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株式市場から債券市場への資金シフトという表現はおかしい

 いわゆるリスクオフと呼ばれる動きの場合に、リスク資産から安全資産への資金シフトが起きたと論じられることがある。反対にリスクオンの動きが起きた際には今度は安全資産からリスク資産に資金シフトが起きたとされることがある。しかし、そんなことが現実に起きるであろうか。

 たとえば機関投資家の場合には、年度ベースもしくは半期ベースなりで、ある程度の運用方針が決められている。株式の組み入れ比率、国債を主体とした債券の組み入れ比率、さらに外債への組み入れ比率等が事前に決まっている。これを相場環境が予想と異なってきたので、途中で大きく組み替えるということは考えづらい。

 海外投資家の影響力の大きい日本の株式市場で日本株を売却し、日本国債を購入するような海外投資家が果たしているであろうか。もちろんある程度足の早い投資家であれば、そのようなシフトが皆無ではないだろうが、それは金額から言えば微々たるものであろう。

 また、ヘッジファンドが株先売り債券買いを行ったなどと観測されることもあるが、これはリスクオフに対して株と債券のポジションを傾けただけであり、裁定取引でも何でもない。まして資金がシフトしているわけでもない。

 もちろんリスクオフの動きの際に、株式を売却しその資金を一時的に短期の国債等に振り向けている可能性はあるが、これはシフトというよりあくまで一時的な待避資金であるに過ぎない。

 リスクオフの際の株式市場ではどうしても売り手が目立つことになる。売られるとストップロス等も発生し、売りが売りを呼ぶような状況となるが、その売却資金をたとえば10年国債にいきなり振り向ける投資家などがいるとは思えない。

 反対に長期債投資を行っていた投資家が、株が上がりそうだから10年債を売ってその資金で株式を購入するということがあれば、それはどのような投資家であろうか。もちろん個人であれば、保有していた個人向け国債を売却して、勧められるままに株式を購入といったこともあるかもしれないが、それが資金シフトを起こすほどの金額になることも考えづらい。

 長いスパンで見ると機関投資家を含めて、資金シフトが起きていたということはありえるかと思う、つまり毎年の運用方針の変化により、結果としてそれが資金シフトに繋がることは考えられる。しかし、それは短期間に起こるものではない。何気なく聞くと、そうかなと思いがちなことも、よくよく考えるとおかしいことはままある。株式市場から債券市場への資金シフトという表現はやはりおかしいと思う。

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by nihonkokusai | 2012-10-22 11:29 | 債券市場 | Comments(3)
Commented by keiko at 2012-10-22 15:25 x
今日のアゴラで池田信夫氏が「日銀の国債購入は邦銀の国債投資の利益を保証し国債バブルを膨張させ、外人の円買いを誘って円高の原因になっているとうのは、マーケットの常識だ」と述べています。中央銀行の量的緩和は通貨切り下げ競争の道具でもあるというのが常識だと私は思っていたのですが、日銀の国債購入が円高の一因、あるいはそれがマーケットの常識という池田氏の主張は正しいと思われますか?
Commented by nihonkokusai at 2012-10-23 07:02
まずマーケットの常識との表現に違和感を感じます。また、外人買いは円買いに伴う国債買いで、国債を買ったので円が買われるとの表現は順番が逆ではなかろうかと。外人はまた日銀が買ってくれるから日本国債を購入しているわけでもないはずです。大手銀行などの中短期債の買いには日銀の買いオペを見越しての買いはあるでしょうけど。とにかく池田氏の主張は違和感ありですね。
Commented by keiko at 2012-10-23 14:39 x
早速のご回答有難うございます。勉強になりました。アゴラでは主催者の池田氏を忖度した意見が多い様に思います。特に原発事故以来、反対意見が見受けられなくなったのは残念なことです。
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