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ECB、BOEの追加緩和と日銀の追加緩和の可能性

 7月5日のECB政策理事会やイングランド銀行のMPCでは予想通りの追加緩和を決定し、ついでに中国まで、同じような時間帯で利下げを発表した。

 5日に開催されたECB政策理事会では、政策金利であるリファイナンス金利を0.25%下げて、1999年のユーロ導入以来の過去最低水準となる0.75%とすることを決定した。また、民間銀行がECBに預金を預け入れる際の預金ファシリティ金利(日銀当座預金の超過準備の付利に相当)も0.25%引き下げられゼロ%となる。

 預金ファシリティ金利をゼロにしたことについては市場関係者の間では、意外感もあったようである。日本も量的緩和を行った際に短期金融市場の機能が失われたことで、現在は日銀の超過準備に対して付利がなされ、それが短期金利の下限となり、短期金利の機能を損なわないように配慮されている。

 今回のECBの預金ファシリティ金利の引き下げにより、日銀の当座預金への付利引き下げ観測も出ていたようだが、その可能性は薄いと思われる。そもそも追加緩和そのものの可能性は薄いとみているためである。

 今回のECBの利下げについてドラギ総裁は、「景気悪化のリスクが現実になったため」とした。日経新聞によると、ECBの場合は政策金利を反映させるのに時間がかかるため、実施は即日ではなく11日からとなる。

 このECBの追加緩和の決定より少し前、イングランド銀行のMPCでは資産購入枠を500億ポンド拡大し3750億ポンドに拡大し、2か月前にいったん打ち切ったQEの再開を決定した。今回は1回当たりの購入規模を減らして、実施期間をこれまでの3か月から4か月に延長した。ただし、政策金利は過去最低水準の0.5%に据え置いた。

 そして、このMPCの追加緩和とほぼ同時に中国人民銀行が、この1か月で2回目の利下げを発表したのである。中国人民銀行は貸出基準金利の1年物を0.31%下げて6%に、預金基準金利の1年物定期預金を0.25%引き下げ3%にした。市中銀行の融資金利の基準金利に対する割引も最大30%まで認めることになった。つまり1年貸出基準金利は利下げ後に4.2%まで下げ可能となる。

 興味深かったのは、この中国人民銀行の利下げの発表のタイミングである。中国の金融政策の最終的な判断は政府にあるため、発表時間はどうしてもまちまちとなり、今回のような時間帯になってもおかしくはない、しかし、今回はわざとBOEやECBのタイミングに合わせてきた可能性もある。中国にとりユーロは最大の貿易相手国でもある。

 このようにECB、BOEは事前予想通りに追加緩和を実施し、中国人民銀行も利下げを行った。それでは来週11日、12日に開催される日銀の金融政策決定会合では追加緩和の可能性はあるのであろうか。

 現在の日銀の金融政策を見る上で、個人的には3つのポイントを確認する必要があると思っている。それは景気物価等のファンダメンタルズの動向、そして外為市場や株式市場を中心とするマーケットの動向、そして政治からの圧力の動向である。

 最初のファンダメンタルズについては、今回は2日に日銀の金融政策において最も重視される短観が発表されており、この内容が吟味されよう。設備投資等かなり良い数字となっており、少なくとも追加緩和を促すような内容ではない。さらに昨日のさくらレポートでは、全地域が前回から改善されていた。欧米の景気減速への懸念もあるが、日銀としては「わが国の経済は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。」(日銀支店長会議の総裁挨拶より)との認識であり、ファンダメンタルズから見て、追加緩和の可能性はないと見て良いのではなかろうか。

 次に外為市場や株式市場を中心とするマーケットの動向である。ECBの追加緩和により、ユーロに対して円高が進んでいることなど気になるが、ここには3つ目の政治からの圧力を加味して考えると、ドル円での円高進行が限定的であれば、追加緩和の可能性は薄くなろう。まして、株式市場は日経平均の9000円台でのしっかりした動きとなっていることも、マーケットからの追加緩和圧力を軽減させると思われる。

 ただし、7月31日、8月1日開催のFOMCで、もし追加緩和が決定され、それによりドルに対しても円高が進行するようなことになれば、日銀はそれを確認して追加緩和を行う可能性はありうる。つまりそれまではカードは切らず、温存していたほうが良いとも言える。

 3つ目の政治からの圧力については、現状、政府もいろいろとあり、それどころではないと思われ、日銀の金融政策への関心はそれほど高いとは思えない。

 7月の決定会合では、展望レポートの中間レビューが発表される。この際に物価見通しが下方修正される見込みともなっているようで、このため追加緩和の可能性を指摘する見方もある。しかし、展望レポートの内容などをもとに追加緩和を行うとすれば、きりがなくなる。確かに4月27日の追加緩和は展望レポートがひとつの要因となったことは確かであろうが、今回はそれとは切り離し、とりあえず足下の日銀の景況感やマーケットの落ち着きを見て、さらに今月末のFOMCもあることで、金融政策は現状維持となる可能性が高いとみている。


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by nihonkokusai | 2012-07-07 10:44 | 日銀
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