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特例公債法案未成立に対する市場参加者からの危惧の声

 10月19日に臨時の国債市場特別参加者会合が開催された。今回のテーマは「特例公債法案成立遅延の市場への影響について」であり、まずこの件について以下の説明が財務省からあった(以下、国債市場特別参加者会合(第46回)議事要旨より引用)。

「仮に、特例公債法案が成立しない状態が続く場合、・・・具体的には、12月4日の10年債入札から支障が生じ、その後は、特例公債法案が成立するまでの間、利付国債の発行は休止せざるを得ない。一方、発行が休止となった場合、特例公債法案が成立した後は、休止されていた間の発行額を取り戻す必要があるため、毎月の利付国債の市中発行額を現在よりも増額する必要が生じる。」

 今回の臨時の会合では、市場参加者の代表ともいえる国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー)が、あらためて財務省から特例公債法案成立遅延の市場への影響に関して最新の情報を得ることがひとつの目的であり、財務省としてはその影響や利付国債の発行を休止した際の市場への影響を少しでも緩和する方策についてプライマリー・ディーラーから意見を聞くことが目的となっていたとみられる。

 そして、今回は異例ともいえる財務大臣の出席もあり、マスコミの関心度も高かった。国債の休債という事態が何を招くのか、現場の担当者達の意見を聞くことにより、事の重要性をあらためて市場関係者とともにそれ以外の人達(特に政治家の方々)にも、広く認識してもらうことも結果として大きな目的になったとみられる。

 出席者、つまりプライマリー・ディーラーから出された意見等をみると、かなりの危機感を抱いていることがわかる。

「金融市場に対して極めて大きな悪影響を及ぼし得るものであり、待ったなしで打開する必要がある。」

「12月債の発行が不可能な状況となれば、これまで築いてきた市場との信頼関係が基礎から崩れ落ちる。」

「今後市場の動揺や国の債務管理政策に対する信用失墜も想定される中、法案の成否に伴う混乱は、日本国債の将来と本邦財政にとって致命的なダメージを及ぼしかねない。」

「仮に一度発行が停止すると、この信頼関係が崩れ、発行再開以降の消化に多大な困難が伴うことであろう。」

「国債の発行停止は政府の支出及びサービスの停止から国民生活に大きな影響を及ぼすだけではなく、発行コストの増大を通じて国民にとって恐らく兆円単位の負担増につながると申し上げたい。」

「歳出の抑制が国民の生活や経済活動に直結する政府の機能、例えば、医療や介護、外交、安全保障、災害復興等にまで広がると、経済への打撃、国債の大幅な信用度の低下といったリスクも懸念される。」

「財政・国債市場の安定と国民生活の安心が密接につながっていることに、市場関係者としてあらためて気づかされる事象であり、このようなリスクを顕在化させることはあってはならない。」

「特例公債法案が政治的な駆け引きの材料に使われるようなことで不安が募り、財政運営に対する政府の管理能力に一度マーケットが疑問を持つようになると、金融市場における信認の低下、国債に対する投資家の投資スタンスの慎重化、債務管理の不安定化、といった事態悪化の連鎖的反応という負のスパイラルが到来するリスクも完全には排除できなくなる。」

「これまで財務省や市場参加者が、当会合や投資家懇、在り方懇などを通じて膨大な国債発行を円滑に消化してきており、海外投資家からもこの点を信用されて今の低位安定な金利を維持する市場形成が可能となっていた。それが今回の事態を通じて、崩壊する危機があることについて強い危機感を持っている。」

 これらの意見については、まさに同意である。これまでこつこつと築き上げてきた政府と市場との「信頼関係」が国債価格の安定化の基になっている。日本国債の価格が安定しているのは、もちろん買い手が存在し需給が安定していることともに、このような信頼関係が重要な要因となっている。ちなみに欧州の信用不安の発端となった2010年のギリシャの国債価格の急落は、まさにこの政府と市場との信頼関係が失われたためであった。

 この信頼関係に亀裂が生じると、事態悪化の連鎖的反応も起こりかねないと、国債を売買している現場の関係者がコメントしているのである。このあたり、特例公債法案を政争の具としている政治家の方々には真摯に受け止めていただき、なるべく早く成立させ、市場の不安感を払拭してもらいたい。


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by nihonkokusai | 2012-10-31 09:35 | 国債 | Comments(0)
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