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再導入が見込まれる量的緩和政策とは何か

 日銀は3月20日の新体制発足後、現在の金融緩和策に代わる新しい枠組みとして、「量的緩和策」を7年ぶりに復活させる方向で検討に入ることがわかったそうである。

 これまでの岩田規久男次期副総裁の発言などから、もしやと思っていたが、次元の違う金融政策とは、どうやらちょうど12年前の今日、2001年3月19日に決定した量的緩和政策に戻るだけのようである。大胆な金融緩和という意味では、前回の当座預金残高の目標値から大幅に引き上げることや、毎月購入する国債の買入額を増額し、その年限も長期化させることが予想されるが、果たしてそれでどれだけの効果があるのかは甚だ疑問である。それはさておき、今回はその量的緩和政策と何であったかを確認してみたい。その前に量的緩和政策にも大きく関わる日銀による国債買入から見てみたい。

 日銀が戦後、国債の買い入れをスタートさせたのは1967年2月で、このとき日銀の買入債券の対象に発行後1年経過の国債を追加した。発行後1年以内の国債を除外したのは、国債の市中消化による原則からいって適当でないという考え方が基になっていた。さらに国債の買入にあたっては、グループ分けをして輪番制とした(グループ分け等はブラックボックスとなっていた)。このため、いまだに日銀の国債買入は「輪番オペ」と呼ばれている。

 量的緩和政策の導入には、1999年2月のゼロ金利政策の導入と2000年8月のゼロ金利解除が大きく影響していた。そもそも1999年2月のゼロ金利政策導入がデフレ脱却よりも長期金利の上昇抑制が意識されていたことで、日銀とすれば長期金利の落ち着きをみて、解除を模索したが、その解除の条件を「デフレ懸念の払拭」に置き換えたことで視点がすり替わってしまった。結果とすればデフレがまさに進行しつつあるタイミングでゼロ金利を解除してしまい、政府は議決延期請求権を行使するなど、解除に反対の姿勢を明確かした。

 米国のITバブルの崩壊も影響し、日銀は2001年に入りあらためて金融緩和をせざるを得ない状況に追い込まれた。その際に当時の速水総裁は、因縁のあったゼロ金利政策を再導入することはせずに、これまでの金融政策方針を180度変えて金融調節目標を「金利水準」から「資金量」に変更したのである。

 金融機関が日銀に預けている平均4兆円ある当座預金残高を5兆円になるように促すとした。これだけでは前回のゼロ金利時の「ブタ積み」状態となんら変わりはなく、効果も限定されるため日銀は長めに使える資金の供給を実施することにした。国債買い切りの額を4千億円(月々2千億円ずつ2回実施している)から増額したのである。しかし、これは歯止めがなければ擬似的な日銀による国債引き受けともなりうるために「日銀券の発行残高」を上限とした。

 2002年1月に日銀は国債買い入れオペ(輪番オペ)の対象を、それまでの発行後1年以内のもの(1年ルール)から、発行年限別の直近発行2銘柄を除くに拡大した。米国でもFRBは資金供給手段の手段として米国債の買い切りを直近発行銘柄を除くという条件付きで行っている。さらに日銀はすでにTB(現在はTDB)の買い切りなど行っており実際に1年というルールが必要かとの問題もあり、1年ルールの撤廃を求める声も強かったことなども、1年ルール撤廃の要因であったとみられる。

 2003年に総裁は福井氏に代わり、量的緩和政策は2006年3月に解除された。この量的緩和政策の解除に伴い、30~35兆円に積み上がった当座預金残高を6兆円程度の所要額に徐々に引き下げたが、毎月1兆2千億円の長期国債の買い入れは継続した。2006年7月にはゼロ金利政策も解除した。これを見てもわかるが、量的緩和政策はゼロ金利政策の延長線上にあったものの、それを導入した速水総裁はゼロ金利政策と言う言葉は封印していたのである。

 2008年に総裁は白川氏に代わったが、世界情勢は緊迫化していた。アメリカのサブプライムローン問題を契機に始まった金融混乱は、2008年9月のリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに、未曾有の世界的な金融経済危機へと発展していった。金融危機に対処するため、日銀も2008年10月31日に利下げに踏み切る。12月19日には無担保コール翌日物金利誘導目標値を0.2%引き下げ0.1%に引き下げ、長期国債買い入れオペを現行の毎月1.2兆円から1.4兆円に2000億円増額した。2009年3月18日の日銀の金融政策決定会合では、長期国債の買い入れを月1.4兆円から1.8兆円に引き上げた。

 日銀は2010年10月に、実質的なゼロ金利政策、時間軸の明確化、さらに国債を含めた資産買入等の基金創立を検討するという包括的な金融緩和策の実施を発表した。これは包括緩和政策と呼ばれた。これは前回の量的緩和における効果等も意識して、あえて量的緩和政策の導入ではないことを意識したものであったと言われる。政策金利である無担保コールレート翌日物金利をこれまでの0.1%から0~0.1%前後に促すこととし、実質的なゼロ金利政策を再開した。そして「中期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していくとし、時間軸を明確化。さらに国債、CP、社債、ETF、J-REITなど多様な金融資産の買入と固定金利方式・共通担保資金供給オペを行うため、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設した。

 量的緩和政策と包括緩和政策の大きな違いは、量的緩和政策は日銀の当座預金の残高を意識したものであったのに対し、包括緩和政策は資産買入を通じて長期金利の低下を促そうとしたところにある。ただし、基金による買入により結果として日銀の当座預金残高は増加することになり、結果からみればあまり変化はないと言える。

アベノミクスを理解するための日銀入門

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by nihonkokusai | 2013-03-19 09:45 | 日銀 | Comments(0)
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