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日銀の長期国債保有額が日銀券残高を上回る

 日銀が発表した8月10日現在の営業毎旬報告によると、日銀が保有する長期国債は約80兆9698億円となり、発行銀行券残高の約80兆7876億円を上回った。

 この長期国債とは資産のうちの国庫短期証券を除く国債の66兆4709億円と、別枠となっている資産買入等の基金のうちの国債14兆4989億円を加えたものである。

 日銀の国債買入には、行内ルールとして日銀の保有する国債残高を銀行券発行残高の範囲内とする運営ルール、いわゆる日銀券ルールが設けられている。

 日銀券ルールが設けられたのは、2001年3月19日の日銀金融政策決定会合の際である。日銀は量的緩和政策を決定し、その際に国債買切りの増額も決めている。このときに新たなルールが提案されたのである。 その際、当時の藤原副総裁は次のように発言している。

 「これまでの銀行券と長期国債保有をマッチさせるルールは守るべきだと思う。私としてはこれまでの増加額ルールをストックのルールに変え、本行の長期国債保有額の上限を銀行券発行残高とするのが良いのではないかと考える」(2001年3月19日の日銀金融政策決定会合議事録より)。

 国債の買入れについては、長期国債オペで成長通貨を供給するという目的で、それまではフローベースで増加額ルールを設けていたものを、ストックのルールに変えたことで日銀券ルールが生まれることになった。さらに当時の速水総裁は次のように発言をしている。

 「長期国債買切りオペの増額は、やりようによっては大きな副作用を伴うものである。今回の措置が国債の買い支えとか財政ファイナンスを目的とするものでないことは当然であるが、そうした誤解をされないためにも明確な歯止めを用意しておくことが不可欠だと思う。具体的には長期国債オペで成長通貨を供給するとこれまで私共が言ってきた考え方を堅持する意味で、今度は銀行券のフローではなく発行残高を上限として必要に応じ国債の買切りオペを行うという考え方が適当ではないかと思う」

 こうして「銀行券発行残高という明確な条件を設ける」という日銀券ルールが行内ルールとして生まれた。

 ただし、この日銀券ルールは、これまでの日銀の国債買入に適用されるものであり、基金で買い入れた国債は臨時措置のために分別管理されているため、形式上はまだ日銀券ルールに抵触はしていないと日銀はしている。

 しかし、別枠で買い入れようが、日銀が保有している国債が日銀券発行残高を上回ったことに変わりはない。実際には短期国債も加えれば、すでに日銀券ルールに抵触していたという事実もあり、日銀券ルールそのものの意味もかなり失われているのが現状であると思われる。

 政策金利はすでにゼロ近傍となり、これ以上の引き下げは現実的には難しい(マイナス金利という手段はあるが)。このため実質的な金融政策のターゲットは現在、資産買入等の基金の額となっている。その際に大きく基金の額を引き上げるには国債を中心にを増やすしかない。

 これについて市場参加者が、財政ファイナンスを目的とするものでないとの認識であるのであれば、特に大きく問題視されるものではない。欧米の中央銀行も大量の国債買入を実施しているが、それぞれ危機対応のためのものであり、財政ファイナンスを意識したものではない。日銀も同様との連想も働いていよう。

 日銀券ルールはあくまで歯止めをかけるためのものであり、「財政ファイナンスを目的とするものでない」と日銀が主張し、それをマーケットも受け止めれば問題はない。しかし、今後、マーケットが日銀は財政ファイナンスを目的に買入れている、もしくは財政規律を無視した国債発行がなされ、それに日銀も協力していると認識されてしまうと、長期金利の急上昇に結びつく懸念はある。

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by nihonkokusai | 2012-08-16 09:44 | 日銀 | Comments(0)
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