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英国に学ぶべき中央銀行総裁人事の在り方

 11月28日にコラム「カナダ人のカーニー氏がイングランド銀行総裁に」 でも書いたが、次期イングランド銀行総裁人事はたいへん興味深い。新政権には、来年4月の日銀総裁選びに参考にしてもらいたいが、その参考にすべき部分がまだあった。12月2日の毎日新聞の社説「視点・英国中銀の人事 政治の対応に学びたい」でそれが指摘されている。

 「衆院選でかつてなく金融政策が話題になっている日本でも、参考になりそうなことがある。外国人の起用そのものではない。中央銀行やその最高責任者である総裁というポストを国の資産として大事にする英政治家の姿勢である。」(毎日新聞社説より)

 日銀はイングランド銀行などが採用しているインフレターゲットを見習うべきとの意見があるが、その英国の政治家は果たして中央銀行総裁人事をどのように捉えているのか。今回のイングランド銀行の総裁人事で、そのあたりが明らかになった。

 「今回、外国人でしかも現職より17歳若いカーニー氏を起用する異例の人事となったが、議会は与野党を通じ好意的だった。英国では財務相が首相に人事案を示し、首相がそれを女王に諮り、女王の承認を経て任命する形をとっている。ジョージ・オズボーン財務相は議会を発表の場に選び、カーニー氏が「実績、資質両面において世界で最も適任だ」と強調した。」(毎日新聞社説より)

 伝統あるイングランド銀行の総裁に外国人を起用するという、ある意味突拍子もない人事について、その発表の場にいた議員達は与野党ともに好意的であったという。これにはカナダの中央銀行総裁としての実績も意識されていたろうが、しかし外国人である。

 「カナダは先進国で一番早くリーマン・ショックから抜け出した。危機前の健全財政や銀行規制が奏功したという。そのカナダで中央銀行の正副総裁を務め、民間金融機関での経験もあり、国際的な金融規制にあたる組織の長も務めるカーニー氏の力を借りよう、と呼びかけた。」

 「それに対し、労働党の影の財務相、エド・ボールズ氏が「カーニー氏を選んだ大臣をたたえたい」といち早く評価。オズボーン財務相も、「イングランド銀の独立性上重要なことは、党派を超えた支持だ。我々は総裁人事を日々の政治対立に巻き込まないよう努めねばならないが、本日、ボールズ氏はそれを実践してくれた」と感謝した。」(毎日新聞社説より)

 エド・ボールズ氏といえば、1997年5月にイングランド銀行に独立性をもたらした影の立役者というかシナリオライターであったことはご承知の通り。真っ先に評価したのが、その野党側の影の財務相であった。それについてオズボーン財務相は感謝の言葉を述べている。「(中央銀行)総裁人事を日々の政治対立に巻き込まないよう努めねばならない」との言葉は、日本の政治家にもしっかりと聞いてほしいところである。英国の与野党との間では、特に中央銀行の在り方については、独立性という観点で認識を共有していた。

 「こうした対応は今に始まったわけではない。労働党が政権交代を狙っていた90年代半ば、イングランド銀への独立性付与を検討していたボールズ氏らは当時のエディ・ジョージ総裁との定期的な対話を望んだ。総裁が保守党政権のケネス・クラーク財務相に相談すると「労働党が政権を取る日も来るだろうから、対話は大いに結構」と、むしろ後押ししてくれたという。」(毎日新聞社説より)

 このあたり政治家の器量もうかがわせる。中央銀行総裁人事は決して政争の具にしてはいけない。そのような当たり前の認識を英国の政治家には共通認識として持っていたようである。ある意味、世界史の中で中央銀行の基盤を作ったのがイングランド銀行であるが、政治と中央銀行の在り方としては歴史ある国に日本も見習うべき点もあるのではなかろうか。

 「そうした風土に支えられた中央銀行総裁と、常に政治圧力にさらされた総裁のいずれが、国益により貢献できるだろう。」

 「日銀や日銀総裁の人事を巡る議論には世界も注目している。中央銀行という国民の資産は、当事者だけでなく、政治家も価値を高める努力が必要だということを忘れてはいけない。」(毎日新聞論説委員・福本容子)

 今回の衆院選挙では、金融政策もひとつの焦点となっている。日銀法改正まで党の公約として出している党もある。日銀法を改正して、いったい何をしたいのか。さらに闇雲にインフレ政策を取るような総裁を選ぶべきであるのか。このあたりについては選挙を控えた我々にも責任がある以上、しっかりと考えておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2012-12-05 09:16 | 中央銀行
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