牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

日銀の包括緩和からまもなく2年

 日銀が包括緩和政策を決定したのが2010年10月5日であった。金融緩和を一段と強力に推進するために、包括的な金融緩和策を実施することとなった。9月24日の日銀の山口副総裁の講演でこの包括緩和について触れており、それも参考にあらためて包括緩和政策とは何であったのかを振り返ってみたい。

 包括緩和政策では最初に、政策金利である無担保コールレート翌日物金利をこれまでの0.1%から、0~0.1%前後に促すこととし、実質的なゼロ金利政策を再開することとなった。

 第2に資産買入等の基金と名付けた金融資産の買入れプログラムを導入し、そのもとで長期・短期の国債、さらにCP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資法人投資口(j-REIT)といったリスク性資産を幅広く買入れることになった。「これは長めの市場金利やリスク・プレミアムへの働きかけを通じて、金融緩和が企業の資金調達コストにまでしっかりと波及するよう促す措置である」(9月24日の日銀の山口副総裁の講演要旨より)。

 第3に「こうした実質的なゼロ金利政策や金融資産の買入れ等の措置を通じた強力な金融緩和を、当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで継続すると約束しています」(9月24日の日銀の山口副総裁の講演要旨より)。

 最後の部分は、当初「中期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していくとして、時間軸を明確化した。しかし、今年2月14日に日銀は「物価安定の目途(ゴール)」を設定しており、包括緩和の時間軸は、この「物価安定の目途」がまさに目途となる。

 当初、2010年10月時点での資産買入等の基金の規模は基金の規模は、買入資産(5兆円程度)と、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション(30兆円程度)を合わせ、35兆円程度であった。また、買入資産の内訳については、長期国債および国庫短期証券の規模を合計3.5兆円程度、リスク性資産であるCP、ABCP、社債、ETF、j-REITの規模は合計1.5兆円程度となっていた。

 それが2012年9月19日の追加緩和により、2013年末までの買入資産(55兆円程度)、そして固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション(25兆円程度)を合わせ、80兆円程度にまで膨らむ。また買入資産の内訳については、2013年末までに長期国債および国庫短期証券を合計48.5兆円規模、CP、ABCP、社債、ETF、j-REITは合計6.72兆円規模となっている。

 資産全体の規模は導入時から11倍となっているが、このうちリスク性資産は導入時に比べ約4.5倍であり、市場規模から見て、量そのものはそれなりの大きさではあるが増加額は5.22兆円でしかない。それよりも長期国債および国庫短期証券は13倍近くなっており、量も約45兆円もの増額となる。このうち長期国債に至っては、当初に比べて20倍を超える大きさとなっている。

 この数値だけ見る限り、日銀の包括緩和は結果として量的緩和に近いものとなっていると言えよう。すでに日銀の当座預金残高は過去最高を記録し、9月25日には44.9兆円と45兆円近くにまで増加する。量的緩和政策においての目標としたピークの数値が30~35兆円であったことを考えると、このときよりも10兆円近く増加している格好となる。

 9月19日の追加緩和が国債の買入の増額となったことについて、山口副総裁は次のように理由付けをしている。

 「増額の対象については、リスク性資産という選択肢もありますが、現在わが国では、投資家の不安心理やリスク回避姿勢からリスク・プレミアムが拡大するような状況にはないため、短期国債および長期国債としました。これらを、それぞれ5兆円程度増額することにより、イールドカーブ全体にわたって金利低下を働きかけることとしました。」

 すでに日本の長期金利は0.8%を割り込むなど低位安定しており、ここからさらにイールドカーブ全体の低下圧力を促しても、その効果は限定的と思われる。しかし、今回の政策では規模そのものの大きさのアピールも意識されたように思われ、それが結果として短期国債および長期国債の増額になったのではなかろうか。

 結局、日銀は包括緩和と名称は変えたものの、結果としては2001年3月から2006年3月まで続いた量的緩和政策の規模をさらに大きくさせたものになっているように思われるのである。

<お知らせ>
50+(フィフティ・プラス)というサイトに、『金融緩和だけが日銀の仕事じゃない!―「日本銀行の仕組みがわかる本」久保田博幸さんインタビュー』が掲載されました。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2012-09-26 09:28 | 日銀 | Comments(1)
Commented by yutakarlson at 2012-09-26 10:13 x
【日本の解き方】日銀のみすぼらしい金融緩和…欧米より周回遅れ―【私の論評】白川大貧乏・デフレ・円高大明神10兆円のご託宣とはこれいかに?

ブログ名:「Funny Restaurant 犬とレストランとイタリア料理」

こんにちは。アメリカでは、QE3でかなり思い切った金融緩和(月3兆円ずつ、雇用が改善するまで)をするというのに、日本では、たった10兆円です。これじゃ焼け石に水です。過去にも、この程度のことは何度もやってきましたが、結局何も変わりませんでした。にもかかわらず、日本では、一部の識者は別として、政治家も、官僚も、一般国民も貧乏神に取り付かれているとしか思えません。デフレ・円高・雇用の悪化、これらは、日銀に大きな責任があります。今のままであれば、本来全く関係のない、アメリカの不況や、EUの不況の影響を受けて、日本もさらに不況にいたり、円高・デフレスパイラルの泥沼に落ち込み、また、リーマンショックの二の舞になりかねません。それだけは、回避すべきと思うのは、私だけでしょうか?詳細は、是非私のブログを御覧になってください。
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー