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日本での政策金利のマイナスはあり得るか、また効果はあるのか

 2009年7月にスウェーデンの中央銀行であるリクスバンクは世界で初めてマイナス金利政策を実施した。預金ファシリティの金利をマイナス0.25%に決定したのである。預金ファシリティとは超過準備に利息を支払う制度である。

 この政策については、超過準備にマイナスの金利をつけることにより、その分の資金が市中に還流させることが目的かとの見方があった。しかし、実際には0.25%の政策金利に対し、0.5%上乗せしてロンバート貸出金利、0.5%差し引いて預金ファシリティ金利(その結果マイナス0.25%)を単純に決めただけのことであったようである。

 今年の7月5日に、デンマーク中銀ではECBの利下げに合わせて、主要政策金利である貸出金利を0.25%引き下げ0.20%にし、譲渡性預金(CD)金利を0.05%からマイナス0.20%に引き下げている。これは 自国通貨のクローネが、ユーロに対し強くなり過ぎないようにするための措置とみられた。

 たしかにマイナス金利と聞くとインパクトのある政策のように思われるが、実際のところそれほど影響が出ることは考えづらい。日本でも、たとえば超過準備の付利をマイナスにしたとしても、その資金が流れる先は国庫短期証券などであろう。銀行の貸し出しを延ばそうとしても、そもそも企業に資金を借りて設備投資をしようという意欲がなければ、貸出が伸びるわけではない。これまでも日銀がゼロに近い金利で貸出を行っても、それが直接景気浮揚に結びつくわけではなかった。もちろん、景気が回復基調となり資金需要が増えてくれば、その効果は出てくるわけではあるが。つまりはマイナス金利だろうが、金融政策で景気に直接刺激を与えることは難しい。

 日本では以前、預貯金金利を課税などにより実質的にマイナスにしてはどうかとの意見も出ていた。金融機関などが保有する大量の資金は、それを安全に置く場所は限られるため、マイナス金利であろうが、リスク資産に向かうようなことは考えづらい。それに対して、個人は金利に敏感であるため、極力、マイナス金利は避けようとすることが考えられる。つまりペナルティが付く預金に対しては、現金を引き出して現金として保管しよう。つまりタンス預金が増える。

 まとまった資金は個人向け国債等に振り向けられることも予想される。これで国債の安定消化には繋がりそうにみえるが、実はそうでもない。銀行はコア預金という考え方があり、普通預金でも一定金額は口座に滞留しているため、その分、ある程度期間の長い国債等で運用することがある。ところが個人の預貯金口座に資金が置かれなくなると、金融機関は運用する資金そのものが減少し、長い期間の国債が買えなくなり、これは国債需給にマイナスの影響を与える懸念がある。

 預貯金金利まで実質マイナスとなるとなれば、個人はたとえ保有する現金が増えても、それを消費、いや浪費するようなことは考えづらい。欧州と異なり、もし日本でのマイナス金利があったとしてその背景に考えられるのはデフレである。つまり、デフレの解消が想定できなければ、大事な現金は利息はつかなくてもできるだけ安全に保管し、将来に備えることを優先すると考えられる。マイナス金利にすれば景気浮揚に繋がるとの見方は、決して正しいとは思えないのである。


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by nihonkokusai | 2012-08-19 11:13 | 日銀 | Comments(0)
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