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FOMC議事要旨に見るQE3の可能性

 8月22日に公表された7月31日から8月1日にかけて開催された、連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨から、特にQE3の可能性について探ってみたい。

 ちなみに「minutes」は議事録と訳されることが多いが、FOMCの約3週間後に発表されるものは日銀が会合の約1か月後に発表する議事要旨に内容が近い。日銀は10年後に精細な内容が記された議事録を発表するが、米国も議事中のジョークまでも含めた議事録(Transcript)を5年後に公表しているため、ここでは日銀に合わせる格好で議事録ではなく「議事要旨」としたい。

 そしてQE3という表現についてだが、市場ではFRBによる大規模資産購入を量的緩和(Quantitative Easing)として、その頭文字をとってQEと呼んでいる。しかし、バーナンキ議長などは自らの政策を「量的緩和(QE)」とは呼んでいない。今回の議事要旨内でも、QE3という用語を見つけようとしても出ていない。それに該当するのは「a new large-scale asset purchase program」、つまり「新たな大規模資産購入プログラム」である。

 この大規模資産購入プログラムについては、多くの参加者(投票権を持つメンバー以外の参加者含む)が、長期金利に低下圧力を加え、金融環境を緩和する効果を持つことで、景気回復へのサポートになることは明らかであるとした。

 加えて、何人かの参加者からは新たなプログラムが、企業や家計の信頼を得ることで、デュアル・マンデート達成に向けの委員会の姿勢が強化される効果もあるとの指摘もあった。

 しかし、他の参加者からは、現状ではそのプログラムの有効性について疑問視しており、さらに、経済活動への影響は一時的なものかもしれないと指摘する参加者もいた。

 さらに何人かの参加者から、米国債やMBSの市場機能を阻害するのではとの懸念が示されたが、連銀スタッフは機能を阻害せずに買い入れる余地はまだあるとの分析を行っていたようである。

 しかし、いずれFRBのバランスシートを正常化させる際に詐害要因になるとの懸念も示され、数人の参加者からは中期的なインフレ期待を引き上げてしまうのではないかとの懸念も示された。

 今回の議事要旨では、経済が大幅に改善しないかぎり、かなり早期に追加緩和を行うとの姿勢が示されたと受け止められた。しかし8月1日の声明文で、「必要な時に適切な追加の緩和策を行う」として、前回の「さらなる措置を適切な時に行う用意がある」との表現からやや踏み込んだ格好となっていた。このため、9月12日から13日にかけて開催されるFOMCでの追加緩和期待は、すでに出ていたが、それをあらためて今回の議事要旨で裏付ける格好となった。ただし、問題はその手段である。

 以前、議会証言でバーナンキ議長が示唆した追加緩和として、米国債やモーゲージ担保証券(MBS)などの追加債券買い入れ、つまりQE3。そして、連銀窓口貸出や超過準備金利引き下げ。さらに超低金利政策の継続期間についていつまで続けるかの予想期間の先延ばしなど時間軸の強化を指摘していた。

 このうち市場ではQE3を最も期待していると思われる。また、連銀スタッフもゴーサインを出しているかのように思われる。しかし、今回の議事要旨の内容をみると、FOMCの参加者の間からはその効果に疑問を呈し、さらにはそれによる弊害も意識した発言が出ていた。この参加者の発言内容を見る限り、かなり米経済もしくは金融システムに危機的な状況にでも陥らない限りは、QE3の可能性はさほど高くはないのではないかとも考えられる。

 今回は、経済が大幅に改善しない限り、という条件がついたが、会合後に発表された米雇用統計などでは改善が示されていることで、少なくともQE3の可能性はさほど高くはないのではなかろうか。加えて、年末に向けては財政の崖への懸念もあり、これに備えてむしろQE3という切り札は温存しておく可能性が高いと思われる。

 ただし、米大統領選挙も意識すると今回手を打たなければ、年末まで動きづらくなる。このため、QE3ではなく他の手段、特に「時間軸の強化」あたりが実施される可能性がありそうである。


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by nihonkokusai | 2012-08-24 09:30 | 中央銀行 | Comments(0)
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