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日銀は10月30日の決定会合で何を決定するのか

 10月30日の日銀による金融政策決定会合において、追加の緩和策が決定されるとの観測が強まっている。今回は、本当に日銀は追加緩和を行うのか、もしその場合には何を行うのかを検証してみたい。

 その前に今回追加緩和期待が強まった背景を確認してみると、ひとつには10月30日に発表される展望レポートにおいて、2014年度の消費者物価指数(除く生鮮食料品)の前年比上昇率の見通しがゼロ%台後半となり、目途としている1%には届かないのではないかとの観測があった。また、政府による経済対策に歩調合わせる必要から追加緩和を行うのではないかとの見方もあった。さらにIMFのラガルド専務理事が「日銀はさらなる金融政策に踏み切る準備ができると確信している」と述べたことも影響している可能性もある。

 10月の展望レポートを受けての追加緩和という想定は以前からあった。しかし、それを踏まえて日銀は9月に前倒しで追加緩和を行っていた。これは10月のIMF・世銀総会を意識しての可能性もあると個人的には考えていたが、IMFはさらなる追加緩和を求めるようなコメントを出してきた。

 緩和策を考える前に、10月30日に本当に追加緩和があるかどうかも考えておく必要がある。これについて、これだけ追加緩和観測が流れている中にあって現状維持とするのであれば、1999年9月の決定会合以来になるとの指摘があった。

 1999年9月の決定会合で日銀に対して、米国に協調介入を促すべく、追加の金融緩和策を取るようにとのプレッシャーが政府サイドからかけられていた。マスコミも日銀が追加の金融政策をとることは既成事実であるかのような報道をした。しかし、このプレッシャーを払いのけて、日銀は現状維持を決断。この際には速水総裁(当時)の辞任説も広がっていたのである。

 今回はさすがに現状維持で意地を張るような状況ではない。しかし、30日に追加緩和を決定するとなれば2か月連続となり、極めて異例となることも確かである。23日、24日の米FOMCも現状維持となったこともあり、日銀としては9月に追加緩和を行ったことで、今回追加緩和を行うことは想定はしていなかったのではなかろうか。

 しかし、追加緩和への期待は強まり、外為市場や株式市場ではそれを織り込んでの動きになっている。米株の大幅な下落にもかかわらず、日経平均は9000円近辺で底堅い動きをしていることや、ドル円が80円台をつけたことの要因のひとつは、この日銀の追加緩和観測であったと考えられる。こうなると何もしないという選択肢は取りづらいか。

 それではもし追加緩和を行うとすれば何をしてくるのか。まず想定されるのは、9月と同様に資産買入基金の増額である。9月の増額の対象は短期国債5兆円程度、長期国債5兆円程度であった。今回も5兆もしくは10兆円の増額の可能性がある。今朝の日経新聞によれば10兆円との観測のようである。

 今回は株や為替の動きも意識してリスク資産の増額を行う可能性もある。今年末て購入枠を使い切ることで来年に向けた枠をあらたに設定する可能性がある。9月の決定会合でも一部の委員からリスク性資産の買い入れ増額を求めるような発言があった。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)、社債・CP等の買入をあらたに増額するという選択肢もありうる。

 また日銀による外債購入を求める声も出ている。これについてはいずれにせよ為替操作が目的であることが明らかである以上、そうなれば財務省の所管となろう。また、相手国との交渉も必要となるため、これは中央銀行というより政府の仕事と思われる。そもそも政府が為替介入を行えば結果としてもれなく外債も付いてくるし、介入に必要な資金手当てのために発行するFBは日銀が基金オペで市場から購入している。ただし、相手国との交渉としては、米国との交渉はむずかしそうだが、相手がユーロ圏となると話が違ってくる。日本政府は既に多額のEFSF債を購入済みであり、ESM債についても購入も検討している。ESM債をもし日銀が購入するとなれば米債より抵抗は少ないように思われる。いずれにせよ30日に外債購入を検討するようなことはなさそうである。

 これ以外としては、基金により買い入れる国債の年限延長、もしくは期限を設けないことも考えられる。可能性としてはいずれ3年から5年あたりまでの期限延長はありうるが、期限を無制限にすると輪番オペと変わりがなくなる。ECBのあらたな国債買入も期間を1~3年としている。ドラギ総裁の発言からは財政ファイナンスと意識されないための配慮とみられる。すでに日銀も輪番オペでの日銀券ルールは実質的には守られていないとの見方はあるが、財政ファイナンスと意識されそうなことは極力避けるとみられる。このため、基金により買い入れる国債の年限等については現状維持とするのではなかろうか。

 そしてもうひとつ超過準備への付利撤廃もしくは引き下げという選択肢もある。9月に日銀は国債買入の下限金利を撤廃している。そして日銀の準備預金はすでに40兆円台に積み上がっている。ここで付利を廃止して、この積み上がった準備預金を少しでも運用のための資金として活用されるとの連想が働けば、それなりのアナウンスメント効果もありうるかもしれない。ただし、それを行ってしまうと短期金融市場が量的緩和の際のように機能不全に陥ることも想定される。過去の白川総裁は発言内容からもこの可能性は薄いように思われる。


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by nihonkokusai | 2012-10-26 09:41 | 日銀
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