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政府と日銀のアコードの行方

 麻生太郎財務相(副総理兼財務・金融・デフレ脱却円高対策担当相)は、6日のNHKの番組において経済財政諮問会議で政府と日銀が会合することになる点を指摘し、「諮問会議をやってた時は首相、財務相、日銀総裁が月に1回会合し、その場で話ができた。協定を結ぶのは普段会わないからだ。諮問会議再開を決めているので、その段階で常に話が通れば、改めて協定を結ぶ必要はない」との認識を示した(ロイター)。この発言は、アコードの締結までは必要ない、との認識を示したものとも受け取れる。

 これに対して、7日に菅義偉官房長官は記者会見で、政府と日銀による政策協定(アコード)について「その方向でいくだろう」と述べ、締結が必要だとの認識を表明した。さらに「アコードというのはわかりにくい言葉だが、選挙戦で掲げたことは必ず実現する」とも述べている。確かに安倍自民党総裁は昨年12月19日、白川日銀総裁に政府とアコード(政策協定)の締結を要請していた。

 民主党政権下では首相と閣僚の意見が180度異なる場面はあったものの、今回の件についていきなり安倍氏と麻生氏というツートップの意見に相違が出ることはまずいはずである。政権樹立後、早くも閣内意見が異なるとなれば支持率等にも影響する。むしろ、2人の見解がそれほど大きく異なっているとの見方はしづらい。このあたりどのように解釈をすべきか。

 安倍首相は年初の挨拶で、2%の物価目標と為替水準に対して日銀に責任を持って対応してもらうと発言していることからも、特に日銀へのプレッシャーを弱めたわけでもなさそうである。これに対して日銀は中長期的な物価の安定について検討という形式で、すでに2%の物価目標を検討しているとみられる。為替水準についても、日銀の追加緩和への期待もあり、すでにドル円が88円台を回復している。これらの動きから、ある程度自らの主張は取り入れられているとの認識もあろう。

 日銀の窓口となるのは財務相となり、ここに元首相でもある麻生氏が就任した以上は、麻生氏の意見も当然ながら取り入れる必要がある。現在の麻生氏はさほどリフレ的な意見ではないとみられており、日銀の独立性を毀損させかねない動きは避けたいとの認識ではなかろうか。ここにきて、日銀法改正に関する意見もさほど聞かれなくなっており、今回のアコード締結に関する意見の相違については「日銀法改正」について、その可能性が後退したとみて良いのではなかろうか。

 これについては、菅義偉官房長官が「(現行の)日銀法でも政府と日銀が密接に連携するとうたっている。一体となって目標に進むのはあたりまえだ」と語ったそうである(ロイター)。この発言は日銀法について、現行法でも問題はないと認識しているとも受け取れなくもない。

 つまり、これまで自民党は「アコード」がいったい何を示すかを具体的には提示していなかった分、解釈に幅も生まれる。当初の安倍氏の発言については、日銀法改正まで意識してのアコードであった可能性はあるが、さすがにそこまで踏み込むとなれば国際的に非難が出ることも予想され、市場も動揺する懸念が強まる。そもそも日銀法改正にはかなりの時間も有することで、そんな時間的猶予もなかろう。それならば、2%の物価目標について共同文書のような形式で打ち出せば、それもアコードとして判断されうる。そのあたりを落とし所としたのではないかと推測されるのである。

 さらに日銀総裁人事についても、麻生財務相は「どこの役所(出身)だからダメということはない。能力があるということが大事だ」との考えを示した。また、「健康、組織運営、語学の3つを兼ねている人が望ましい」とも述べており、学者は組織を運営したことがなく、日銀総裁にはふさわしくないとの考えも示している。甘利経済再生相も「優秀な人であれば出自は問わない」との認識を示した。これらの発言から見る限り、次期日銀総裁人事については、リフレ派と呼ばれる学者の起用等はむしろ考えづらくなり、財務省出身者などの可能性も出てきた。

 どうやら安倍政権前に危惧されていたようなアベノミクスのリスクに対する懸念は多少なり後退してきた感がある。むろん日銀が2%の物価目標を定めたとして、いったい何をしてくるのかという問題もある。しかし、ひとまずアナウンスメント効果も意識されて、円安株高の動きも加速されている。日銀もこの効果についてはある程度、認識せざるを得ない面もあろう。日銀によるアナウンスメント効果については市場参加者もやや物足りなさを感じていた部分もあっただけに、政府からの圧力の結果ではあったものの、日銀の変化も感じとっていたのではなかろうか。いずにしても、政府も日銀も今回の円安株高という結果を見て、多少なり軌道修正を行ってきているのではないかと思われる。

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by nihonkokusai | 2013-01-08 09:45 | 日銀 | Comments(0)
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