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「behind the curve」

 ビハインド・ザ・カーブは「後手に回る」と訳されているが、すでにグリーンスパン議長などの発言を受けて金融専門用語にもなっているようにも思われる。

 日銀執行部が量的緩和解除について具体的な言及をし始めたのは9月に入ってからのことである。武藤副総裁は9月2日の異例とも言われたブルームバーグでの単独インタビューにおいて、今年度後半にも解除の可能性を示した。また、14日の都内のシンポジウムにおいては岩田副総裁が「量的緩和政策、現在とても出口に近いところまできている」とコメントしている。そして、29日の福井総裁の記者会見において、量的緩和解除について「2006年度に入る前か、入って数か月程度」あたりに行われる可能性を示唆した。

 そして10月末に発表された展望レポートを受けて「展望レポートに示された経済・物価見通しが実現することを前提とすると、2006年度にかけて、量的緩和政策の枠組みを変更する時期を迎える可能性は高まっていくとみられる」と総裁はコメントした。

 総裁が指摘していたのはあくまで予測・可能性ではあるものの、この発言を巡っては一部市場関係者のみならず政府側からも時期尚早といった声が出ていた。コアCPIが現実にゼロ以上に浮上してからコメントしてもおかしくはないのではないか。ビハインド・ザ・カーブのリスクをとることを強調していたのにおかしいのではないかと言った声も上がっていた。しかし、総裁も、あくまで見通し・予測を示しているだけであり、ビハインド・ザ・カーブという約束を反故しているわけではない。

 量的緩和解除は3つの条件が整い次第行うであろうことは明白なものである。この3条件を整う環境にあること自体がすでにビハインド・ザ・カーブであるとの認識であったはずである。そもそも「後手に回る」というものは発言といったものを指すのではなく、政策変更自体のことを示しているはずである。

 CPIは、たとえばGDPや機械受注といった経済指標などのように、予測が実数値と大きく乖離するようなことは稀である。ある程度の予測が可能なものである。そしてまた10月以降は「特殊要因剥落」といった技術的な修正があることで、余ほどのことがない限り年末にかけてのプラス浮上は可能性が高いことは事実である。

 そしてまた、日銀と政府は日本経済に関して「踊り場からの脱却」を宣言しているなど、景気認識についてもある程度、日銀は政府と共有している。また、先行きの見通しについては、展望レポートで明らかにしている。これにより、解除条件が整う環境が迫りつつあることは確かであろう。それでもあえて、解除に向けての姿勢は明確にせず、あいまいなまま濁しておいて、しっかり条件が整うまでじっと待つべきであろうか。

 10月31日の福井日銀総裁会見において、福井総裁は次のような発言もしている。「量的緩和政策の導入と同様、枠組みの変更も先例のないものであるだけに、金融市場において経済・物価情勢に応じた価格形成が円滑に行なわれていくように配慮することが重要である」

 総裁が前向きな姿勢を示しているのは、タカ派な考え方をしているとか、スピードを重視する姿勢といったことも影響しているのではとの見方もあるが、多少それはあるとしても、もう少し現実的な要因もあったのではなかろうか。それが上記のコメントに現れていると思われる。つまり、先例のない枠組みの変更も慎重な配慮が必要であることを示唆している。

 ほとんど機械的となってしまっていた資金繰りについても、量的緩和が解除されれば再び金融機関はある程度職人芸的なノウハウの取得が必要とされる。これまで金融調節における資金繰りなどのリスクといったものが日銀に集中していたものが、再び金融機関に戻されることとなる。また量的緩和解除となれば、その後日銀の当座預金残高を引き下げねばならず、それに向けてのオペの対応といったものも解除前にある程度整えておく必要もあろう。そういった準備期間なども配慮すれば、解除時期などについてある程度事前に知らしめておくことも必要となるはずである。「円滑に行なわれていくように配慮」というものにそういった意識があったのではないかとも推測されるのである。
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by nihonkokusai | 2005-11-17 14:15 | 日銀 | Comments(0)
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