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ECBによる一定利回りでの国債買い支えは劇薬

 ドイツ週刊誌シュピーゲル(電子版)は19日、欧州中央銀行(ECB)がスペインなど債務危機に陥ったユーロ圏諸国の国債利回りに目標水準を設定し、この水準を下回るまで流通市場で国債を買い上げることを検討していると報じた(時事通信)。

 8月2日のECB政策理事会で、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置いたが、記者会見でドラギ総裁は、利下げの可能性について討議したことも明らかにし、数週間以内に、非伝統的な金融政策の追加の枠組みを準備するとも発言、そしてイタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることも表明した。

 7月26日にECBのドラギ総裁はロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要な、いかなる措置をも取る用意があると表明していた。

 戦後、日米欧の中央銀行が自国の国債の利回りに上限を設け、それを越えてきた際に買入を行い利回り低下をはかるといった措置が講じられたケースはたぶんないはずである。

 シュピーゲル誌によると、今回ECB内で検討されているのは、各国の国債利回りとドイツ国債利回りスプレッドに目標を設定し、このスプレッドが目標に収まるようECBは随時、国債を買い上げるそうである。

 2011年11月にスイス中銀は、スイスフラン高を抑制するため、スイスフランの対ユーロレートの下限を1ユーロ1.20スイスフランに設定すると発表し、この水準を守るために無制限に外貨を購入する、つまりスイスフランを売る用意があると表明した。今回のECBが行うかもしれない政策は、このスイス中銀が行ったものの国債版となり、まさに国債市場への介入となる。

 これに対しECB報道官は、未決定の計画やまだ理事会で協議されていない特定の見解について報道することは誤解を招く恐れがあると発言し、この報道内容については否定した。さらにドイツ財務省の報道官も、そうした計画は認識していない、聞いたこともないと発言したそうである。

 たしかに中央銀行による国債市場への介入となれば、様々な弊害も生じよう。そもそも国債市場がそのターゲットを意識した動きとなってしまいかねず、正常な利回り水準を探る動きを阻害する可能性がある。ある意味、投機筋の動きを牽制する機能もあろうが、むしろ為替介入の際などの時のようにヘッジファンドなど投機筋の仕掛けの標的にされる可能性もある。1992年にジョージ・ソロス氏の標的にされたイングランド銀行の二の舞になりかねない。

 さらに中央銀行は無尽蔵に紙幣を発行できるため、国債の介入も可能との見方も非常にリスクがある。そもそもドイツ連銀(ブンデスバンク)がタカ派的なイメージを強めたのは、中銀の国債引受により、第一次大戦後にハイパーインフレを招いてしまった歴史の教訓による。

 8月2日にドラギECB総裁は会見で、ドイツ連銀のバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにしている。ECBが採決の内容を外部に公表するのは日銀やFRB、ECBなどと異なり、極めて異例であった。また、ドイツ連銀は最新の月報でもユーロ圏ソブリン債の買い入れには引き続き批判的だとの見方を示した

 8月2日の政策理事会で反対したのはバイトマン総裁だけで、過去に同様なことがあった際にドイツ連銀に組みしたルクセンブルグやオランダの中銀総裁、さらにドイツ出身のアスムセン理事(ドイツの前財務次官)もドイツ連銀側には付かなかった。ただし、アスムセン理事はその後のインタビューで、ドイツ連銀がECBの国債購入への反対で孤立しているとの観測を否定している。

 9月6日のECB政策理事会では、ドイツ連銀の反対を押し切って、して何らかのかたちでの国債買入を決定するものと予想される。ただし、今回報じられたような国債利回りスプレッドに目標を設定するようなことになると、ECBは無制限にリスクが高い国債が資産に積み上がり、状況次第ではインフレ圧力を強めさせかねない。ECBの信認への懸念が出れば、ユーロそのものが売られ欧州危機をさらに深刻化させかねない。これはかなりリスクの伴う手段であり、ここまで踏み込む必要はないであろう。

 もちろんあまり中途半端な政策では、投機筋の動きが牽制できないとの意識もあろうが、劇薬を使うならばその副作用も意識しなくてはいけない。ちなみに、スペインのデギンドス経済相は、スペインの借り換えコストを圧縮し、ユーロ圏の今後に関する懸念を払しょくするため、ECBが効果的で無制限の国債買い入れに踏み切るべきと発言していたようである(ロイター)。

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by nihonkokusai | 2012-08-21 10:09 | 中央銀行 | Comments(0)
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