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政策協定から共同文書へ

 8日の毎日新聞は日銀と政府の政策協定(アコード)について、「互いの連携強化に向けて検討中の政策協定に、雇用の安定を目指す方針を明記する方向で調整に入った」と伝えていた。先日の私のコラムでは、雇用に関する部分を触れていなかったが、これは日銀法では雇用に関する規定はないことで、協定に盛り込むにはやや無理があるとの認識からであった。ところが毎日新聞の記事によると、「協定が現行法の趣旨に沿わない可能性も出てくるため、政府・日銀の共通課題として位置付け、政府側にも経済成長率の数値目標を課す案が浮上している」そうである。

 12月12日のFOMCでは、少なくとも2015年半ばまで低金利を維持するとの文面が声明文から削除され、その代わりに米失業率が6.5%を上回り、向こう1~2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利を低水準にとどめる、という数値のガイダンスに変更された。これも意識されて、日銀の政府の政策協定に盛り込む検討をしていたとも推測される。

 ただし、これについては8日に麻生財務相が、共同文書に「雇用の安定を目指す」方針を盛り込むとの一部報道に関して、雇用の安定は日銀だけに責任を持たせるものではないと否定的な考えを示した(ロイター)。このため、どうやら共同文書に盛り込む可能性は後退した。また、菅義偉官房長官は、8日の閣議後の会見で、政府・日銀の政策協定に雇用の安定が明記されるとの一部報道について「報道は承知しているが、内容についてはまったく関与していない。コメントは差し控える」と述べた(ロイター)。菅義偉官房長官は7日の記者会見で、政策協定(アコード)について、「言葉は分からないが、その方向でやっていく」と述べていたのである。これから推測されるのは、対日銀に関しては麻生氏に一任されており、一部党内にあった雇用の安定をアコードに組み入れる案などについては後退したとみられる。

 毎日新聞は、経済成長率の数値目標を盛り込む案も浮上しているとも伝えていた。これについては、次期イングランド銀行総裁に指名されたカーニー・カナダ中銀総裁が、名目GDP成長率を政策目標に据えたいとの考えを示したことなども影響しているとみられる。日銀内部では実質成長率の目標値の明記を求める声も出ているそうであるが、このあたり日銀とともに政府の責任を明確にする必要があるとの意見も背景にあるようである。しかし、これについても実際に盛り込む可能性はなさそうである。

 今回の協定、ではなく共同文書ではこれまで日銀が示してきた物価安定の「目途(めど)」を「目標」という言葉に代え、その数値も2%と明示する可能性が高い。ただし、その達成時期については、「政府・与党内では2年後や2~3年後とする案が出ているものの、現状が0%近辺だけに、市場から非現実的ととらえられ、日銀の信用を失いかねない(自民党幹部)との判断もあり、期限を設けない方向で調整している」(毎日新聞)そうである。確かに具体的に達成期間を設けることには無理があろう。

 そもそもアコード(協定)という言葉についても、麻生財務相は「(一般的には)理解できない。もっと具体的な言葉にしてはどうか」とも語り(朝日新聞)、政策協定という拘束力のあるものではなく、より緩やかな位置づけとなる文書となる可能性が高まった。

 政府と日銀との連携強化については、組閣にあたり首相が、麻生太郎副総理兼財務相兼金融担当相に検討を指示していたそうである。つまり、今回のアコードではない「共同文書」については麻生財務相の意見がかなり反映されると思われる。その結果、リフレ色は薄まりそうで、インフレターゲットに近い政策ではあるものの、いわゆる数値に縛られるものではなく、裁量余地のあるフレキシブルなものとなりそうである。この動きから推察されるのは、どうやら麻生氏には日銀法の改正等は念頭にはないと思われる。このため共同文書は現行法の枠内でのインフレ目標策となり、これまで日銀が行ってきた政策の延長線上にあるものとも言えよう。

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by nihonkokusai | 2013-01-09 09:32 | 日銀 | Comments(0)
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