牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

需給ギャップの意味

 11月12日の白川日銀総裁の講演内容は、これまでの日銀批判に対する日銀総裁としての回答を示している点が興味深い。今回は「需給ギャップの意味」について見てみたい。

 「内閣府の試算によると、足もとの需給ギャップは、GDPの2%程度、実額の年率換算で約10兆円とされています。日本銀行による試算もほぼ同様です。」

 需給ギャップ(GDPギャップ)とは、経済全体の供給力(潜在GDP)と現実の需要(実質GDP)との間の乖離のことであり、一般に「需要不足額」として認識されている。需給ギャップ(%)は次のような式で算出される。

需給ギャップ(%)=(実質GDP-潜在GDP)/潜在GDP×100

 理論上、中央銀行は金融政策によってこの需給ギャップに影響を与えることで、インフレ率を望ましい水準に誘導していくことが可能であるとの考え方がある。

「中央銀行は金融政策により名目金利を調整することで、実質金利ギャップ(景気中立的な実質金利(自然利子率)と実際の実質金利の幅)に影響を与え、これが財市場を通してGDPギャップを縮小させ、物価を安定させる。この関係を定式化したのが、テーラー型ルールである。」(「デフレからの脱却の見通し」財政金融委員会調査室 鈴木克洋氏の資料より)

 このため、これを埋めるだけの需要を政策的に行えばば、ギャップが直ちに解消してデフレから脱却できるはずだ、という議論がある。これに対して白川総裁は次のような発言をしている。

 「確かに、需要不足が純粋に一時的なものである場合には、そうした議論に妥当性はありますが、注意しなければならないのは、需給ギャップというのは、あくまで現存する供給構造を前提に、それらに対応する需要不足を捉えたものに過ぎない、という点です。」

 白川総裁は、高齢化や女性の社会進出、価値観の多様化などによって、新しいタイプの需要が潜在的に生まれていると考えられる、としている。

 「変化の激しい経済にあっては、需給ギャップは、既存の財・サービス供給に対する需要不足のみを捉え、新たな潜在需要に対する供給不足を捉えていないという意味で、非対称な概念となっています。言い換えると、本来「需給のミスマッチ」と認識すべき部分まで、「需要不足」という形で示されているということです」

 そして、持続的に需給ギャップを改善していくためには、潜在需要を顕在化させるように、経済の変化に合わせて供給構造を作り変えていくことが必要と指摘している。さらに掘り起こされた需要は、人々が自発的に求めていた需要のため、その後も支出増加と収益・所得増加の好循環につながると指摘している。

 ただ闇雲に数字合わせのようにGDPギャップに見合う政策を行っても、それにより潜在需要を掘り起こせるのかという指摘は正しいと思う。GDPギャップそのものが様々な前提を置いて算出されることとなるため、不確実性を伴っている点にも注意すべきである。少なくとも足りないのは単純に10兆円といった資金ではなく、景気回復や雇用促進のためのアイデアでもあることを総裁は指摘しているようにも思われる。

<お知らせ>
「マネーの歴史(世界史編) [Kindle版]」と「マネーの日本史 [Kindle版]」がキンドルストアーにて発売されました。ぜひダウンロードいただけるとうれしいです。

「マネーの日本史 [Kindle版]」


「マネーの歴史(世界史編) [Kindle版]」

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2012-11-15 09:24 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー