の通貨は、価値保存媒体として信頼を無くすのです。

そうなったときに、海外投資活発化の通貨安(好景気)ではなく、資本逃避の通貨安になるでしょう。先進国である以上、決済通貨として一定の地位は保つでしょうが、通貨安は常態化し、長期金利も高止まりするために国内産業は停滞するでしょうね。

……ざっくばらんな理解をしましたが、これで合っていますでしょうか?
久保田先生に添削していただけると幸いです。
Commented by nihonkokusai at 2013-04-02 11:04
円と国債の信用の背景は同じですので、政府への信認が毀損されれば、通貨安となり日本国債も急落し、それは日本経済を直撃するでしょうね。このあたり、藤巻さんのシナリオとなってしまいますが、それを避ける努力がまず必要と思われます。つまり次元の違う金融政策といえども、財政ファイナンスの領域に踏み込むことは、絶対に避けねばならず、その分、金融政策には限界があると思われます。
Commented by リバタリアン at 2013-04-02 16:20 x
久保田先生、ありがとうございます。

円と国債の信用の背景が同じなのは、日銀のB/Sの資産が自国国債で占められているから……ですよね?

私が勉強を始めたときは、円と国債の信任の関係がわからず、???となっていました。
専門家の方々も愛読しているブログで恐縮なのですが、初歩レベルの仕組みで理解不足になっている素人は、思いの外、多いと思います。

一素人の意見として、初心者向け解説の際に、お気に留めていただけると幸いです。
Commented by nihonkokusai at 2013-04-03 09:10
円と国債の信用は両方共に政府の信用なしは成り立たないという単純な理由ながら、日銀のバランスシートの負債の日銀券、資産の国債との認識でも説明はつくかと思います。なるべくやさしく解説したいと思いながら、読んでいただいている対象の方がご指摘のように金融関係者も多く、ある程度専門用語等が入ってしまい、金融関係者以外の方には、読みづらい部分もあって申し訳ないと思っています。キンドル本でも、初心者向け解説本みたいなものもニーズはありそうなので、その原稿もかねて、やさしく解説したものもできるだけアップしていきたいと思います。
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