「日銀VS政府」
さらに15日には谷垣財務相が「国と日銀の政策が別方向に行くことはおかしい、方向感は一致すべき」、「デフレは依然として継続しているとの認識、政府と日銀にそごはない」、「日銀の金融政策は大きな意味で国の政策の一環」との発言を行っている。加えて与謝野金融・経済財政担当相も「量的緩和解除の第三条件、全体考えて判断する余地ある。」、「日銀に独立性あるが、政府政策との整合性定めた日銀法の精神もある」とこれまでの日銀寄りの発言からややトーンを変化させてきている。
上記の政府側の発言は11日の下記のような福井日銀総裁の発言を意識したものとの見方が強い。「物価の動き、ユニット・レーバー・コストなどで正確に判断できる」「デフレ脱却をひとつの時点で明確にできる人いない」「量的緩和は金利機能殺す非常手段、異常なものはいつまでも続けられない」「物価の上昇ペース、加速していく可能性は低い」「CPIの安定的プラス確認したらひとつの通過点を間違いなくこえさせてもらう」「一度プラスになった CPIが簡単にマイナスに戻ること考えにくい」。
特に「異常なものはいつまでも続けられない」「通過点を間違いなくこえさせてもらう」といった表現はこれまでになく強いもののように思われ、これが政府側に反応を起させたと見る向きも多いが、果たしてそうであろうか。
上記の福井発言は、どこか2000年4月12日の当時の速水日銀総裁の会見内容を思い起こさせる。この際は、当時の森前首相の就任挨拶でゼロ金利解除に前向きな姿勢を速水総裁が示したものの、快い返事がなかったことなどが要因で、速水総裁はさらなる強気の姿勢を示したのではないかとの憶測もあったが、会見時はかなり異質な雰囲気に包まれたと言われていた。
今回、政府側と日銀執行部で何かしら接触があったとしてもおかしくはない。このタイミングでの政府の日銀の量的緩和解除に対するトーンの変化は何かしら要因があってしかるべきとも考えれる。
このタイミングでの政府の日銀の量的緩和解除に対するトーンの変化は、むしろ何かしら別途要因があってしかるべきとも考えられる。たとえば、政府サイドからの日銀牽制コメントは、帝国データバンクによる調査にもあったように企業経営者の多くが量的緩和解除を時期尚早としており、また日本商工会議所の山口信夫会頭も「慎重に対応して欲しい。(中小企業にとって)景気はそれほど良くなっていない」といったコメントをしていた。このように自民党の支持基盤のひとつとも言える企業経営者の意識といったものも背景にある可能性がある。
あまり憶測ばかりしてはいけないものの、気になる今後の予定のひとつに、16日の日米首脳会談がある。日本のデフレ脱却に向けた意思表示と取れなくもない。そしてこれはあくまで憶測に過ぎないが、米国政府からの何がしかの圧力があったと可能性もある。そもそも以前のゼロ金利政策自体が米国政府からの要請に応じたものと言えなくもなかった。しかし、今回も米国再度の意向があったとしてもその理由がつかめない。
また17日から18日にかけては日銀の金融政策決定会合が開催される。まさかここで量的緩和解除といった可能性はないが、何がしか動きがある可能性もあるのであろうか。また、政府側の発言はこのブラックアウト期間を意識したものといった見方もあった。
政府部内では、歳出削減が先か増税が先かで意見が完全に分かれている。しかし、どちらにしても景気に対してはマイナス要因とも考えられ、日銀による金融政策でのフォローは続けてほしいところであろう。このため、日銀包囲網という点ではどうも歩調を合わせている感もある。この事態、いったいどのように理解すべきなのか。もう少し様子を見る必要もあると思われる。