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LIBORや格付け会社は民から官へ?

 9月26日の日経新聞電子版によると、LIBORを管理している「民間組織」の英国銀行協会は25日、英政府の求めがあればLIBORの算出・公表の権限を手放す考えを表明したそうである。

 「英政府は28日に発表する改革案でLIBORを金融当局の監督対象に組み込む方向で調整中。同協会が受け入れ姿勢を示したことで、規制強化の流れが固まった。」

 LIBORとは「London InterBank Offered Rate」の略で、一般的には民間組織の英国銀行協会(British Bankers Association)が複数の銀行の金利を平均値化して、ロンドン時間午前11時に毎日発表するBBA LIBORのことを指している。金融自由化の流れの一環として、1986年に現行方式がスタートした。

 民間主導の金融市場づくりの象徴とされ、政府や中央銀行の権限が直接には及びにくかった(日経新聞)とされる。米ドルだけでなく英ポンド、日本円、ユーロ、豪ドル、ニュージーランドドル、スイスフラン、カナダドル、デンマーククローネの9通貨について発表され、歴史もあり短期金利の重要な指標となっている。

 LIBORは、英国の住宅ローンや預金金利などに直接影響する金利であるともに、国際的な融資などにおける国際金融取引の基準金利として、またスワップ金利などデリバティブ商品の基準金利としても利用されている。

 ブルームバーグによると、「英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)のトレーダーだったタン・チ・ミン氏が簡易電子メッセージを通じ、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を操作できると当時の同僚らに伝えていた」そうである。

 タン氏は同じくRBSを解雇されたニール・ダンジガー氏らトレーダーとの2008年4月2日のメッセージのやり取りで、「すてきなLIBOR。われわれの6か月物での工作が全体を動かした。ハハハ(hahahah)」と記した(ブルームバーグ)。

 単独での操作は技術的に困難であるが、LIBORの金利は、上下4行を除いたもので計算される仕組みであり、銀行数行がもし結託して行えば、その操作は可能となる。まさに「われわれの工作」であれば操作できる。 この記事からも、不正が行われていたことは事実であり、このあたりは捜査が進むとさらに明らかになるとみられる。そうなれば、規制強化の流れは避けられないものと思われる。

 LIBORに対し、日本においてこれに相当するリファレンス・レートが、TIBOR(東京銀行間取引金利)である。日本時間午前11時時点の、特定銀行のオファードレートを、やはり民間組織であるところの全国銀行協会が集計して平均値を公表している。こちらについても昨年、金融庁は「TIBOR」を不正操作しようとしたとして、シティグループ証券とUBS証券を行政処分した。自社の取引に有利になるよう恣意的に金利を提示することを複数の銀行に働き掛けていたそうである。 LIBORの動向次第では、日本でもTIBORを民間組織から、金融当局の監督対象に組み込む動きになる可能性もあるかもしれない。

 この民間組織という面では格付け会社も同様に民間会社である。エンロンの問題で格付機関のあり方が問題視され、格付け会社がサププライム・ショックを招いたひとつの要因ともなった。欧州諸国の財政問題では、もちろん根本的な原因はギリシャなどの財政そのものにあるものの、市場のリスクオフの動きを加速させたのは他ならぬ格付け会社であったことも確かであろう。こちらについても、公的機関が格付けをすべきとの意見も出ており、格付け会社ムーディーズのCEOも、ソブリン格付けの引き下げをめぐって格付け会社を批判している各国政府が格付け会社を設立すべきだとの見解を示したそうである(ロイター)。

 そもそも格付け会社によるソブリン格付けはいわゆる勝手格付けであり、各国から依頼されたものではない。それでも社債などの格付けには、そのベンチマークとなる国債の格付けを行う必要もあるため、格付け会社はソブリン格付けを行っている。しかし、そのソブリン格付けそのものが、大きく市場に影響を与えている以上、民間会社の勝手格付けに対してもある程度の規制等も必要になるとの見方もあろう。そうなればむしろ公的機関が格付けをすべきものであるのかもしれない。もしくはムーディーズのCEOが指摘したように、「専門性と市場の信頼性を兼ね備えた公的機関がソブリンの信用に関する見解を示すべき」なのかもしれない。金融については規制強化の動きが今後ますます強まることが予想され、LIBORばかりでなく格付け会社も「民から官へ」の動きとなることも予想される。


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by nihonkokusai | 2012-09-30 09:56 | 国際情勢 | Comments(0)
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