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日銀が建設国債だけを市場からは買えない理由

 安倍自民党総裁の金融政策を巡るトーンが少し変わってきているようであるが、それでもまだ「物価目標2%達成するまで無制限な金融緩和を」、「物価目標2%超で、引き締めに入る技術が中央銀行に問われている」というやや理解に苦しむ発言が出ている。それはさておき、ここでもう一度11月17日の安倍総裁の発言について確認してみたい。ただし、今回は建設国債の発言に関する部分である。

 自民党の安倍総裁は11月17日に熊本市内で講演し、衆院選後に政権を獲得した場合、金融緩和を強化するための日銀法改正を検討する考えを重ねて表明した。「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていく」と述べ、日銀が建設国債を全額引き受けるのが望ましいとの考えを表明した(日経新聞)。

 同日、山口市では「輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」(安倍総裁)との発言もあったようだが、それはさておき今回は「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう」との発言部分にあらためて注目したい。

 この「建設国債」に違和感を覚えた人は私を含めて少なからずいたのではなかろうか。なぜならば、市場から建設国債を買うのは非常に難しい、というかまず無理であるためである。毎年何兆円も建設国債などの国債が発行され売買されているのに、それはおかしいだろうと言われるかもしれないが、とにかく建設国債だけを市場から買うことは技術的に無理である。

 2012年度の国債発行額を財務省のサイトで再確認してみたい。今年度の国債発行額はトータルで174兆円となっている。このうち建設国債が約6兆円、赤字国債が約38兆円、復興債が約2.7兆円、財投債が15兆円、借換債が約112兆円となっている。そしてカレンダーペースの市中発行額が約150兆円となっている。

 国債には建設国債、特例国債(赤字国債)、復興債、財投債、借換債というようにいわゆる発行根拠法別に種類分けがある。ところが国債は、ご存じのように割引短期証券、2年、5年、10年、20年、30年、40年、個人向け国債等々のかたちで発行されている(詳しくは拙著「最新国債の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システムなどをご参照いただきたい)。

 FBとTB(割引短期証券)が混在して国庫短期証券として発行されているように、2年債とか10年債は入札、発行される毎にそれぞれ発行根拠法別に混在されて発行されている。それぞれ発行根拠法別(建設国債なのか特例国債なのか等)の管理はされているが、それを把握できるのは財務省だけなのである。つまり投資家が購入した10年国債が、建設国債なのか赤字国債なのか、借換債なのか保有者はわからない。

 ここで借換債が出てきたが、そもそも借換債は建設国債と赤字国債であり、それぞれ60年かけて償還されなければいけないため(60年償還ルール)、借換債が発行されている。つまりこれらも元々は建設国債や赤字国債である。

 市場で売買される際の国債は、建設国債とかを買うのではなく2年国債や10年国債を買うことになり、それが発行根拠法では何になるのかはわからない。いくら国債の資金のやり取りを任せられている日銀といえども、発行根拠法別で建設国債だけを市中、つまり市場から購入することなどはできない。

 11月17日の安倍総裁の「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう」との発言は、もし本当に買入れを意識しての発言であるのであれば、このあたりの国債の仕組みについて理解していない人がシナリオを書いたと思われる。ただし、もし日銀が直接建設国債を引き受けるとなれば話は違ってくるのだが。

 キンドルの電子書籍にて書き下ろしました「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」(定価300円)にも日銀の国債引受のリスクについて書いてます。是非、読んでみてください。

「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」


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by nihonkokusai | 2012-11-30 09:45 | 日銀 | Comments(0)
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