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日本の商業銀行と中央銀行設立の背景

 銀行の設立も明治政府にとり大きな課題となった。民間からも銀行設立の願いなどが相次いでいた。日本における本格的な商業銀行は、明治維新後に誕生した第一国立銀行とされている。明治政府は大蔵少輔伊藤博文の建議に基づいて、アメリカのナショナル・バンク制度にならった発券銀行制度を導入することとなった。

 米国では1863年に国法銀行が設立され、国法銀行による銀行券発行について規定する全国通貨法が制定された。これによって南北戦争以前の複数通貨がグリーンバックと銀行券が流通する単一通貨の制度となったのである。渡米し現地視察を行っていた伊藤の建議により1872年12月に国立銀行条例が定められたのである。

 この銀行制度の導入にあたり、伊藤案に対し、イングランド銀行をモデルにした中央銀行制度を導入すべし、とした吉田清成との間で銀行論争が闘わされた。結局、井上馨の裁断によって、伊藤案が採用されることになったのである。伊藤案を起案した人の中には、銀行界の中心的な人物となる渋沢栄一もいた。

 1877年2月に西南戦争が勃発。政府はこの戦争のための費用を調達するため、大量の不換政府紙幣、不換国立銀行紙幣を発行したことで、貨幣の価値が急落し激しいインフレーションが発生した。

 当時の大蔵卿(現在の財務大臣)は大隈重信。大隈は積極財政を維持したまま、外債を発行することによって不足している銀貨を得て、それを市場に流せば安定すると主張した。ちなみに当時、対外決済に通常用いられていたのは銀貨であった。

 これに対して、現在の次官にあたる大蔵大輔の松方正義は、明治維新以来の政府による財政の膨張がインフレの根本原因であるとし、不換紙幣を回収することがインフレに対しての唯一の解決策であると主張したのである。

 松方の主張は大隈の財政政策を根幹から否定するものであり2人は対立する。このため伊藤博文が松方を内務卿に抜擢すると言う形で財政部門から切り離して、一旦は事態収拾が図られた。

 ところが、1881年の「明治14年の政変」によって大隈や、大蔵卿を務めた佐野常民らが政府から追放されると、今度は松方が大蔵卿に任命され、インフレ対策のために自らの主張した政策を実行することとなったのである。

 1881年大蔵卿に就任した松方正義は、政府紙幣や国立銀行紙幣などの不換紙幣を消却し、正貨準備を増やすなどの政策を行ってきた。そして、不換紙幣の整理をするため正貨兌換の銀行券を発行するための「中央銀行の創立」を提議した。通貨価値の安定を図るとともに、中央銀行を中核とした銀行制度を整備し、近代的な信用制度を確立することが不可欠であるとしたのである。

 日本銀行設立にあたって、そのモデルとしたのはベルギー国立銀行であった。松方は1876年に一時パリを中心に滞在しており、その際にフランス蔵相レオン・セーから、日本が発券を独占する中央銀行をもつべきこと、さらにそのモデルとしては歴史あるイングランド銀行などではなく比較的設立が新しいベルギー国立銀行が良いのではないかといった助言を得ていたのである。

 こうして1882年6月に日本銀行条例が制定され、日本の中央銀行として日本銀行が設立され、同年10月10日に業務が開始された。ちなみに日銀本館は東京駅同様に辰野金吾が設計した物であるが、建物もベルギー国立銀行を参考にしたとされている。

 松方正義は政府発行紙幣の整理を中心とする金融政策の実現に取り組み、この日本銀行の設立を経て、政府発行紙幣の全廃と兌換紙幣である日本銀行券の発行を行う。国立銀行が発行した紙幣も、1883年の国立銀行条例の改正により兌換銀行券である日本銀行券に置きかえられた。

 松方正義は長らく大蔵卿を勤めたのち、内閣制度の発足に伴い1885年に伊藤内閣での初代大蔵大臣となる。その後、1891年に第4代内閣総理大臣に就任した。

「マネーの日本史」http://p.booklog.jp/book/58552より


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by nihonkokusai | 2012-10-17 09:17 | 中央銀行 | Comments(0)
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