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ECB総裁とドイツ連銀総裁の決戦は木曜日

 「ドラギ対バイトマン」というと、まるで怪獣映画のようなタイトルになってしまうが、この映画(?)には前作があり、そのタイトルは「トリシェ対ウェーバー」であった。

 ECBのトリシェ前総裁の後任には当初、ドイツ出身者が就任するであろうことが暗黙の了解のようになっており、ドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)のウェーバー総裁(当時)が最有力視されていた。しかし、そのウェーバー総裁は、「個人的な理由」で2011年4月末にドイツ連銀総裁を辞任した。

 ウェーバー総裁は、ECB理事会において、インフレを加速し中央銀行の政治的独立性を損なうとして加盟国の国債買い入れに強硬に反対しており、それがドイツ連銀総裁を辞任し、つまりは次期ECB総裁候補から降りた要因となった。歴史にもしもは無いが、ウェーバー総裁が辞任せずに、ECB総裁となっていたならば、ECBの政策は大きく変わっていた可能性がある。

 今年8月2日のECB政策理事会後のドラギ総裁の会見で、イタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明したが、国債の買い支えの時期等や新たな政策の詳しい内容は明らかにされなかった。さらにドラギ総裁は、ドイツ連銀のバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにした。

 ドラギ総裁はワイオミング州ジャクソンホールに参加予定で、講演も予定されていたにも関わらず直前になってシンポジウムへの参加を取りやめた。その理由として、向こう数日に多忙を極めると予想されるためとECB報道官は語っていた。

 ECBが検討しているとされる短期国債主体としたスペインやイタリアの国債を買い上げるための非公表の利回りターゲット設定が完全に詰められていない可能性がある。ECBとEFSFとの役割分担、さらにEFSFが銀行免許を得て国債を購入するとの方式等もあるが、このあたりの対策を協議するためなのか、ドラギ総裁だけでなくECB理事もジャクソンホールには出席しなかった。

 ブンデスバンクのバイトマン総裁は、引き続き国債買入再開に反対の姿勢を示していることも影響し、最終的な落としどころをいまだ探っている可能性もある。このバイトマン総裁はジャクソンホールのシンポジウムに参加するようであるが、予定されていた3日の滞在を1日に短縮するようである。

 ECBが2011年8月に国債買い入れを再開した際には、バイトマン総裁やシュタルク専務理事ら4人が、債券買い入れに反対したとも伝わった。今回はいまのところバイトマン総裁のみが反対を表明している。ドイツのメルケル首相はECBの国債買入に対しては賛成しているようで、ドイツの元財務次官であったアスムセンECB理事も賛成に回るであろうとの見方が強い。ただし、アスムセン氏は、ウェーバー前ドイツ連銀総裁の影響を強く受けているとも言われている。

 さらに、9月12日のドイツの憲法裁判所が欧州安定化メカニズム(ESM)の合憲性をめぐる判断を確認しないことには国債買入を再開することはできず、もしECBが短期債の非公表の利回りターゲット設定による買入を行うにしても、9月6日には具体的な発表はできず指針を示すのみではないかとみられている。

 ウェーバー前ドイツ連銀総裁が加盟国の国債買い入れに強硬に反対し辞任していたことで、ECBの国債買い入れは薬物に似ており、政府が依存症に陥るリスクがあるとの認識を示したバイトマン総裁も辞任するのではないかとの観測も出ていた。実際にバイトマン総裁はECBの国債買入への反対を理由に何度か辞任を検討との報道もあった。しかし、反対を貫くために辞任せずにいるとの見方もある。

 これについては、9月6日の木曜日に開催されるECB政策理事会でいったいどのような決着が付くのか。イタリア出身のドラギ総裁もドイツ出身者以上にブンデスバンクの流れを引き継いでいる総裁とみられ、バイトマン総裁の指摘も理解しているはずである。中央銀行がそこまで首を突っ込むことには大きなリスクを伴うが、現在、ユーロ圏の危機を救えるのはECBとの認識もあろう。ドラギ対バイトマンという映画は、まさに現在のセントラルバンカーが抱える大きな矛盾を示す戦いであるようにも思われるのである。

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by nihonkokusai | 2012-09-03 09:53 | 中央銀行 | Comments(0)
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