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消費増税や歳出枠を定めても新規国債発行額は抑制できず

 野田首相は8月31日の閣僚懇談会で、歳出の大枠71兆円を2015年度まで継続する方針を決めたそうである。少子高齢化に伴う社会保障費の自然増が毎年度1兆円規模であることなどを考えれば、その分の歳出削減を目指すこととなり、このように歳出にギャップをかけることは重要だと思う。

 内閣府はこの閣議で経済財政の中長期試算を報告した。

「経済財政の中長期試算」
http://www.npu.go.jp/policy/policy01/pdf/20120831/20120831_naikakuhu.pdf


 2020年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字は15.4兆円と名目国内総生産(GDP)比で2.8%にとどまり、消費税率が10%になっても政府が国際公約として掲げる黒字化が達成できない見通しとなっている。

 ただし、国と地方を合わせたプライマリーバランスの赤字幅は、2015年度16.1兆円、対名目GDP比で3.2%、2020年度に15.4兆円、同2.8%との見通しで、2010年度の名目国内総生産(GDP)対比での赤字半減という目標は達成するとの見込みのようである。

 これらの数字は2020年度までの平均成長率を名目で1%台半ば、実質1%強とする「慎重シナリオ」でみた場合となる。消費者物価指数上昇率は2012年度にプラスとなった後、超長期的には1%近傍で安定的に推移するとしている。

 2020年度の新規国債発行額にあたる財源不足は52.5兆円まで膨らむ見通しで、2012、2013年度は基礎年金の国庫負担分をつなぎ国債で賄うため46.8兆円、46.0兆円と、46兆円台になる。消費増税の実施後、2014年度は42兆円台に縮小するが、2016年度からは再び増加に転じる予想となっている(日経ネット版の記事を参照、経済財政の中長期試算で数値を確認できる)。

 新規国債の発行額となる歳出と税収等の差額については、消費増税の実施後は縮小するといっても42兆円規模であり、2012年度の46.8兆円(2.6兆円のつなぎ国債を含めた数値)よりは削減されるといっても40兆円規模が継続され、2020年度には50兆円台の見込みとなっている。

 これまでの日本の新規国債の発行額の推移を見てみると、1997年度は18.5兆円であった。1998年度に34兆円に急増し、2001年度には小泉首相が30兆円に抑えたものの、2002年度に35兆円に。2006年度、2007年度は30兆円割れとなったが、2008年度は再び増加し33兆円台に。2009年度に至っては金融危機等の影響から53.5兆円と50兆円を超えたが、当然ながら40兆円台といっても決して小さな数字ではない。

 消費増税が実施されても、この新規国債の発行額はそれほど抑制されず、「経済財政の中長期試算」によると、むしろ2020年度には52.5兆円と2011年度以来の50兆円超えが予想されている。これには歳出増とともに、国債残高が毎年積み上がっていくため、その分金利負担が増加し、利払い比と償還費を合わせた国債費が年々増加傾向になるとの予想になっていることも影響している。

 利払い費に絡んでは、「金利ボーナス」と呼ばれる利払い費用の抑制効果がなくなり、その分増加しやすい状況となっていることにも注意が必要である。金利ボーナスとは、過去の高い金利の国債が償還期を迎えると、その分は低い金利で借り換えることになり、その分の利払い負担が軽減される効果のことである。しかし、1990年代後半以降は長期金利の低位安定が長く続き、その抑制効果は次第になくなりつつあり、今後は国債残高の増加がそのまま利払い費に影響する状況となっている。

 超低金利が果たしてどこまで継続するのか予測は難しい。現在の超低金利が続いたとしても、利払い費の抑制には限界があるとともに、長期金利が上昇すれば、その分、国債費の増加に大きく影響してくることになる。

 消費増税が実施されても、プライマリーバランスはそれほど改善されず、さらに毎年度の新規国債の発行額も大きく減少することは想定できず、毎年度40兆円を超えるような発行規模が維持されてしまうことを認識しておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2012-09-02 11:56 | 国債 | Comments(0)
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