「ほっ」と。キャンペーン

牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

円安株高の主因はアベノミクスではない

 犬が人を噛んでもニュースにはならないが、人が犬を噛むとニュースになる。金融関係であれば、危機的状況が起きれば大きくニュースとして報じられるが、その危機が収束に向かってもそれはあまりニュースにならない。

 金融市場関係者であれば、当然のごとくチェックしていることでも、金融にあまり関わりの無い人にとっては、金融に関する最新情報はテレビや新聞などのマスコミから伝わる物を鵜呑みにしがちかと思われる。

 19日夜のテレビのニュースでは、円安・株高の要因として真っ先にユーロ圏の信用不安の緩和も指摘はしてはいたが、あくまでそれは前置きの格好であり、安倍政権への期待の強さを強調していたように思われる。これではまるで政権交代が円安株高を誘発したかに見える。

 たしかに政権交代への期待感が、円安を背景として株高を演出した要因のひとつであることは確かである。しかし、そもそもこの円安そのものは日銀による追加緩和期待だけが背景で起きたものではない。たとえ政権交代はなくとも、円は売られやすい地合となっていたことも認識しておくべきかと思われる。

 ここにきての円安の直接的な理由は、これまでの極端な円高の動きの修正が入ってきたためである。それにはリーマン・ショックが冷めやらぬ中で発生したギリシャを主体とした欧州の信用不安が、ECBとともに独仏を中心としたユーロ諸国の必死の努力により、少なくともユーロ崩壊といった最悪の状況に陥る可能性が後退したことが大きい。

 ギリシャ・ショックを示す象徴的な指標は何であったのかを思い出してほしい。もちろん外為市場でのユーロ売りもあったが、それよりもギリシャ国債の急落、つまりはギリシャの長期金利の急騰がまさに象徴的なものであったはずである。ユーロからの離脱も取り沙汰された2012年3月にギリシャの長期金利は40%近くまで上昇した。

 ところが12月19日のギリシャの長期金利は、一時11.33%にまで低下しているのである。2010年初頭にギリシャの財政状況の悪化が表面化し、ギリシャの長期金利は5%近辺から一気に10%を超えてきた。そこから上昇基調を辿ることになる。今年3月には40%近くまで上昇したが、その後は低下基調となり、ギリシャの長期金利はひとつの節目ともみられる10%近くにまで低下し、ピーク時からは三分の一以下となっている。

 ギリシャの長期金利ばかりではない。ポルトガル、スペイン、イタリアの長期金利についても同様に低下基調となっている。

 そもそも何故、円高の動きが強まったのかを振り返ってほしい。これは日本のデフレ圧力が強まったとか、欧米に比べて金融緩和の度合いが低かったことが主因ではない。リーマン・ショックの際も日本への直接的な影響は限定的であったことや、ユーロの信用不安も加わって当初はドルから、その後はユーロからの逃避的な動き、つまりはリスク回避の動きが円高の主因であったはずである。従っていくら為替介入をしようが、根本的なリスク要因が排除されなければ、円高基調を止めることはできなかった。

 そして今回の円安への反転も為替介入等によるものではないことは明らかである。それは根本的なリスク要因が排除されつつあることが最大の要因である。そして、世界的に東京株式市場の反発が出遅れていたのは、この円高が大きな要因となっていた。円高という足かせが外れてきたことで、株式市場も息を吹き返し日経平均は1万円の大台を回復したのである。

 このあたりの背景説明をしっかりやっておかないと、まるでアベノミクスが円安株高を招いた救世主の如くイメージされかねない。日銀が仕事をしてこなかったから円高を招いたといった認識が強まり、日銀の独立性を失わせ、さらに財政ファイナンスを意識させるような動きを強めると、今度は日本が世界的なリスク要因になりかねない。



*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2012-12-21 09:45 | 債券市場 | Comments(3)
Commented by あほらし at 2012-12-22 00:47 x
まあとりあえず筆者と同調者は円の動きと株の動きのグラフと解散宣言、金融緩和発言の内容、浜田教授登場のタイミングと合わせて見てみればいいよ。
これで関連性が認められないというならもう事実は関係ない方なのか、よほど視力が落ちている方なんでしょう。
将来的には知らないけれど、今円安、株高期待があることは間違いないのですから。
Commented by 為替リスクの大小 at 2012-12-25 08:42 x
ユーロ加盟国同士で輸出し合っても共通通貨による決済なので為替リスクはなく、また、アメリカからの輸出もドルが基軸通貨であることから自国通貨で決済する機会も多い、この欧米のライバル国に対し日本や韓国からの輸出は為替リスクが高く、通貨安になったとしても海外現地生産の流れは止まらないのでは?
Commented by 為替リスクの大小 at 2012-12-25 08:48 x
通貨安による所得収支の増加は見込めても、雇用創出という観点での大きな効果は期待薄ではないかと?
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー