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自民党と民主党、日銀へのアコードと外債購入要請への疑問

 自民党は8月31日に国内経済の再生に向けた政策をまとめた「日本経済再生プラン」を発表した。ここには円高・デフレから脱却するために政府・日銀で2%程度の物価目標を協定として締結。日銀による外債購入など、日銀法改正を視野に大胆な金融緩和措置を講じることなどを盛り込んでいるそうである。

 9月5日付けの日経新聞によると、民主党が次期衆院選で掲げるマニフェスト(政権公約)の素案の中に政府と日銀感のアコード(政策協定)を結び、円高是正と一段の金融緩和を期待し、日銀に外債購入を要請する方針を打ち出したそうである。

 対日銀に関しては、「アコード」と「外債購入」という部分で、民主党案は自民党案のまさにコピペ(コピーアンドペースト)となっている。別に民主党が自民党案の真似をしたと指摘するつもりはない。両党ともに同じような主張をしていたことについて、少し疑問を呈したいと思った次第である。

 そもそもアコード(協定)の意味を取り違えていると思われる。政府と中央銀行のアコードというのは、米国の「アコード」のことを通常示す。第二次世界大戦後、国債の利払いコストを抑えさらに利上げによる国債価格の下落を回避しようとしたアメリカの財務省と、インフレ抑制のために金融引き締めを主張するFRBとの対立が激化した。このため1951年にトルーマン大統領の調停により、財務省とFRBとの間で「アコード」が成立し、国債管理政策と金融政策が「分離」され、これによって低金利政策は廃止され、FRBは政府からの「独立性」を強めたのである。

 2009年8月に白川日銀総裁は、このアコードについて次のようなのような発言をしていた。

 「米国の政策アコード導入以前の金融政策は、国債価格のペッグと申しますか、国債価格を支持するということに割り当てられていました。しかし、アコードの導入により、そうしたことから解放されて金融政策が物価安定という目的に割り当てられるように変わり、中央銀行が独立性を回復しました。」と述べている。

 今回の自民党と民主党のアコードとはこの歴史の経緯から見れば「逆アコード」とも言えるものである。

 ただし、自民党と民主党のアコードというのは、ニュージーランド準備銀行が、年度始めに政府側の代表である財務大臣との間で法律に基づいて物価安定のために金融政策を実行するという契約書を取り交わすPTA(Policy Targets Agreement)と呼ばれる政策目標協定のことを意識したものなのかもしれない。

 もしくは英国で財務省が「物価の安定」の内容を決定し、イングランド銀行が政府の経済政策を具体化する責任を負っていることで、英国を意識したものなのかもしれない。つまりはニュージーランドや英国風のインフレ・ターゲッティングを求めているのであろうか。

 日本の金融政策そのものの在り方を問い直したいとの気持ちもわからなくはないが、自民党と民主党のアコードは、日銀の独立性を排除し政府の意向を強く反映させる金融政策を行うようにしたいとも取れる。これが世界の金融政策の歴史そのものに逆行した動きとなることは言うまでもない。政府の意向が強く反映された中央銀行に対して、果たしてこれまで通りの信認を得ることができるのか甚だ疑問である。

 また、日銀による外債購入については、その目的が円高対策であるのであれば、日銀法の改正が必要になる。

 日銀法第40条には、「日本銀行は、その行う外国為替の売買であって本邦通貨の外国為替相場の安定を目的とするものについては、第三十六条第一項の規定により国の事務の取扱いをする者として行うものとする。」とあるように、介入などを含めた為替操作に繋がる日銀の仕事は事務方であり、あくまで介入を行うのは国、政府の役割となる。

 このため、自民党案には日銀法改正を視野に、とある。またもし民主党が日銀に外債購入を要請し、それが円高対策を念頭に置いたものであれば、法律違反をしろと言うことになる。もちろん民主党もそのあたりは認識し、日銀法改正も含んだものとしての主張かと思われる。

 しかし、日銀法改正までして日銀に外債を購入させると円高対策となるのであろうか。そんなことをせずとも、単純に政府が為替介入をすれば済むことではなかろうか。デフレ対策と称して何にでも日銀に責任を負わせようというつもりなのであろうか。

 政府による為替介入、この場合はドル買い円売り(もしくはユーロ買い円売りか)となろうが、それには政府短期証券を発行して資金を手当てしなければならない。それに対して日銀が直接外債を買えば、その分資金が市場に出回るので、緩和効果も狙えると考えているのかもしれない。しかし現在、日銀は基金による国庫短期証券の買入等を行っており、同様の効果が出ているはずである。

 別に日銀が直接に外債を買わずとも、政府が大規模為替介入をして、その介入資金で米債等を買えば済む問題なのではなかろうか(もちろん、それを相手国が容認するかという問題が存在するが)。それとも政府ではなく日銀が直接為替介入を行えば、もっと上手に円安誘導が可能と自民党と民主党は認識しているのであろうか。

 念のために付け加えると、過去の介入の事例を見ても、円高にブレーキを掛けることはあっても、流れを変えさせるようなことは出来ていない。あくまで市場全体のマインドが大きく変化しない限り、介入での為替操作には限界がある。だから矛先変えて、さらに欧州の信用危機対策等も込めての一石二鳥の外債購入なのかもしれないが、結果は介入とあまり変わらず、日銀券の信用の裏付けとなる日銀資産に為替リスクの伴う外債が積み上がるだけと、個人的には思うのであるが。

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by nihonkokusai | 2012-09-06 09:22 | 日銀 | Comments(0)
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