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日銀のこれから課題

 日銀は世界の中央銀行の先駆けとなる格好で、1999年2月にゼロ金利政策を導入し、政策金利をほぼゼロ近辺に引き下げた。このゼロ金利政策は2000年8月に解除されたが、その後、日本のデフレ圧力はさらに強まることとなり、2001年3月からは量的緩和政策を導入した。これは政策金利がこれ以上引き下げられないことから、政策目標を日銀の当座預金の残高にするという、過去に例のない政策を打ち出した。これは政策金利を上げ下げする伝統的な手段に対し、非伝統的手段と呼ばれた。

 デフレは日本独自のものであり、よもや欧米の中央銀行が同様の手段を取ることになろうとは、誰も考えてはいなかったのではなかろうか。

 日銀の量的緩和政策は結局、2006年3月まで続くこととなる。7月にはゼロ金利政策も解除され、2007年1月に政策金利は0.5%まで引き上げられた。しかし、日銀の政策金利の引き上げはここまでとなった。

 2007年あたりから、米国のアメリカの住宅価格の下落をきっかけに、サブプライム問題が発生し、それが2008年のリーマン・ショックを引き起こし、世界の金融経済に大きな衝撃を与えることとなった。日銀は再び利下げを行ったが、そののりしろはわずかに0.5%しかなく、オペの増額などで緩和効果を計った。

 それに対して、欧米の中央銀行は非伝統的手段を講ずることとなり、2009年3月にFRBはのちにQE1と呼ばれる量的緩和策を導入し国債等を買い入れることとなった。イングランド銀行も量的緩和策として国債の買入を決定したのである。

しかし、2010年にはいると今度はギリシャを発端とする欧州の信用不安が強まり、これが世界の金融市場を揺るがすこととなった。これに対して2010年5月にECBは市場機能の正常化を目的として、国債の流通市場に介入することを発表した。1999年のユーロ発足以来、欧州の中央銀行が国債の買入を実施するのは初めとなる。

 2010年10月に今度は日銀が、実質的なゼロ金利政策、時間軸の明確化、さらに国債を含めた資産買入等の基金創立を検討するという包括的な金融緩和策の実施を決定した。  そして、2012年1月にFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くことを決定し、日銀も2月に中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として「中長期的な物価安定の目途」を示すことを決定した。

 これはFRB、日銀ともに正式にはインフレ目標の導入と認めてはいないが、これまでインフレ目標の採用は行ってこなかった主要中銀がついに実質的なインフレ目標を導入したと認識されたのである。

 欧州の信用不安はギリシャを発端として、アイルランド、ポルトガル、そしてスペインに拡大してきた。いずれイタリアにも及ぶ可能性もあるなど、対策は幾度も講じられるが問題解決には至らず、むしろ問題は拡大し長期化する恐れもある。

 このような状況下、日本はさておき、欧米諸国も財政への懸念もあることで、財政政策には頼れず、このため自ずと対策は中央銀行頼みの状況が強まっている。

 安全資産として外為市場では円が買われたことで、円高抑制に向けた対策も日銀に求められ、さらに消費税増税による景気への影響も懸念されるため、この対策も日銀に委ねられた格好となった。

 基金の増額はどうしても国債中心に成らざるを得ないものの、日銀にとり財政ファイナンスとも意識されかねないため、国債の買入増加も慎重とならざるを得ない。

 しかし、このように日銀の慎重姿勢に対する批判も、与野党の一部から出ており、それが日銀法改正の動きにも繋がっている。しかし、この日銀法改正は日銀の独立性を損ないかねない。日本のこのような政治的な圧力は、世界の金融の歴史の流れに完全に逆行するような格好となっている。

 日欧米の中央銀行は、すでに非伝統的手段を取らざるを得ないが、さらなる緩和については限界もある。しかし、対策は中央銀行に期待され、期待を裏切られると批判される。特にその傾向が日本で顕著であり、これは日銀の政策委員の人事にまで影響を与えつつあり、日銀審議委員もやっとここにきてフルメンバーが揃った。さらに2013年には日銀の総裁、副総裁の後任人事も注目されている。今後の日銀総裁の後任人事や日銀法改正などの状況次第では日銀の信認そのものが試される可能性もある。それが日本の金融経済に大きな影響を与えかねない。このため、これからの日銀の動きに対しても注意して見て行く必要があろう。


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by nihonkokusai | 2012-07-30 09:48 | 日銀 | Comments(0)
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