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二代目平成の高橋是清への期待と不安

 平成の高橋是清と呼ばれた人物がいた。高橋是清と同様に異例ともいえる総理大臣の経験者が蔵相となった宮澤喜一氏である。そして今回の第二次安倍政権でも、総理大臣の経験者である麻生太郎氏が財務相(副総理兼財務・金融・デフレ脱却円高対策担当相)に就任した。いわば麻生財務相は、二代目平成の高橋是清と称されてもおかしくはない。もちろん、ご本人は二代目と呼ばれるのを嫌がるかもしれないが。

 二代目を語る前に、初代がいかなる蔵相であったのかを確認してみたい。宮澤喜一氏は1998年に小渕内閣が発足した際に、未曾有の経済危機に対処するため小渕恵三首相から大蔵大臣就任を要請され、それを受諾した。戦前に活躍した高橋是清と同様に異例の総理大臣経験者の蔵相就任となったため、平成の高橋是清と呼ばれたのである。

 首相を経験し、犬養内閣の成立の際に蔵相に就任した高橋是清は積極財政によって当時の日本の経済を立て直した。宮沢氏には同様の働きを期待されたものと思われる。実際、宮澤喜一氏はもともと自らケイジアンと称したとされ、やはり積極的な財政政策を推し進めることになる。

 宮澤喜一氏は続く森内閣でも蔵相に留任し初代の財務大臣となった。つまり宮沢氏は、小渕政権と森政権を通じて(1998年7月-2001年1月)、蔵相・財務相となっていた。1998年7月に成立した小渕恵三政権では次々と経済刺激策を打ち出し、国債が大量に増発された。これをきっかけに米格付け会社が日本国債を格下げしたり、1998年末には運用部ショックと呼ばれた国債の急落も招いている。

 「一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移」のグラフを確認してみると、1998年(平成10年)あたりから、歳出総額と税収の差がさらに大きく開いていることがわかる。つまり、宮沢蔵相による積極的な財政政策により「ワニの口」が大きく開きだしたきっかけになっている。当然ながら新規国債発行額も平成10年度に大きく増加した。

「一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移」、財務省
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/003.htm

 そして、今回の安倍新内閣では麻生太郎氏が財務相となったが、やはり麻生氏も高橋是清や宮沢氏と同様に、積極的な財政論者として知られる。

 麻生氏は2008年9月24日に第92代内閣総理大臣に就任したが、その数日前の15日にリーマン・ブラザーズが破綻し、いわゆるリーマン・ショックが発生した。これは麻生氏にとって、ある意味良いタイミングであったのかもしれない。財政再建が叫ばれていた中にあり、世界的に金融経済ショックを理由に、積極的な財政政策が取れたためである。10月末には事業総額26.9兆円の追加経済対策を発表するなど、最終的には75兆円規模の景気対策を実施した。

 ここでまた「一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移」のグラフを確認してみると2009年度に、さらに口が大きく開いていることがわかる。

 そして今回、その麻生氏が二代目平成の高橋是清として登場した。麻生財務相はデフレ脱却を図るためとして、政府による財政出動が必要であると27日のNHKのニュース番組で発言している。安倍政権はすでに10兆円規模とされる補正予算の編成を打ち出しており、麻生財務相は初閣議後の記者会見で、今年度の国債発行について民主党政権が定めた44兆円の発行枠に、こだわらないとの考えを示した。

 今年は欧州における信用不安の後退などから円高修正の動きが入り、安倍氏による発言等がその動きを加速させることになった。円安進行を好感し株も買われ、日経平均は28日に一時10400円台まで上昇した。この株価の上昇の背景には、政府による積極的な財政政策への期待も含まれていよう。

 しかし、これによりワニの口はさらに大きく拡がることが予想される。いったいいつまでワニは口を開けていられるのか。アゴが外れてしまうと財政政策どころではなくなる恐れもある。そんな期待と不安が、二代目平成の高橋是清には存在する。

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by nihonkokusai | 2012-12-30 11:48 | 財政 | Comments(0)
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