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新日銀審議委員の金融政策に対するスタンス

 7月24日に日銀の佐藤審議委員・木内審議委員就任の記者会見が行われ、その要旨が25日に日銀のサイトにアップされた。今回はこの要旨から、2人の新審議委員の金融政策に対するスタンスを探ってみたい。

 その前に2人が審議委員として政府から提示された経緯を確認してみたい。今年の4月4日に日銀の中村審議委員と亀崎審議委員は任期満了となったが、後任人事は混迷した。まず、亀崎委員の後任人事の提示が見送られたのは、事前に候補者名が報じられ、これにより政府が今回の提示を断念したとの見解も示された。その際、一部報道で名前が挙がっていたのは伊藤忠相談役の渡辺康平氏だが、これについては自民党議員がそれはありえない、との発言も出ていた。

 そして、中村清次審議委員の後任については、3月23日に河野龍太郎氏を起用する人事案を政府は提示していたが、これは野党の反対により両議院の同意という条件を満たせなかった。河野氏が日銀寄りのスタンスであるからとの理由で、与党民主党内からも反対の意見が挙がったのである。

 しかし、長期に渡る日銀審議委員の空席を回避するため、政府としては与野党から反対されない人事案を出す必要に迫られた。その結論として出されたのが、佐藤氏と木内氏であろう。いわゆるマーケット枠が急に2人となったのは、欧米の中銀のスタイルに近づける意図もあったのかもしれないが、実業界から持ってくることが困難であったことも想像される。

 反対されない人事案であったということで、新審議委員のスタイルはハト派、つまり金融緩和に積極派とのイメージが強いかもしれない。マスコミでもそのような報じられ方をしているように感じるが、現実にはそうではないのではなかろうか。

 たしかに佐藤氏はこれまでの日銀の政策にやや批判的かとの印象を個人的には持っていたが、木内氏については日銀に対するスタンスは個人的に明確ではなかった。たしかに今年に入ってのレポートで木内氏は「政府と日銀の連帯強化」が必要との持論も展開していたことを報じられてはいたが、どちらかといえば木内氏は中立的なスタンスではないのかとの印象である。そのあたりを探るためにも、今回の記者会見の内容は参考になる。

 早速、会見内容を確認してみると、日銀が示している物価のパス、またデフレ脱却のパスを満たすにあたり、佐藤氏は「資産買入れ等の金融緩和が、如何にして物価の回復に結び付くのかというパスを、もう少しクリアにしていけるような、そういった政策運営が必要なのではないか」と指摘している。そのパスが見出せずになかなか苦労しているのが日銀であるが、ぜひこのあたり新鮮な意見を出していただきたい。

 ちなみに佐藤氏はこの発言の前に、「現状の金融政策については、周知の通り、強力な金融緩和を進めているということで、資産買入れ基金の増額を順次進めてきていると理解しています。」としている。

 ちなみに木内氏も「現状の経済のもと、デフレ圧力は緩和の方向に向かっていることは確かだと思います」と発言している。ただし、2014年度にかけて1%に達するかどうかについては疑問を投げかけいている。そのため、新たな形の金融緩和を柔軟に考えていくことが必要としている。これは緩和論者というよりも現在の日銀のスタイルそのものであろう。

 金融緩和における為替への影響について佐藤氏は、「日銀が努力はしていますが、なかなか努力の割に報われないというところは、そういった海外要因も影響しているかと思います。」とも指摘している。そういえば、河野龍太郎氏はかつて無制限介入を唱えていたことがあったらしい。このあたり、佐藤氏よりも河野氏の方が、むしろ河野氏を反対していた議員の考え方に近かったのではなかろうか。

 木内氏はデフレについて、「インフレ率の期待については、金融政策である程度上げることが可能ではないかと思います」としている。ただし、「引き続き、インフレ期待の引き上げというのは、日本銀行がデフレ脱却に向けた強い姿勢を示すことで、ある程度可能な分野ではないかと思っています。」・・・ハト派であろうか。

 「限られた選択肢の中から知恵を絞って、常にデフレ脱却に向けて新たな政策を考え出していくという姿勢は、今後も必要だろうと思っています」との木内氏の意見もあり、まさにその通りであるが、これも日銀の現在のスタイルそのものであろう。

 物価安定の目途としての1%という数字については、佐藤氏は理想的には2%としながら、「スタート地点として 1%を目指していくという、現状の日銀の考え方は理解できる」としている。

 また、「当面の目途としての 1%というのは、結論から申し上げると妥当かと思っています。」との木内氏のコメントもあった。

 以下、もう少し踏み込んでみたいところだが、長くなってしまいそうなので、結論を言えば、2人の新審議委員は現在の日銀のスタイルからそんなに離れているわけではない。むしろかなり近いように感じる。もちろん最初の会見であり、少し控えめにコメントしていたとか、日銀担当者の意見が反映されたためとの見方も出ようが、それなりに自らの意見を述べていたとの印象である。

 そして佐藤氏は「国債の直接引受け、これは、財政規律の観点から厳に避けるべき」と指摘し、木内氏も「国債の買入れが財政の規律を緩めることにならないかどうか、そういうリスクを常に意識して政策を運営しなければならないのではないかと思っています。」と指摘している。まさにその通りであるかと思う。

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by nihonkokusai | 2012-07-27 09:36 | 日銀 | Comments(0)
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