LIBOR問題に関しての日銀総裁発言
「LIBORもTIBORも、金融市場における重要な金利指標であり、こうした不正操作は、金融市場の公正性に対する信頼を損ない、市場メカニズムの健全な発展を阻害しかねない大変深刻な問題です。金融機関においては、こうした不正を防止できるような体制を確保するとともに、金利指標の作成に関わる諸機関が、指標の信頼性を確保できる枠組みを整えることが、金融市場への信認確保にとって重要と考えています。」
問題の元になっている金融機関のみならず、「金利指標の作成に関わる諸機関」に対して信頼確保のために体制作りを促しているが、この諸機関とはLIBORについては英国銀行協会(BBA)のことを指すと思われる。
「米国の金融当局は、2007年当時に不正操作を把握していたとのことですが、日本銀行は不正操作を把握していたのでしょうか」との質問が出ていたが、これについて白川総裁は、「米国、あるいは英国もそうですが、個々の金融機関の不正行為の有無を検証するのは規制監督当局だと思います。日本銀行は行政上の規制監督当局ではありませんので、個々の金融機関について不正行為があったかどうかを直接検証する立場ではありません」と答えている。
この質問をした記者の意図は、LIBORの不正に関してイングランド銀行やニューヨーク連銀がそれを把握していたのではないかとの見方もあり、日銀もその情報を共有していたのかとの問いであったのではないかと思う。しかし、それについて白川総裁は、個々の金融機関の不正行為の有無を検証するのは規制監督当局であり、日銀は規制監督当局ではないため、不正行為があったかどうかを直接検証する立場ではないとした。ちなみにイングランド銀行のキング総裁も、17日の議会証言にて、「2週間前に英金融サービス機構(FSA)が報告書を提出した際に、LIBORの操作問題について初めて知った」と述べている。
日銀がこの問題を把握していたかどうかについては、FRBやBOEとの情報共有等の状況含めて知りたいところではあるが、問題が大きくなり、当然ながら白川総裁もキング総裁も迂闊には答えられない問題でもあろう。ただし、様々な金利の動向について、中央銀行の立場から注意深くみていることは確かであり、LIBOR動向についても関心を持ってみていたことは十分に考えられる。
さて、総裁は日銀は規制監督当局ではないとしていたが、日本の規制監督当局とは金融庁となる。しかし、日銀も金融システムの安定(信用秩序の維持)を図るための手段のひとつとして、金融機関に対して考査や日々のオフサイト・モニタリングなどを行っている。
日銀の金融機関に対する考査は、日銀が金融機関との契約(考査契約)に基づいて行っているものであり、行政権限の行使として行われている金融庁の検査とは法的な位置づけが異なっている。
また、考査結果については、日銀は考査に関する契約および日本銀行法第29条によって守秘義務を負っているため公表されない。また、考査は金融庁検査と異なり行政権限の行使ではないため、金融機関に対する法律上の罰則はない。しかし、金融機関に対して、業務改善に関する指導や要請を行っている。
考査先金融機関が正当な理由なく考査や情報提供を拒絶した場合などには、日銀がその事実を公表することもある。さらに、日銀がその金融機関との当座預金取引を解約することもありえる。もし、そうなった場合には金融機関にとっては日銀と取引ができなくなるという、罰則以上に深刻な事態となる。
(拙著「最新短期金融市場の基本とカラクリがよーくわかる本[第2版]」原稿より)
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