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シラカワ・プットが生まれなかった理由

 バーナンキ・プット、ドラギ・プットがあって何故、シラカワ・プットは出なかったのか。そもそもバーナンキ・プットとは何であるのか。元々は前任者のグリーンスパン・プットから来ているようであるが、要するに米国の株式市場が下落したり下落しそうになると、FRB議長が助け船を出して株価の下落を止めたとされることである。

 プットというのはオプションの売る権利であり、これを購入しておけば保有株の損失を一定額で抑えることができる。たとえば、FRBが株価の下落等を限定的としてくれるという意味で使われた。米国の株価が下落しそうになると、FRBが金融緩和をするか、それを示唆するような発言をすることで下げを限定的にさせてきたとされる。

 ドラギ・プットとは欧州の信用不安が吹き荒れた際に、ECBによるLTROと呼ばれた資金供給を行ったことや、2012年7月にECBのドラギ総裁はユーロ存続のために必要ないかなる措置を取る用意があると表明し、欧州の信用不安を後退させようとした動きによるものである。2012年9月のECB理事会では、市場から国債を買い取る新たな対策を打ち出し、これをきっかけに欧州の信用不安が後退した。償還期間が1~3年の国債を無制限で買い入れるとしたのだが、実際には買入はされずその期待感だけで市場は反応した。やはり9月のFOMCではFRBは無期限でのMBS購入を決めた。これもまさにバーナンキ・プットと言える。

 これに対して日本ではリーマン・ショックからギリシャ・ショック等もあり、円高・株安が進んでいたが、それを日銀の金融政策で反転させることは結果として出来なかった。そもそも長らく続くデフレという現象に対しても何ら有効な手立てを打ってこなかったとの印象が残っており、バーナンキ議長やドラギ総裁と比べて、消極的との印象が拭えない。

 もちろん日銀としても手をこまねいていたわけではなく、金融緩和策を進め、2010年10月には包括緩和政策によりゼロ金利政策や時間軸政策を取り入れ、基金による資産買入(APP)も行ってきた。たがこのような追加緩和による市場への影響は限られた。むしろ日銀の金融政策はサプライズというより、やって当然と受け止められたのである。

 米国ではFRB議長は大統領に次ぐ影響力を持つとされ、その言動に注目が集まるとともに議長はある種のカリスマ性を維持している。それをうまく利用して市場に働きかけを行おうとしている。ECBは2011年11月に総裁が代わったこともあり、そのタイミングをうまく利用して積極的に働きかけ、こちらもドラギ総裁への市場での期待を高めることになった。欧州の債務問題については、ECBしか有効的な手段を持ち得ていなかったことあるが、ドイツなどの反対を押し切るような格好であらたな国債買入等を発表し、その期待感だけでも市場を動かした。

 それに対して日銀の白川総裁は、期待に働きかけるというアナウンスメント効果については、さほど重視していなかったというか、どちらかといえば避けていたようにも思われる。2012年2月の物価の目途の導入時は、そのアナウンスメント効果を生かせる絶好のタイミングであったものの、結果としてみればそれもうまく利用できなかった。

 金融政策は政策変更してもすぐに効果が出るものではなく、時間が経過してから経済に影響が出てくる。それでも政策変更ですぐに市場に影響力を与えようとすれば、アナウンスメント効果を意識する必要がある。しかもそのタイミング次第では絶大な効果も発揮する。それを示したのが、まさにアベノミクスであった。ドラギ総裁は実弾を使わず威嚇だけで敵を退けた。安倍自民党総裁もうまく流れに乗った格好で、口先だけで効果をもたらした。これをうまく使えば、発言者への期待も強まることになる。シラカワ・プットという言葉が生まれなかったのは、この市場の期待に働きかけるという部分が足りなかったからではなかったか。ただし、期待だけでは市場は動かせても実態経済への影響は限定的であり、その成果が伴わなかったり、副作用が大きい事が明らかになれば、期待どころか信認すら失う可能性もある。白川総裁がアナウンスメント効果に対して慎重になっているのはこのあたりも要因であったかと思われる。

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by nihonkokusai | 2013-03-02 14:23 | 日銀 | Comments(0)
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