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前原大臣は金融政策決定会合に出席して何ができるのか

 前原誠司経済財政相は就任早々、日銀の金融政策決定会合に出席する方針を固め、10月5日に政府代表として出席した。前原誠司国家戦略相・経済財政担当相は10月2日の記者会見で、日銀について「(物価上昇率1%の目標を)実現するための努力をしっかりと政府からお願いしていく」と積極的な金融緩和を求めた。「(努力が)足りない時には政策決定会合に私も出られる立場になる」と述べ、普段出席する内閣府副大臣だけでなく自らも決定会合に出る可能性を示唆し、実際に5日の会合に出席したのである。先日のコラムでも指摘したが、大臣自ら決定会合に出席したのは、2003年4月に竹中平蔵経済財政担当大臣が出席して以来となった。

 日銀法第十九条によると、財務大臣又は内閣府設置法第十九条第二項に規定する経済財政政策担当大臣(経済財政政策担当大臣が置かれていないときは、内閣総理大臣。次項において「経済財政政策担当大臣」という。)は、必要に応じ、金融調節事項を議事とする会議に出席して意見を述べ、又はそれぞれの指名するその職員を当該会議に出席させて意見を述べさせることができる、とある。

 さらに2項として、「金融調節事項を議事とする会議に出席した財務大臣又はその指名する財務省の職員及び経済財政政策担当大臣又はその指名する内閣府の職員は、当該会議において、金融調節事項に関する議案を提出し、又は当該会議で議事とされた金融調節事項についての委員会の議決を次回の金融調節事項を議事とする会議まで延期することを求めることができる。」とある。

 日銀の金融政策決定会合には、政府の代表が2人出席している。この2人とは財務大臣または経済財政政策担当大臣、あるいはそれぞれの指名する職員となっている。ただし、大臣が直接参加するのは極めてまれである。これは日銀法上、政府代表は議決権がなく、あくまでオブザーバー的な存在となっているためである。ただし、政府からの出席者は、決定会合において、経済情勢や政府の政策運営、金融政策運営などに関する意見を述べることができる。

 政府からの出席者は議決権はないものの、提案された議案について、議決を次回の会合まで延期することを求めることができる。これが議決延期請求権である。これは2000年8月のゼロ金利解除の際に行使されている。このときは大臣は出席していないが、これについて全権を委託されていたとされる宮沢蔵相の最終判断により、過去に例のない議決延期請求権が行使された。

 日銀法第十九条3項では、前項の規定による議決の延期の求めがあったときは、委員会は、議事の議決の例により、その求めについての採否を決定しなければならない、とある。実際に2000年8月の決定会合では、同条第3項に基づいて採決した結果、議決の延期の求める請求を反対多数で否決した。

 政府からの出席者は、また自ら議案を提出することができる。つまり前原大臣が自ら追加緩和なり、たとえば持論の外債購入についての議案を提出することは可能である。ただし、仮にそうする場合があったとしても、あくまで政府代表としての立場である以上、単独というよりも財務大臣の了解を得ることも前提条件になろう。

 そもそも仮に政府が議決延期請求権を行使しようが、自ら追加緩和策の議案を提出しようが、議決権のある政策委員会で否決されればそれでお仕舞いである。もちろんそれを行ったという事実は、決定会合後に明らかにされ(それ以前に明らかになったならばそれはリークがあったことになる)、それなりにマーケットなどにインパクトを与えることになるかもしれない。

 しかし、そこに至る過程等含め、会合での発言内容は議事要旨である程度明らかにされ。議事録では発言者とともに発言内容もそのまま記録される。このようなことを考えれば、あまり迂闊な発言はできなくなる。大臣ともなれば、安易な発言は当然差し控えることも予想され、まして持論による単独議案の提出などはかなり困難となる。つまり、いくら大臣自ら出席しようが、日銀の決定会合での政策決定そのものにそれほど大きな影響を与えることは考えづらいのである。日銀としてそれなりのプレッシャーも感じるかもしれないが、あくまで政府代表は決定会合ではオブザーバーでしかない。

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by nihonkokusai | 2012-10-06 09:10 | 日銀 | Comments(0)
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