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日本の財政の持続可能性(白川日銀総裁講演より)

 9月6日の白川日銀総裁の講演では、日本の「財政の持続可能性」についても触れており、今回はその部分を取り上げてみたい。

 財政の持続可能性の問題について白川総裁は、「やや長いタイムスパンで考えた場合、日本経済にとって非常に重要なテーマである」と指摘している。

 まず、国の財政バランスが長期にわたって悪化した場合、財政の持続可能性を回復す る方法は、論理的にも歴史を振り返ってみても、3つしか考えられないとしている。ここは重要ポイントである。

第1は、成長力の引き上げや歳出入の改革を行って、財政バランスを回復すること。
第2は、国債の債務不履行、デフォルト。
第3は、インフレで帳消しにする方法。

 日本のデフォルトに対してあり得ないという見方については、先日のこのコラムで触れた。第3のインフレで帳消しにする方法については、この事例も過去の歴史を振り返ればたびたび出てくる。第一次大戦後のドイツ、フランスのポアンカレの奇跡と呼ばれたもの、また日本の終戦後なども事例となると思われる。これについては、デフレ下にある今の日本でインフレなどは到底想定することすら難しく、そのような可能性はやはり皆無に等しいとみる人も多いのかもしれない。しかし、オイルショックの頃の日本人に将来デフレがやってくると言っても誰も信じてくれなかったと思う。デフレという確証バイアスが働いてしまっていると、未来のリスクも見えなくさせてしまう恐れるもある。ただし、そう簡単にインフレが起きるとは現状、考えづらいことでもあることも確かではある。

 「わが国では大幅な財政赤字が続き、政府債務残高の対GDP比率は、国際的にみてもきわめて高い水準であるにもかかわらず、国債発行は円滑に行われ、長期金利も低位で安定しているのは何故か」

 この質問に対して白川総裁は2つの答えを用意している。第1の理由は、「日本は最終的に財政再建にしっかり取り組む意思と能力を有している」と投資家が信頼している点。そして第2の理由は、「金利はこれまで安定してきたのだから、これからも安定しているだろう、と投資家が漠然と予想している」という点である。

 「厳しい財政状況が国債金利の上昇というかたちで表面化していないことのもっも本質的な理由としては、第1の理由、すなわち、財政再建に対するわが国の意思と能力に対する信認にあると考えています。」

 これについてはやや疑問を呈したい。確かにこれまでの政府は財政再建に向けた努力を行ってきた。野田政権も非常に苦労して消費増税法案を可決したが、これも根底に財政再建がある。しかし、そもそも結果があまり見えてこない。たしかに海外の金融ショックや震災などの影響も大きかったが、新規財源債の発行額の推移を見ても減少する兆しがない。歳出も形式上現状維持に抑えるのがやっとの状況にある。

 さらに消費増税だけでもかなりの大仕事となるなど、現在の政局動向をみると、財政再建に対する能力というか、やる気があるのかすらも疑問が残る。このあたり今年中にも衆院の解散総選挙が実施される可能性があり、その結果次第でさらに状況は変わりうる。

 白川総裁も次のように述べている。「ただし、意思と能力は最終的には実績で裏打ちされなければなりません。中長期的な観点から、財政健全化に向けた取り組みを着実に進めていくことについて、市場の信頼をしっかりと維持していくことはきわめて重要です。同時に、金融政策面でも、中央銀行が物価安定のもとでの持続的成長を目的として運営されているということに対する信認維持がきわめて重要であり、日本銀行は財政ファイナンスを目的とした国債買入れは行いません。」

 そして白川総裁がもうひとつ指摘していた「金利はこれまで安定してきたのだから、これからも安定しているだろう、と投資家が漠然と予想している」という点については、今後も注意が必要である。漠然とした楽観は、何かのきっかけで崩れる可能性がある。市場の信認を形成させるにはそれを得るにはかなりの努力が必要だが、失うのはあっと言う間である。市場での信認を維持させることは国債価格の安定には必要不可欠であり、このあたり、国や中央銀行にとり重要な仕事となろう。

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by nihonkokusai | 2012-09-11 09:59 | 財政 | Comments(0)
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