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ドラギ対バイトマン

 8月2日のECB政策理事会では、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置いた。これは予想通り。下限金利の中銀預金金利もゼロ%に、上限金利の限界貸出金利も1.50%に据え置いたが、これについては下限金利をデンマーク中銀のようにマイナスにするのではないかとの期待が一部にあったようである。

 記者会見でドラギ総裁は、利下げの可能性について討議したことも明らかにした。このため9月に主要政策金利を0.25%引き下げ0.5%にするとの見方が強まっている。ECBはこれまで政策金利を動かす際には、前回の会合でそれを示唆するようなことが多い。ちなみにマイナス金利については、「未知の領域だ」との答えがあったそうである。

 市場が期待していたのは、利回りが大きく上昇していたスペインやイタリアの国債への対策であった。7月26日にECBのドラギ総裁はロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要ないかなる措置をも取る用意があると表明していた。このため、何かしらの対策が講じられ発表されると期待されたが、結果として具体策の発表はなかった。

 ドラギ総裁の会見では、イタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明したが、国債の買い支えの時期等や新たな政策の詳しい内容は明らかにされなかった。国債買入は9月以降となりそうで、さらに新たな債券買い入れに際しては、これまでのプログラムと異なり、厳格な条件が付くようである。短期債が主体で、債券が不胎化されるかどうかもはっきりしていない。

 このように債券買入について具体的な発表がなかったのは、ドイツ連銀(ブンデスバンク)のバイトマン総裁が国債買い入れプログラムに疑念を抱いていることが大きな要因になっている可能性がある。実際にドラギ総裁はバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにしている。ECBが採決の内容を外部に公表するのは日銀やFRB、ECBなどと異なり、極めて異例と言える。ただし、反対したのはバイトマン総裁だけで、過去に同様なことがあった際、ドイツ連銀に組みしたルクセンブルグやオランダの中銀総裁、さらにドイツ出身のアスムセン理事(ドイツの元財務次官)も今回ドイツ連銀側には付かなかったことは興味深い。

 ECBによるイタリアやスペイン国債の買い入れはいずれ実施される可能性はあるが、その内容はドイツ連銀の反対も影響し、これまでに比べて消極的なものになる可能性がある。またドラギ総裁は、数週間以内に、これまで行ってこなかった非伝統的な金融政策の追加の枠組みを準備するとの発言もあった。これはやや気になるところでもあるが、こちらもどれだけ踏み込んだ政策になるのかはわからない。

 今回のECBの対応については、事前のドラギ総裁発言を受けてもう少し踏み込んだ内容を市場では期待していた。このため、外為市場でのユーロや欧米の株式市場、そしてスペインやイタリア国債などへの失望売りを招き、ドラギ・ショックともいえるような動きとなった。

 マリオ・ドラギ総裁はイタリア出身ではあるが、ドイツ連銀の伝統を受け継いだ総裁とも見なされており、欧州危機に対しては積極的な対策を講じる必要性は認識していながらも、それに対して慎重なドイツ連銀のバイトマン総裁の考え方も十分理解しているとみられ、それが会見内容にもところどころ現れている。

 8月1日の米FOMCでは追加緩和については次回の可能性を示唆するような格好となり期待感は残したが、昨日コメントしたように実際に追加緩和が実施される可能性はむしろ低いようにも思われる。それよりもスペインやイタリア国債が再度売られてきたことでの、ECBへの対応の方が期待されたが、これも簡単には踏み込めず、何かと言えば中銀頼みとなっている状況で、その中央銀行による対応にも自ずと限界があることが見えてきつつある。

 外為市場ではECBは追加緩和をしなかったことで、ユーロが下落しているように、金利差などよりもリスクが大きな注目材料ともなっている。もしユーロに対しての円高を阻止しようとするならば、現状ではユーロへのリスクを後退させるか、円のリスクを増加させるしかない。もし為替介入により阻止しようとしても、市場の大きな流れを逆流させることはかなり困難である。

 同様にECBによる国債市場への介入も、スペインやイタリアのリスクそのものを後退させるわけではない。さらに、中銀のポートフォリオそのものへの警戒とともに、先々のインフレリスクも意識されよう。市場などではECBによる積極的な対策を望んでいようが、積極的に踏み出せないというのがECBの現状であり、それが今回市場で見透かされた格好となったものと思われる。

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by nihonkokusai | 2012-08-04 11:31 | 中央銀行 | Comments(0)
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