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アベノミクスのリスク

 12月16日の衆院総選挙において、自民・公明両党は、衆議院のすべての議席の三分の二を上回る325議席を獲得した。これにより、自民党が政権に返り咲き、安倍政権が発足する。

 安倍氏はこの総選挙に向けて、これまでリフレ政策とともに積極的な財政政策を推し進めることを主張してきた。これはアベノミクスとも呼ばれた。外為市場や株式市場からはある意味、期待を込めた用語であるかもしれないが、金利市場の関係者からは懸念を込めて使われる用語と思われる。

 今後の組閣に向けての人事はこれからであるが、すでに麻生元首相の副総理兼財務相就任の観測や、米エール大の浜田宏一教授を内閣官房参与(経済担当)に起用する方針を固めたとも伝えられている。麻生氏は財政積極派であり、浜田教授はリフレ政策を推進する立場にいる。

 リフレ政策と言っても何をするのか。さすがに日銀による国債の直接引き受けについては、安倍氏は発言していないと否定し、3%との物価目標はその後2%に修正された。また、マイナス金利等の発言もあったようだが、それものちに聞かれなくなった。しかし、物価目標を設定した上での大胆な金融緩和政策を日銀の責任のもとで行うことを提唱し、国土強靭化策として積極的な公共投資を推し進めようとしている。

 来年3月には日銀の二人の副総裁が任期満了となり、4月は白川総裁の任期が満了となる。日銀総裁人事を含む国会同意人事には、三分の二の規定は適用されない。つまり参院では過半数に達していない自公だけでは新たな総裁人事を通せない。それでも安倍政権はリフレ派に近い人材を総裁に起用しようとしてくることが予想される。

 たとえば物価目標を政府が設定し、その対策は中央銀行が行うとのスタイルは英国などで行われているインフレターゲットに近いものである。ただし、日本ではあまりに日銀の独立性が強いために日銀法を改正して、このインフレターゲット政策を導入させようとしている。ここに積極的な財政政策による国債の増発等も絡んでくれば、新政権が意図しているのは、財政ファイナンスそのものに見える。否定はしたが、日銀による国債引受を含めてのいわゆるマネタイゼーションを意識したものと捉えられてもおかしくはない。

 つまり、アベノミクスは端的に言えば、財政ファイナンスやマネタイゼーションのリスクを抱えた政権となりうる。これにより今後、何が起きるのか。これについては拙著の「超低金利時代の終わり [Kindle版]」でも指摘したが、一時的には皆、ハッピーになる。現在すでに円安・株高が進行するなど、その兆候が出ている。国債についてもたとえ日銀が直接引受とはならなくても、それに近い政策が取られ、今後さらに日銀が国債の買い手としての存在をさらに高めることが予想される。これにより国債増発があっても、市中での消化余地も十分にあることで、当面の間は国債の需給面では懸念が出るようなことは考えづらい。

 ただし、そんな都合の良い状態が続くことはない。デフレの期間があまりに長かったこともあり、急激な物価上昇とともに、金利がいきなり大きく上昇することは考えづらい。その間は確かにハッピーな状況は継続しよう。しかし、過去の歴史を振り返ればわかるように、いずれこれまで顕在化してこなかった「財政リスクプレミアム」と呼ばれる上乗せ金利が長期金利にオンされてくることが予想される。2%あたりまでの金利上昇であれば、とりあえず大きな問題は発生しないが、これが2%を超えてくるとなれば、これだけの巨額債務を抱えた上での長期金利の2%超えという、債券市場関係者にとり未体験ゾーンに突入する懸念が出てくる。これこそがまさにアベノミクスのリスクとなりうる。

 キンドルの電子書籍にて書き下ろしました「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」(定価300円)にも日銀の国債引受のリスクについて書いてます。是非、読んでみてください。

「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」


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by nihonkokusai | 2012-12-18 09:33 | 国債 | Comments(0)
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