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議事録に見る2001年3月19日に決定した量的緩和政策

 12年前の2001年3月19日、日銀は量的緩和政策を決定した。今回はそのときの日銀の議事録を元にして、あらたに量的緩和政策の導入を検討と伝えられている新体制となる日銀が何をしようとしているのかを探ってみたい。

2001年3月19日 日銀金融政策決定会合議事録
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2001/gjrk010319a.pdf

 日銀の議事録の最初には出席者が掲載されている。議事録の公表が10年後としたのは、政策委員の任期(5年、再任可能)ということで、10年後には政策委員は現役としては残っていないことを前提に10年後と決められたとされる。このため政策委員には現役のメンバーはいない。そのかわり説明等を行う日銀の執行部のメンバーをみると、企画室審議役に白川方明氏、企画室企画第一課長に雨宮正佳氏の名前がある。2001年に量的緩和政策を決めた際には、この両氏が大きく関わっていたことが伺える。

 白川方明氏はもちろん今日3月19日で任期満了となった日銀総裁である。白川氏が何故、2010年10月にゼロ金利政策の再導入の際に、量的緩和を復活させずに資産買入基金の創設という別な手段を選択したのか。これについては2001年に量的緩和政策を導入した際の反省を生かしてとの意味合いがあったともされる。

 これに対して雨宮氏は2001~06年に採用した量的緩和政策を事務方で立案した中心的な人物とされる(19日の日経新聞)。日銀が18日に発表した人事で、金融政策の企画・立案を担う担当理事に企画畑の中枢を歩んできた雨宮正佳氏が復帰した。19日に辞職する白川方明総裁にとって、いわば最後の人事がこの人事であり、量的緩和政策の導入を避けていた白川氏が、何故、雨宮氏を戻したのか。もちろん20日にスタートする新体制が量的緩和政策を再開させようとしており、そのためのバックアップとして最も適任ともいえる人材を送り込んだとの見方もできる。果たしてそれだけなのか、今回の人事は今後の日銀の動向を見る上でも大きなポイントとなりそうである。

 前置きが長くなってしまったが、12年前の日銀の金融政策決定会合で、特に量的緩和政策導入に関してどのような意見が出ていたのかをピックアップしてみたい。

 「従来の金利をターゲットとした枠組みを超えて、マネタリーベースや日本銀行当座預金の供給額をターゲットに資金供給を増やすことだと思う。このような政策については、これまではコントローラビリティや実態経済への影響に確認が持てないことなどを理由に採用を見合わせてきたが、現下の情勢では著しい弊害がないという限度においた試してみる価値も出てきていると考えられる」(藤原副総裁)

 「ゼロ金利で約束した方が、量で約束するよりもコミットメントの強さは強いと思う。なぜかと言えば、量で約束しても将来のゼロ金利になる保証はない訳である。これに対してゼロ金利で約束すれば将来の各時点で最大限の金融緩和を約束したことになるからである。勿論それに対する注釈として量が直接経済に影響するのであれば別ということがある」(植田審議委員)

 「デフレ・スパイラルを阻止するために、緩和政策を行い、それを物価上昇率が安定的に0%以上になるまでつづけるとのコミットを補強するために国債買い切りオペ増額をセットで打ち出したいと思っている訳である」(篠塚審議委員)

 「マネタリーベースを伸ばした時には、金利へのインパクトよりはおそらくポートフォリオ・リバラランシング、あるいは資産価格、株や為替を通じて機械受注、設備投資に効いてくるような結果が出ている訳である。・・・マネタリーベースを伸ばすことが一種の重要な意味を持っていることが分かったと思う」(中原委員)

 「中央銀行が流動性を潤沢に供給していることを量の面で市場に明示することが重要だと思う。」(三木委員)

 「量的緩和の場合には、物価は貨幣的現象であるというようなことを前提に、量の将来に亘るコミットをすることによって期待インフレ率を上昇させるという考え方が一番基本にあると思う。・・・期待インフレ率を上昇させることは、量を増やす時に片方で節度を求めると期待インフレ率は上がらないかもしれない。そこは非常にリスキーな問題になることは十分踏まえておかなければいけないと思う。」(竹富委員)

 「リザーブ・ターゲッティング、すなわち、実質ゼロ金利になった後に銀行システムにリザーブを追加的に供給し続けていくことにどれ位実質的な意味があるのかについて、私は余り積極的な意味を認め難いと思うし、リザーブ・ターゲッティングに転換することによって、追加的な緩和の余地が大いに生まれてくるような、ある種のいるイリュージョンを与えることにもなりかねないと思う。ただ先程ここは「期待」に影響を与えることが大事な場面だと言ったが、その観点から考えると全く否定し去ることができない要素も入っているように思う」(山口副総裁)。

 新体制となった日銀が、量的緩和政策を再導入するとなれば、12年前にあった議論と同じような議論が繰り返されることが考えられる。何も進歩がないではないかといえば、それまでであるが、ここに金融政策の大きな限界も控えている。「量を増やす時に片方で節度を求めると期待インフレ率は上がらないかもしれない」という竹富委員の発言にも注意を払いたい。「マネタリーベースを伸ばすことが一種の重要な意味を持っている」との中原委員の発言が正しいのか、あらためて試される。

アベノミクスを理解するための日銀入門

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by nihonkokusai | 2013-03-21 09:15 | 日銀 | Comments(2)
Commented by 中央銀行の限界 at 2013-03-21 10:00 x
信用の低下によって起こるインフレではないでしょうか?国債の買い手がいない状況では引き締めもできませんし、中央銀行はなにもできなくなるのでは?巷では需要と供給の変化のみで経済が語られることは多いですが、信用の変化はあまり注目されていない気がします。
Commented by nihonkokusai at 2013-03-22 09:57
通貨ならびに国債への信認こそ最重要だと思います。その信認に変化が生じるような事態だけは避けてほしいです。
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