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長期金利のトリック

 このコラムは債券市場関係者以外の方にも読んでいただいているようなので、今回は債券関係者にとっては当たり前のように思っていることでも、市場関係者以外の方には何でだろうということについて説明してみたい。できれば債券市場関係者にも読んでいただき、そこはおかしいだろうという点があれば、むしろ御指摘いただきたい。

 今回は日本の長期金利の「これは何故」を取り上げたい。12月4日の日本の長期金利は「0.695%」をつけた。この日の債券先物は144円87銭で引けている。そして翌12月5日の債券先物は145円01銭まで買われ144円99銭で引けるなど上昇、つまり債券は買われていた。長期金利も5日には「0.710%」に低下していたのである。これを見てどこかおかしいと思わないであろうか。

 債券の価格と利回りは反対に動く。つまり債券が買われ、価格が上昇すると利回りは低下する。4日から5日にかけて債券先物の価格は上昇し、長期金利も低下したはずなのに、その長期金利は4日の引け(日本相互証券ベース)の0.695%から、5日の引け0.710%に「上昇」していたのである。

 もちろんここにはトリックならぬひとつのカラクリが存在している。種明かしをすれば、4日の長期金利のベースとなる国債と、5日の長期国債のベースとなる国債の銘柄が異なっていたのである。

 日本の長期金利と呼ばれるものは、10年国債の利回り(単利)を示す。それもカレント物と呼ばれる直近入札された10年国債の利回りである。昔はそうではなく指標銘柄と呼ばれた発行額の多い銘柄に売買が集中したが、現在はどの銘柄も大量に発行されていることで、指標銘柄と言う言葉はすでに死語となった。ただ店頭ではあちらこちらの業者でそれぞれ売買されていて、そこで付いた利回りは外部からはわからない。このため参考にされるのが日本相互証券での10年国債カレント物の値動きというか、利回りの動きになるのである。

 12月4日に10年国債の入札があった。このため4日までは11月に入札された325回債の利回りが長期金利となっていた。4日に入札された国債は326回債となり、325回と利率も異なるが、償還期間も3か月延びることになった。現在のイールドカーブの形状、つまり短い金利と長い期間の金利を比べると、長い期間の金利が高いという状態(スティーブ)となっている。つまり償還が3か月延びることで、利回りが0.03%程度上昇するのである。

 ここでもうひとつ国債の入札の仕組みについて確認しておきたい。たとえば10年国債などについては、四半期に一度に償還日が集中するような仕組みになっている。つまり3月から5月に入札される10年債の償還は10年後の3月、6月から8月が同6月、9月から11月が同9月、そして12月から2月が同12月となっている。よく銘柄統合とかリオープンと呼ばれる発行方法があるが、これは同一の償還日でなおかつ同じ利率となったものが、同じ銘柄として発行されるものである。

 つまり12月4日の長期金利は2022年9月20日に償還される325回の10年国債の利回りであったのが、12月5日は2022年12月20日に償還される326回の10年国債の利回りであったため、そこに償還期間の関係で0.03%程度の上乗せ金利が発生したのである。

 このため4日から5日にかけて債券相場は上昇していたが、表面上の長期金利は上昇してしまったかのようになっていたのである。ただし、これについては長期金利は低下したとの報道もあった。これは4日の326回の利回りである0.725%からは低下していたため、そのような指摘がされたものと思われる。

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by nihonkokusai | 2012-12-07 09:27 | 債券市場 | Comments(0)
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