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10月30日の決定会合で佐藤委員が独自の議案を提出

 11月26日に10月30日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が発表された。この会合では追加緩和策が決定され、資産買入等基金の規模を11兆円増額した。さらに貸し出し増加を支援する無制限の資金供給の枠組み創設の検討を執行部に指示、この新しい貸出枠と既存の成長基盤強化の資金供給を貸出支援基金とする。 そして、日銀総裁と財務相・経済財政相との連名によるデフレ脱却に向けた取組についてを公表した。

 この決定会合のポイントは異例とも言える2か月連続の追加緩和とともに、政府日銀が一体となってデフレ脱却を目指すという政府と日銀の共同文書であった。しかし、今回は少し違うところに焦点を当ててみてみたい。それは今回の会合で、審議委員から議案の提出があったことである。これについては特に白川総裁の会見等では触れられていなかったかこともあり、意外感があった。

 議事要旨によると佐藤委員から、物価見通しの記述について、「消費者物価の前年比は、当面ゼロ%近傍で推移した後、マクロ的な需給バランスの改善などを反映して、徐々に緩やかな上昇に転じ、 2014年度には当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に着実に近づいていく」から「消費者物価の前年比は、当面ゼロ%近傍で推移した後、マクロ的な需給バランスの改善などを反映して、徐々に緩やかな上昇に転じていく」に変更し、政策運営方針の記述について、1%を「見通せるようになるまで」から「安定的に達成するまで」に変更する旨の議案が提出されたそうである。

 これは採決の結果、反対多数で否決されたが、 賛成票には佐藤委員とともに、木内委員の名前があった。

 さらに佐藤委員と木内委員は、議長から会合における多数意見を取りまとめるかたちで、「基本的見解」の議案が提出された際に、反対票を投じている。ちなみにこれはあくまで基本的見解に対する議案であり、金融政策そのものへの反対票ではない。

 これについて、佐藤委員と木内委員は、自身の物価見通しは展望レポートの記述に比べてより慎重であること、今回決定した金融緩和の強化に加え、コミットメントの文言を変更すべきと考えていることから、反対したとある。

 確かに議事要旨を確認すると、「複数の委員は、マクロ的な需給バランスと消費者物価との相関が依然として緩やかであることを踏まえると、マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力を控えめにみておくべきであり、「1%に着実に近づいていく」との評価は難しいのではないかと指摘した。」とある。複数の委員というのは佐藤委員と木内委員ということなのであろうか。

 また、コミットメントの文言について、やはり複数の委員から、「当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」との文言を変更し、それを対外公表文に明記することで、金利などへの働きかけをさらに強め、日本銀行の緩和姿勢をより明確にすることができないかと問題提起した。これに対して大方の委員は、現時点でコミットメントの文言を修正することには慎重な見解を表明した、とある。

 1%を「見通せるようになるまで」から「安定的に達成するまで」に変更するとなれば、確かに1%の意味合いも異なってくる。このあたりは自民党などが主張する2%の物価目標も意識される。しかし、佐藤委員は2%という数字の変更ではなく、「安定的に達成するまで」との文面変更を主張していた。このあたり微妙な落としどころを探っているということなのであろうか。

 「何人かの委員は、仮に基金の運営について市場に誤解があるのであれば、増額完了後も、「1%」を目指して強力に金融緩和を推進していくというコミットメントの考え方に即して基金を運営していくことを、改めて対外的に説明していくことで払拭すべきとコメントした。複数の委員は、日本銀行の現状認識を正確に伝えるため、まだ「1%」を見通せるとの判断には至っていないことをしっかりと説明していくことが重要であると付け加えた。」

 市場等に向けて、日銀はかなり強力な金融緩和を行っているとの姿勢を示すことは重要である。この会合でも追加緩和を実施したことで、いわゆるアナウンスメント効果も意識すべきかと思われる。ただし、それでまだ「1%」を見通せるとの判断には至っていないことを説明するとなれば、むしろさらなる追加緩和期待を強めることになる。現実に12月の決定会合での追加緩和期待はかなり強いものとなっている。

 10月30日の決定会合における佐藤委員の議案提出はある意味、興味深いものではあったが、これについてはこの議事要旨が出るまでは明らかにはされていなかった。共同文書などへの関心が高かったことも影響していたのかもしれない。これについては政府関係者から情報が漏れるようなこともなかった。確かにこのような反対意見そのものは確かに重要であると考えるが、それにしてもその内容については、金融政策そのものには反対せず、やや中途半端な印象も受ける。11月の決定会合では全員一致で金融政策は現状維持となったが、このときには佐藤委員からの10月30日同様の議案の提出はなかったのであろうかということも気になる。

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by nihonkokusai | 2012-11-27 09:30 | 日銀 | Comments(0)
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