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「近いうち」と「近い将来」の違い

 「近い将来」と「近いうち」にはニュアンスからみて、どの程度の違いがあるのであろうか。「近い将来家を建てます」と「近いうち家を建てます」では、確かに「近いうち」のほうが現実味がある。このため、自民党の谷垣総裁は、8月に入り突然渋りだした消費増税法案の早期成立をあらためて受け入れたのであろうか・・・(たぶん何か別な要因があると思われるが)。

 7日から8日にかけて債券市場では国債が売られ、8日に10年債利回りは0.8%台に上昇している。ただし、0.8%であろうが長期金利が非常に低い位置に止まっているのは確かである。債券相場は久しぶりに動いて、先物もそれなりに崩れたが、この程度の下落は過去の下落相場に比べれば大きなものではなく、ごく普通の値幅である。

 しかも今回は昨日指摘したように債券先物のシステム障害による影響が多分にあり、また米債や株式市場の動向も影響していた。もし日本への信認が揺らいだとなれば、東京株式市場も売られてしかるべきではなかったろうか。さらには外為市場の動きを見ても日本売り、つまり円売りが入った形跡はあまり見られなかった。

 もちろん、今回の国債売りが消費増税の行方に全く関係なく、日本の財政再建の行方が国債市場には影響しないと言いたいわけではない。ただし、今回の国債市場の動きを見ても、政局の行方については、市場は一歩引いて見ていることが感じられるのである。

 毎月巨額の国債発行を肌身に感じている債券市場関係者にとり、日本の財政再建は避けられないとの認識を持つ人は多いはずである。それでも国債の入札は順調にこなしており、投資家の需要も引き続き強く、世界的なリスクオフの動きという海外要因もあるが、長期金利は1%を割り込んだままの状況が続いている。しかし、もし何かしらのきっかけで、この好循環の流れに変化が生じた場合には、大きな相場変動も起こりうる。ただし、それがそう簡単には起きない状況にあるのも事実である。

 今回の消費増税の行方については、むしろ三党合意が成立したことが意外、と見ている向きも多かったとみられる。もし仮に消費増税法案の成立が先送りされたとしても、国債相場が急落・暴落するようなことはなかったのではないかと思われる。現実に消費税が引き上げられても、財政に影響するのは数年先の話であるとともに、予定された引き上げでも国債発行額はそれほどは減額されないとの見込みとなっている。

 現在の国債市場の需給バランス等を見る限り、これが大きく崩れるとすればかなり衝撃的な材料がなければ難しい。民主党も自民党も財政再建は避けられないとの見方をしている限り、この安定した国債の需給バランスが変わらない限り、国債への信認失墜とかで急落することは考えづらい。

 ただし、国債も市場で取引されており、国債利回りが歴史的な低水準にあるというのも事実である。この背景には、米国やドイツなどの国債利回りの低下や円高など、欧州の信用危機を背景としたリスク回避の動きが根底にある。このため、こちらの動向に大きな変化が生じれば、日本国債も上昇相場から下落相場に転じる可能性がある。しかし、これはあくまで相場の上げ下げの一環である。

 つまり日本の国債市場は当面大量の国債発行を消化しうる土台があり、日本国債への信認を意識した仕掛け売りが成功するような状況にはない。ただし、永久にこの好環境が継続するということもまた考えられない。まだ消費増税を政局の道具にできるぐらいの余裕はあるのかもしれないが、いずれ真剣に財政再建に向けての舵取りをしなければ、取り返しのつかないことになるのも事実であろう。「近いうち」にはなくても「近い将来」に、日本の財政問題が国債市場で問題視される可能性がある限り、政治家はそのあたりを肝に銘じ、財政再建に向けた真剣な取り組みを行っていくべきではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2012-08-10 09:31 | 国債 | Comments(0)
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