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日銀の佐藤委員と木内委員の加入の影響

 9月24日に8月8日、9日に開催された日銀の金融政策決定会合議事要旨が発表された。この8月の会合から佐藤健裕審議委員と木内登英審議委員が新たに参加した。彼らが政策委員会全体のスタンスを変えて、日銀を追加緩和に動かすのではないかとの観測も、一部市場参加者にあったようであるが、いきなりの新人(あくまで日銀政策委員としてですが)が日銀総裁を含めて、政策委員全体の考え方、スタンスを変えるなどのことは考えられない。実際にもこの時の会合では、金融政策について全員一致で現状維持としている。

 ただし、この決定会合後の白川総裁の会見では、2人の委員が加わったことに関して、「活発な議論に貢献した」、「2人とも中央銀行の政策に責任を有する委員としてバランスのとれた発言をした」との発言があった。そのあたりどのような発言をしたのか、今回発表された議事要旨から探ってみたい。

 当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要の中で、「ある委員は、包括的な金融緩和政策の実施から2年近く経過した現時点でデフレを脱却できていないことを踏まえると、為替相場への働きかけなど、インフレ期待を高める一段の工夫が必要ではないかとの認識を示した。」

 「また、一人の委員は、市場からデフレ脱却に向けた日本銀行の姿勢に疑念を抱かれれば、政策効果が減殺される可能性があると述べた。」

 総裁が会見において、2人が活発な議論に貢献したと発言したことで、その内容も議事要旨にしっかり記載されているとみておかしくはない。内容から見てこの「ある委員」と「一人の委員」が、木内登英審議委員と佐藤健裕審議委員ではないかと思われる。

 二人の新審議委員は審議委員就任の会見等で「為替相場への働きかけ」を主張していたが、日銀による外債購入含めて、もし為替操作が目的となればそれは政府の仕事となるため、これについて白川総裁は会見などで否定的な発言をしていた。

 それでもこの会合で「ある委員」は持論を持ち出してきたと思われる。ただし、これには日銀法の改正等も必要になる事に加え、外債を購入という遠回りの手段を取らずとも、政府による介入で同様の効果が出ることは以前にこのコラムでも指摘した。

 そして今回発表された議事要旨における資産買入等の基金についての議論では、特に増額すべきとの意見はなかった。むしろ、ある委員が、「長期国債買入れの入札下限金利撤廃に関する思惑を無用に高めることのないよう、適切に情報発信していく必要があると付け加え」ていた。

 9月18日、19日の追加緩和では基金の増額だけでなく、国債買入れの入札下限金利撤廃も発表されたが、8月時点ではその思惑を打ち消そうとの意見が出ていた。これも、もしかすると新たに加わった委員からの発言であったかもしれない。もちろん総裁等の発言の可能性もあるが、この部分の発言は9月会合の結果からみるとたいへん興味深い。つまり今後の基金の増額があれば、政策委員内でも下限撤廃やむなしとの認識がそれなりにあったはずである。

 その9月の会合での追加緩和は、佐藤委員と木内委員の2人の審議委員の加入が大きく影響したと見る向きもあった。しかし、たとえ2人が加わっていなくとも、9月に追加緩和は実施されていた可能性は高いとみられる。それは9月の追加緩和は、ECBやFRBの追加緩和が結果として大きく影響していたとみられるためである。つまり、もしFRBの追加緩和等が見送られていれば、日銀は今回ではなく短観を確認し展望レポートの発表に合わせ、10月の会合を待って追加緩和を検討したとみられるためである。

 実際のところ佐藤委員と木内委員の加入による影響については、9月の決定会合での議事要旨も確認する必要がある。確かに日銀の政策委員が形式上はハト派的なスタンスを強めたであろうことは確かである。しかし、8月は全員一致で現状維持となり、委員による議事提案はなかった(さすがに新人委員によるいきなりの議事提案は考えづらいが)。9月の会合で今度は全員一致で追加緩和を決定していることを見ても、これは日銀総裁を中心とした政策委員の執行部の影響力の大きさを示しているともみられ、2人の委員の加入により日銀の金融政策が大きく変わったわけではないと思われる。

<お知らせ> 50+(フィフティ・プラス)というサイトに、『金融緩和だけが日銀の仕事じゃない!―「日本銀行の仕組みがわかる本」久保田博幸さんインタビュー』が掲載されました。また、WEB R25の『「人民元建て外貨預金」のメリットは?』という記事に私のコメントが紹介されています。

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by nihonkokusai | 2012-09-25 09:42 | 日銀 | Comments(0)
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