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国債の利回りが預金金利より高いのは変なのか

 高橋洋一氏がZAKZAK(産経新聞計のネットサイト)に連載「日本」の解き方、「国債利回りが預金金利より高いのは変!」をアップしている。内容を読むとどうやら個人向け国債の話のようなのだが、何点かおかしなところがあったので、そこを指摘しておきたい。

 最初に8月に発行する個人向け復興国債の条件について指摘しているが、何故、このタイミングなのかがひとつ疑問であった。確かに個人向け復興債の3年利付のものは毎月発行されているが、積極的にCMなどを流して金融機関も販売に力を入れているのは、四半期毎に出る5年固定と10年変動の募集のタイミングであり、そのときのほうが世間の関心度も高いと思うのだが、これはいろいろと事情があったかもしれない。

 8月の3年物(固定金利型)の金利は年0.07%で過去最低の金利だった7月と同じ利率、昨年12月の販売から個人向け国債が復興国債に改称され、滑り出しは好調だったが、最近の販売は低調だというのもその通り、個人向け復興債3年物の金利0.07%が、3年物の市場実勢というか基準金利が0.1%だったのでそれから0.03%を差し引いているのも確かである。3年物の利率を決定する基準金利とは、募集期間開始日の2営業日前において、市場実勢利回りを基に計算した 期間3年の固定利付国債の想定利回りのことを示す。

 なぜ0.03%を引くかについて、財務省のホームページでは「中途換金などの商品性を総合的に勘案することが必要」とある。債券では、通常の場合、中途換金は売却によって行われ、その時の市場実勢によっては額面どおりの金額が受け取れない場合もあるというご指摘もその通り。市場実勢利回りが購入当初より高ければ額面割れする。一方、市場実勢利回りが低ければ、額面以上で売却できるので中途換金で得をした気分になるとの指摘は、やや微妙。得をした気分との表現は現実には途中売却にあたって業者は手数料相当分を差し引くことが多いため、たとえ購入時より利回りが低下していても必ず得をするとは限らないので、「得をした気分」というな表現となったのかもしれない。得する場合もあるので念のため。

 個人向け国債の場合には、中途換金で額面割れや額面以上が出ないようにしている。いってみれば、個人向け国債の購入者に中途換金での価格変動リスクを負わせないが、その対価として金利が0.03%低くなるという考えというのも、ある意味確かである。ただし、途中売却ができない期間があるなど、やや説明不足である。

 ただし、「中途換金するかしないかは購入者に依存するわけで、中途換金する場合、価格変動リスクを負ってもいい人や中途換金しようと思わない人には0.1%、中途換金する場合、価格変動リスクを負いたくない人には0.07%という個人向け国債を二本立てにする商品設計も可能だ。そのほうが購入者を一律に扱う現行の方法よりまともだろう。」はもう少し調べてからコメントすべきはなかろうか。

 個人が買える国債は個人向け復興債だけではない。価格変動リスクのある通常の国債を個人が購入することも当然可能であり、また新窓販国債として価格変動リスクがある2年債、5年債、10年債が発行されており、3年債はないが個人向けの国債はすでに二本立てになっている。

 「このような個人向け国債の商品設計自体の問題もあるが、金融機関の預金金利にも問題がある。最近は、ネット銀行などで国債金利を上回る預金金利を持つ定期預金が出てきたが、依然として大手銀行などでは預金金利が低い。例えば、大手都市銀行の3年物定期預金金利は0・04%だ。」

 預金金利が低いのは、そもそも景気物価等により日銀が短期金利をゼロ近辺に抑えていることが要因であるとともに、銀行が定期預金などでは金利変動リスクを負っている事に加え、銀行の収益が貸出金利や国債金利の利ざやとなるためであり、さらに定期性預金の預金保険料率も加味する必要があるなど、この預金金利の設定そのものは銀行も商売をしている以上は致し方のないものであろう。さらに。個人向け国債は発行されてから1年間は売却ができない。さらに途中売却時には直前2回分の利子、つまり1年間分の利子がペナルティとして差し引かれる。それも加味しての説明も必要であろう。

「となると銀行としては、個人向け国債を販売するインセンティブは出てこない。3年物の国債であれば、0・1%の運用ができるので、0・06%の利ざやになるからだ。リスクの少ない国債に投資して利益が出るのだから銀行としておいしい。」

 この部分の意味がわからない。銀行が個人向け国債を販売する目的は、ひとつは顧客の資金を銀行に引き留めることであるとともに、個人向け国債を販売する大きなインセンティブが存在するためである。復興個人向け国債、復興応援国債ともに、10年債・5年債は50銭。3年債は40銭の手数料を銀行など販売会社は得られる。このことは財務省のサイトには載っていなかったかもしれないが、元財務官僚であり理財局にもいた方であれば、ある程度想定できたのではなかろうか。さらに、銀行は低い金利で資金を得て、少しでも高い国債に投資すれば利ざやが抜けるというのはあくまで運用の話であり、国債の販売とは直接に関係のある話ではなかろう。また、これに関しては知り合いのトレーダーが、このような指摘もしている。ご本人の許可を得て掲載させていただく。

 現在の定期性預金の預金保険料率が0.082%ですので0.04%で調達した3年定期預金の預金保険料込みのコストは0.122%となりまして、残念ながら単体で赤字(実際はこれに各種事務コストが載ります)(某メモより)

 「ただし、よく考えてみれば、信用力で国より劣る銀行預金の金利が国債金利より低いのはおかしい話だ。これまで財務省が本格的な個人向け国債を作らず個人投資家を軽視して、金融機関向け消化に依存してきた歪みが出ているのだろう。」

 そもそも昔あった国債引受シンジケート団での証券引き受け分は個人向け消化分との認識であったはずである。しかし、証券会社の国債販売は手数料が他商品より低いなどしたことで積極的ではなかった経緯がある。販売裾野を広げるため、もう少し早めに個人向け国債を作るべきとの意見は、確かにそうであったかもしれないが、個人向け国債がなかったから銀行預金金利が低く抑えられていたわけでもなかろう。預貯金の金利の低さは信用力による影響も当然あるが、それ以外の要因も大きいのである。

 「国債は銀行預金より金利が高くてより安心という事実をもっと国民が知る必要がある。知らないと金融機関ばかりが濡れ手で粟だ。」

 この意見については、特に前者については同意であり、その事実はぜひ元財務官僚としても広めて頂きたい気がする。ただし、果たしてこのままずっと大量の国債を保有している金融機関が濡れ手で粟となり続けるのかどうかは多少疑問もある。

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by nihonkokusai | 2012-07-11 14:36 | 国債 | Comments(0)
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