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ECBの金融政策のよる新国債買い切りプログラム(OMTs)の是非

 9月6日のECB理事会で、市場から国債を買い取る新たな対策を正式に決定した。ECBが発表したプレスリリースによると、それは「Outright Monetary Transactions」と呼ぶようである。アウトライト取引とは単純に売りもしくは買いを行うことであり、今回のECBの場合は、国債の単純な買い切りを示すことになろう。

 これまでのECBが行っていた流通市場における国債買入はSMP(証券市場プログラム、Securities Markets Program)と呼ばれていたが、これとは別な国債買入であることを示すため呼び名も変えたものと思われる。

 これまでのSMPは2010年5月のギリシャなど欧米諸国の財政不安にともなう市場の動揺に対する欧州連合(EU)による最大7500億ユーロ規模のユーロ圏支援基金と証券買い取りプログラムと呼応して取られた措置である。

 これにより、ECBが国債の流通市場に介入することになったが、1999年のユーロ発足以来、欧州の中央銀行が国債の買入を実施するのは初めてであった。この際のECBによる国債の買入目的は、日銀のように市場への資金供給が目的ではなく、あくまで国債市場の安定化、市場機能の正常化が目的とされた。金融政策への影響を避けるために、国債買入で放出した資金を回収する手段を講じた。

 SMPは2010年5月に実施されたあと一時中断し、2011年8月に再開されたが、2012年3月を最後に再び中断されていた。2010年5月はギリシャ国債を購入し、2011年からはスペインとイタリア国債を購入したとみられるが、ECBはこの国債買入について規模やその対象について明らかにしていない。2012年4月以降、購入を見送ったのはドイツ連銀による猛反発が要因とされた。

 今回のECBによる新国債買い切りプログラム(OMTs)には、SMPと異なり明確な条件が付けられている。国債買入の対象となる国は、まずユーロ圏諸国に対しEFSF・ESMによる支援を要請し、その支援を受けるための財政再建等に取り組む必要がある。つまりECBによる国債買入を実施するには、対象となる国がEFSF・ESMによる支援を受けることが前提となる。SMPにより買入が開始されても、条件が巡視されなければ一時的に停止もありうる。

 買入の対象は期間1~3年の国債が中心となる。買い入れ規模に上限は設けない。つまり無制限の買入となるが、買入には条件が付いている点にも注意する必要がある。

 買い入れた債券については、民間債権者を含むその他債権者と同等の扱いとなる(優先債権者待遇を適用しない)。国債買入で放出した資金は回収される(不胎化)。

 買い取った債券の保有残高と時価は毎週公表し、保有債券の平均償還期間と国別内訳も毎月公表される。これもSMPと大きく異なる点である。

 OMTsの導入によりSMPは中止する。ただし、購入済みの証券の非不胎化措置は継続され、またSMPにより買い入れた債券については満期まで保有する。

 今回のOMTsの決定によりECBは新たな領域に踏み込んだとの見方がある。ドラギ総裁は、「今回の対策は、ユーロの将来に対する投資家の根拠のない懸念からくる債券市場のゆがみに対処することができる」と述べた。

 これに対して今回の決定に一人反対したドイツ連銀のバイトマン総裁は、ECBの国債買入は金融政策が財政政策に隷属する恐れがあり、ECBが最終的に多大なリスクを各国の国民に再分配するという危険性もはらんでいるとしている。

 ECBによる国債買い入れは紙幣増刷による政府への財政ファイナンスに等しいと懸念を示すバイトマン総裁の意見も正論であろう。しかし、ユーロ危機の封じ込めには、かなり思い切った手段が必要となる。マーケットの不安をまず払拭させない限り、危機が繰り返し訪れる。つまりマーケットでの南欧国債の売りに歯止めを掛けることで、危機を緩和しうる。ただし、この政策はバイトマン総裁の主張するように副作用も伴うものであり、また対象国の財政健全化がせなされなければ一時的な時間稼ぎとしかならない。

 今回の新国債買い切りプログラムの是非については、すぐには解答は出ないと思う。今後もドイツ連銀総裁はこの買入については反対の立場を貫こう。米国のQEを含め、中央銀行による国債買入に対する評価については、もう少し時間も必要になりそうである。

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by nihonkokusai | 2012-09-09 11:36 | 中央銀行 | Comments(0)
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