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ECBの新国債買入は何故、アウトライト取引と呼ぶのか

 9月6日のECB理事会で、市場から国債を買い取る新たな対策名は英語で「Outright Monetary Transactions」とあった。これまでのECBによる国債買入は「Securities Markets Program」(証券市場プログラム)となっていた。証券市場と言っても主に国債市場のことで、そこでの買入のプログラムであった。これに対して今回は、「アウトライト取引」と称した理由は何であろうか。金融市場でアウトライト取引とは、すでに日本語化されているものであり、売戻条件を付さない買入もしくは買戻条件を付さない売却を示す。つまり単純な市場からの買い、もしくは売りを示す。

 何故、アウトライトという言葉を使ったのかについては、プライマリー(発行)市場からではなくセカンダリー(流通)市場から国債を購入するということを意識して使ったのではないかとの指摘があった。

 現在の中央銀行の多くは国債の直接引受は禁じられている。たとえば米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。以前、指摘したようにまた、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっている。

 欧州では1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなっている。つまり、ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されている。当然ながら欧州中央銀行(ECB)も国債の直接引受は禁じられている。

 しかし、今回のOMTsに対してただ一人反対したドイツ連銀のバイトマン総裁は、今回の買い入れは紙幣増刷による政府への財政ファイナンスに等しいと考えており、ECBが最終的に多大なリスクを各国の国民に再分配するという危険性もはらんでいるとしている(ロイター)。

 今回のECBによる新たな国債買入の目的は、あくまで国債市場の安定化、市場機能の正常化であり、政府への財政ファイナンスではない。

 また、日銀やFRB、BOEの国債買入は、市場に対して資金を供給することが大きな目的である。ここには長期金利の低下を促す目的もあるが、これは市場金利の跳ね上がりを抑えるものではなく、少しでも金利を下げて景気や物価に働きかけようとするものである。

 ところがECBの国債買入は、財政不安に伴う金利上昇の抑制であり、金利上昇により資金調達が困難になることを避けるのが目的となる。つまり、財政ファイナンスそのものではないが、それを助けるための政策であることは確かであり、バイトマン総裁の指摘はある意味正しい。

 ドラギ総裁を初めとしてECB理事たちが、今回のプログラムの名称を「Outright Monetary Transactions」と呼ぶことにしたのは、バイトマン総裁の反対を意識し、財政ファイナンスに近い物ではあるものの、これはあくまで市中から買い入れることで、禁じられた国債引受ではないことを示すのが目的であるかと思われる。この名称を見ても、かなり今回の国債買入については神経を注いでいたように思われる。

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by nihonkokusai | 2012-09-07 17:55 | 国債 | Comments(0)
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