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中央銀行による国債の無制限買入で果たして効果は出るのか

 9月6日のECB理事会で、市場から国債を買い取る新たな対策を正式に決定した。ここでのキーワードは、対象となるイタリア、スペイン、ポルトガルなどの国債の「無制限買入」となっていた。確かに今回は目標や量をあらかじめ設定しないことが市場では注目された。

 ECBのアスムセン理事(ドイツ出身)は、ECBの新たな国債購入プログラムについて、上限を設定しなかったのはその効果を確実にするためだと説明した。ただし、ドイツ連邦銀行のバイトマン総裁の金融政策による政府財政ファイナンスと同義だとの批判に対して、「新プログラムは旧来のものよりはましだ」との発言もしている(ブルームバーグ)。

 市場では無制限介入という言葉の影響を与えながら、実際にはECBの購入には厳しい経済的条件が課され、期間も1~3年となるなど、現実にはかなりの制約もあり、その意味では前回の買入のように何ら制約条件がない買入に比べると効果がそれほど大きいものであるのかは疑問である。ただし、それでも市場はこの国債買入決定を好感し、スペインの10年債利回りが6%を下回るなどの効果がすでに出ている。市場での「無制限介入」への期待はそれだけ強かったと思われる。

 また、米国でも7日の米雇用統計を受けて、規模・期限定めないQE3を実施すべきとの、サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁が主張している。ほかにシカゴ連銀のエバンズ総裁、ボストン連銀のローゼングレン総裁も同様の主張をしている。また、アトランタ連銀のロックハート総裁も、これが選択肢に挙がっていると発言している。

 ただし、FOMC内ではQE3について、現状ではそのプログラムの有効性について疑問視している見方や、米国債やMBSの市場機能を阻害するのではとの懸念、中期的なインフレ期待を引き上げてしまうのではないかとの懸念も示されている。

 米国の雇用については不透明感も強いが、QE3を打ち出さなければならない水準かと言えば、それほど雇用が急激に悪化しているわけでもない。ここでたとえば規模・期限定めない無制限の米国債の買入をFOMCで決定したとしても、米長期金利に低下圧力、米株に上昇圧力は加わろうが、果たしてそれで雇用に影響が出るのかどうかも不透明である。インパクトは強いものの、のちのちにその副作用が出る懸念もある。

 日銀の国債買入については無制限ではない。しかし、これについてもやや不透明となってきてはいる。これまでの通常の国債買入(輪番オペ)については、日銀券ルールという制約がある。つまり、日銀の保有する国債残高を銀行券発行残高の範囲内とする運営ルールである。これに対して基金による国債買入は別枠としており、さらに買入残高を決めていることで無制限介入とはならない。ただし、この基金による国債残高を加えるとすでに日銀券残高を上回っていることも確かではあるが、とにかく歯止めがあることも確かである。

 ECBの国債の無制限買入も実際は前回ほど緩やかなものではない。FRBにとっても無制限買入まで行うにはその副作用も出ることが考えられるため、そう簡単には踏み切れないと思われる。どちらかといえば、追加緩和として基金による国債買入残高を増加させてきた日銀こそ、ある意味無制限買入に近いような格好であるが、それでも効果については限定的のように思われる。今回のECBの「無制限」という言葉はあくまで市場に向けたアナウンス効果も意識したものとみられ、それによる実質的な効果については、今後の動向で明らかになると思われる。


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by nihonkokusai | 2012-09-12 09:30 | 中央銀行 | Comments(0)
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