2020年東京オリンピックの開催の可能性と日本の財政への影響
2020年の夏のオリンピック開催都市を選ぶIOC総会は、来年9月7日にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれる。今年5月の第1次選考で、東京、マドリード(スペイン)、イスタンブール(トルコ)の3都市が最終選考に進んでいる。
トルコは2020年のサッカー欧州選手権にも立候補しており、同じ年に大規模な競技大会を開催することは困難としてやや不利との見方もある。ただし、サッカー欧州選手権の開催地はまだ確定しておらず、このあたりの状況は不透明となっている。また、スペインについては、欧州の信用不安の震源地のひとつともなっているため、オリンピックどころではないという状況ではなかろうか。このため2016年の大会にも立候補していた東京が有利との見方もあるが、こちらは地元東京都民の支持率の低さが大きなネックとなっている。
しかし、今回のロンドン・オリンピックでの日本人選手の活躍により、日本でのオリンピック開催に向けた機運が今後盛り上がる可能性がある。私を含めて、一定の年代層にとり生きている間にもう一度オリンピックの地元開催を見てみたいという人もいるであろうし、夏季オリンピックの地元開催を全く知らない年代層にとっても、地元で開催されるオリンピックへの関心があらためて高まるのではなかろうか。
もし2020年の夏季オリンピックの東京開催が実現すれば、日本での久しぶりのピッグイベントとなる。費用は最低限に抑えられるとされながらも、このオリンピック開催によるインフラ整備等にはかなりの費用がかかることが予想される。
現在の都内のインフラは前回の東京オリンピックで整備されたものが多い。特に首都高や新幹線、青山通り、東京モノレール等の交通網が整備された。首都高などすでに50年以上も経過しているものはあらためて、メンテナンス等も必要とされるであろうし、渋滞回避のための整備も必要になるのではなかろうか。
これらのインフラ整備等も含めて、あらたな費用もつぎ込まれるとみられるが、公共投資により日本の景気回復のひとつのきっかけとなる可能性もある。また、商業化されてきているオリンピックでもあり、一定の収入も見込めるであろう。また、海外からの観光客の流入などにも繋がり、日本への宣伝効果も大きなものがある。
東京オリンピックに向けてのインフラ整備等の反動が、昭和40年不況を呼び、戦後初の国債発行に繋がった。以前にも指摘したが、オリンピックの国内開催は、日本の財政面で大きな転換の年となっていた。
札幌で冬季オリンピックが開催された1972年は日本列島改造論が出た事に加え、福祉元年とも言われた年となった。その後のオイルショックも加わり、高度成長から低成長時代に移るとともに、一般歳出に占める社会保障費を増加させるきっかけともなった。
長野で冬季オリンピックが開催されたのが、1998年2月である。この2月に30兆円の公的資金枠を設けた金融システム安定化法が成立するなど、日本では不良債権問題が大きくクローズアップされた。11月にはムーディーズによる日本国債の格下げがあり、年末には運用部ショックもあった。日本の財政悪化が加速されたのが、この1998年あたりからである。
もし2020年の東京オリンピック開催が決まれば、日本の財政にとっても、2020年が大きな節目の年になる可能性がある。2020年あたりまでは現在の国債発行ペースが維持できるかもしれないが、これがいつまで可能なのかは現時点ではっきりしない。できれば、これをきっかけに日本の財政悪化に歯止めが掛かり、財政再建への道筋が見えてくるような格好となれば良いが、過去のオリンピックの時と同様に財政がより厳しい状況になってしまう可能性もある。日本の財政が良い方向に向くのか、それとも悪い方向に向くのか、このあたりは当然ながら、政治家の仕事となろう。
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