牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

議事要旨に見る9月の日銀の追加緩和の理由

 10月11日に日銀金融政策決定会合議事要旨(9月18日・19日分)が発表された。この会合で日銀は全員一致で追加の緩和策を決定した。

 その内容としては、資産買入等の基金を70兆円程度から80兆円程度に10兆円程度増額する。増額の対象となるのは短期国債5兆円程度と長期国債5兆円程度。そして、長期国債の買入を確実に行うため、買入における下限金利(現在、年0.1%)を撤廃し、社債の買入についても同様とするとした。

 この追加緩和は、市場の一部に期待感はあったものの、追加緩和があるとすれば展望レポートの発表にタイミングを合わせるため10月との見方も強かっただけに、サプライズとなった。

 ただし、19日に安住財務相(当時)は閣議後の会見で、同日まで行われる日銀の金融政策決定会合について、米国の量的緩和第3弾(QE3)はじめ先週以来の動きも含め、日本が何をすべきか、今すべきかどうか議論があると思うとの考えを示していた。

 今回はこの議事要旨を元にして、何故、このタイミングで追加緩和を行ったのか。その理由を探ってみたい。

 議事要旨は議事録ほど分量は多くないが、それでもそれなりの分量があるため、ここでは政策委員の検討を中心に、8月8日、9日の決定会合議事要旨と見比べながら確認してみたい。

 9月の会合の議事要旨には「景気・物価の先行きを巡るリスク」に関するところで、「金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要であるとの見解で一致した。」との表記がある。また、「複数の委員は、為替円高・株安が企業・家計マインドの悪化を通じて設備投資や個人消費にマイナスの影響を 及ぼさないか、注視していきたいと述べた」とある。

 8月の議事要旨の同様箇所には、円高・株安への懸念についてはほとんど触れていないように思われる。参考までに8月の会合時と9月の会合時の為替の居所を確認するとドル円はあまり変化ないが、ユーロ円については9月のほうが円安になっていた。日経平均も9月の方が若干高かった。これを見る限り違和感があるが、9月はECBに続きFRBもQE3と呼ばれた追加緩和を行っていたことで、日銀がそれによる円高への懸念を強めていた可能性はある。

 当面の金融政策運営に関する委員会の検討のところで、「何人かの委員は、足もとの景気が想定対比下振れていると現時点ではっきりしている以上、展望レポートでの点検を待つまでもなく、今回のタイミングで政策対応すべきであると述べた。」とある。このあたりを見る限り、展望レポートでの景気の見通しの下方修正を前提に、いずれ追加緩和は行う必要性があり、それは市場が予想していた展望レポートの発表のタイミングを待つまでもないとの認識が示されていた。しかし、何故、このタイミングであったのか。

 「このうちのある委員は、政策対応が遅れた場合には信認を低下させるリスクがあり、今回のタイミングで政策対応を行うことにより、日本銀行の政策運営スタンスを市場にはっきり示すことが必要であると述べた。 」

 この「ある委員」がキーマンのように思われる。もしこれが総裁でなければ、議長である総裁はこの委員の意見を元に追加緩和を行った格好になる。もちろん山口副総裁の可能性とかはあるが、このある委員は白川総裁と見て良いのではなかろうか。

 それでは、「政策対応が遅れた場合には信認を低下させるリスク」とは何か。「遅れた」、「今回のタイミングで」との表現に、安住財務相(当時)の「米国の量的緩和第3弾はじめ先週以来の動きも含め」との発言も加味すれば、FRBの追加緩和に歩調を合わせる格好で、さらにそれによる為替の動きも意識した上で、追加緩和を行ったとも読める。もしこのタイミングで追加緩和を行わなければ、それをきっかけに円高株安が進行しかねないとの読みもあったのかもしれない。

 そして「一人の委員は、為替相場への働きかけなどインフレ期待を高める一段の工夫も必要ではないかとの見方を示した。」とある。8月の議事要旨にも「ある委員は、包括的な金融緩和政策の実施から2年近く経過した現時点でデフレを脱却できていないことを踏 まえると、為替相場への働きかけなど、インフレ期待を高める一段の工夫が必要ではないかとの認識を示した。」とあり、同一の委員の発言かと思われる。これに関しては、たとえば為替相場の働きかけを目的とした外債購入となれば、それは日銀の仕事ではないことで、「一段の工夫」という微妙な表現になったのかと思われる。

 「9月中旬に決定されたFRBによるMBS買入れについて、ある委員は、予め上限や期限を決めずに買入れる点が注目されているが、日本銀行でも資産買入等の基金の上限や期限を累次にわたって拡大・延長してきており、当初の予定をはるかに上回る大規模かつ長期の緩和政策を行っていると述べた。」(9月18日・19日分金融政策決定会合議事要旨)

 FRBのQE3がかなり意識されていたことが、この発言内容からも伺える。


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp




[PR]
by nihonkokusai | 2012-10-12 09:29 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー