牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

あらためて、デフレ脱却とは何か

 11月12日の白川日銀総裁による講演「物価安定のもとでの持続的成長に向けて」の中で、そもそも「デフレ脱却」とは何かについて述べている。

 「一般にデフレとは物価の持続的な下落のことを指しています。したがって、デフレからの脱却とは、その反対解釈から、物価の下落が止まる、あるいはごく緩やかに上昇する状況になることを意味します。」(白川総裁)

 白川総裁は日銀の「生活意識に関するアンケート調査」結果を引き合いに出し、物価の上昇について8割強が「どちらかと言えば困ったことだ」と回答しているのに対し、物価の下落については「どちらかと言えば好ましい」という回答が3分の1程度を占めている点を指摘した。

 デフレ脱却の必要性については、何げにそうかなと思いながらも、もし賃金が上昇せずに物価だけが上昇すれば困るのは確かである。デフレが物価の下落だけを意味していると見なせば、デフレ脱却、つまり物価の上昇について国民は好ましくないとしている。

 「単に物価が上がりさえすれば良いということではなく、企業収益や雇用の増加、賃金の上昇など、経済そのものが全般的に改善し、その結果が物価の緩やかな上昇として現れる状況を目指しています」(白川総裁)。

 日銀もデフレ脱却を目指してはいるが、それは単純に物価の上昇ではないということであろう。しかし、これについては物価が上昇しさえすれば、景気も付いてくるとの見方もある。

 「デフレ脱却には経済成長が必要という議論に対しては、経済を好転させるためには、まずインフレ予想を高めることが必要であり、そしてそれが中央銀行の仕事ではないか、という議論も聞かれます。」と総裁は指摘している。

 「民間経済主体の予想インフレ率が上昇すれば、名目金利から予想インフレ率を差し引いた実質金利が低下し、それが景気刺激につながるというメカニズムが想定されています。しかし、物価も賃金も上がらないという状況が長く続いた経済においては、いきなり人々のインフレ予想だけが先行して高まる、あるいは高められると考えるのは現実的でありません。」(白川総裁)。

 この予想インフレ率とか期待インフレ率というのが、やっかいなものである。これを的確に計る術はない。物価連動債などから機械的に導き出されるものは、あくまで市場参加者によるものでそこには物価とは関係のない個別債券の需給要因等も影響する。国民全体の期待や予想を知るのはかなり困難なはずである(それがわかれば政治家も苦労はしない)。

 「消費者が物価は上がるものではないという物価観を背景に、企業の値上げを受け容れないため、企業でも賃金を含めてコストを抑制する動きが続き、デフレからの脱却に時間がかかっているという面もあるように思います。」(白川総裁)。

 つまりはデフレのひとつの要因に、その状態に慣らされてしまい「物価の上昇は許容できない」という感覚が広く定着しているという状況があるとしている。たしかに消費者物価指数(除く生鮮)の前年比は1994年あたりからほぼ1%を割り込む状況が続いている。物価の低位安定にすっかり慣らされてしまっている。

 国民の物価観によれば、物価が上がることへの恐怖心も強い。それが景気回復や賃金上昇も伴うものであるとの確信がないとなかなか容認しづらい。デフレ脱却を目指すのであれば、物価上昇が好ましい状況に導かれるとの期待を抱かせる必要がある。それは単純に物価を上げれば何とかなるものではないと思われる。

<お知らせ>
「マネーの歴史(世界史編) [Kindle版]」と「マネーの日本史 [Kindle版]」がキンドルストアーにて発売されました。ぜひダウンロードいただけるとうれしいです。

「マネーの日本史 [Kindle版]」


「マネーの歴史(世界史編) [Kindle版]」

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2012-11-14 09:15 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31