牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

LIBORはなぜ不正操作されたのか

 ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作問題を受け、英国の大手銀行であるバークレイズのボブ・ダイヤモンド最高経営責任者(CEO)が3日、辞任した。これがいったいどのような問題であるのかをあらためて確認したいと思う。

 そもそもの発端は2008年4月にウォールストリート・ジャーナルが、LIBORがもはや信頼できないかもしれないとの懸念を銀行家やトレーダーが抱いていると報道したことによる。これを受け、英国銀行協会(BBA)が調査に乗り出し、実勢とかい離した金利を提示する銀行をリファレンスバンク(金利提示銀行)から外すとの観測も出た。ウォール・ストリート・ジャーナルは「資金繰りに困っているという印象を与えないために銀行が金利を正確に報告していないと市場は懸念を抱いている」としていたのである。(2008年4月18日の牛さん熊さんブログより)。

 LIBORとは「London InterBank Offered Rate」の略で、一般的には英国銀行協会(British Bankers Association)が複数の銀行の金利を平均値化して、ロンドン時間午前11時に毎日発表するBBA LIBORのことを指している。米ドルだけでなく英ポンド、日本円、ユーロ、豪ドル、ニュージーランドドル、スイスフラン、カナダドル、デンマーククローネの9通貨について発表され、歴史もあり短期金利の重要な指標となっている。

 ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)は、英国の住宅ローンや預金金利などに直接影響する金利であるともに、国際的な融資などにおける国際金融取引の基準金利として、またスワップ金利などデリバティブ商品の基準金利としても利用されている。

 LIBORを基準に金利が決まる取引は、総額360兆ドルにものぼるそうである(2012年7月6日日経新聞社説より)

 英米当局は1年以上にわたる捜査で、バークレイズが2005~2009年に虚偽申告を繰り返し、経済の実態とかけ離れてLIBORを上げ下げしたと結論づけた。この調査では、バークレイズのトレーダーがLIBOR担当者に「1か月物と3か月物の数値をできる限り高くしてほしい」と頼んだメールも見つかったようだが、それとは反対に銀行協会に申告する数字が他行よりも高いことを経営陣が嫌がり、実態に比べて低い数字を出したケースもあったようである。これはサブプライム問題等からリーマン・ショックにいたる間、金融機関への懸念が極度に高まり、銀行数字が高いのは経営不安の裏返しだと市場に解釈されるのを恐れたためとみられる。

 ただし、2008年10月9日付のバークレイズの内部メモによると、イングランド銀行のタッカー副総裁が常に高い金利を報告する必要はないと話していたことも明らかになったようで、このあたりも問題を複雑化させている。ただし、4日の議会特別委員会の証言で、ダイアモンド氏はタッカー副総裁との会話について、バークレイズの借り入れ金利動向について政治家が懸念していることに対する警告と受け止めたが、実態隠しを容認しているとは解釈しなかったと述べたそうである(ロイター)。

 バークレイズはこの不正の事実を認めて先週、米英当局に総額2億9000万ポンドもの巨額の罰金を払った。さらにマーカス・エイジアス会長の辞任表明や役員賞与返上などにより、他行に先駆けて非を認め、早々に幕引きを行おうとしたとみられる。ところがその幕引きを、ターナー金融サービス機構(FSA)長官やイングランド銀行のキング総裁が阻止し、この結果、責任が会長より重いボブ・ダイヤモンド最高経営責任者(CEO)が辞任することになった。この背景には、英国政府の意向なども強く働いていた可能性がある。

 LIBORの調査は米国や日本を含めて他の金融機関でも行われており、その結果次第では問題がさらに拡大する可能性もある。これにより銀行への規制強化が進む可能性も指摘されている。また、英政府は今回の騒動を踏まえて、LIBORの設定方法も見直す委員会を設ける方針も表明している。

 ただし、このような金利の提示について、現実にはどうしても裁量の余地が存在してしまう。毎日、各種金利が発表されて、それが債券価格等を算出する基準となっているが、すべての金利が毎日ついているわけではない。たとえば、日本ではここにきて日本相互証券では2年債カレント物が出合う日がほとんどない。それでも基準利回りは発表されている。それはイールドカーブの状況や、需給動向等、オファー・ビッド等を見ながら業者がだいたいの目安の位置を出しているためである。2年債を保有しているところは、それを基準に債券の保有価格を算出する。LIBORでも同様に常に付いた金利だけをそのまま出しているわけではなかろう。そこに自己のポジションや、外部からの評価を意識して多少、金利水準に変更を加えることがあったとしても、それはそれで致し方のない面もある。もちろん、あからさまな数値の操作は問題があり、だからこそ今回の問題が発生したわけではあるが。


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp




[PR]
by nihonkokusai | 2012-07-05 10:01 | 債券市場 | Comments(1)
Commented by ゆき at 2012-07-13 21:15 x
はじめまして☆

ゆきと申します。

LIBOR不正操作の問題にとても関心があります。
また日本のTIBORの推移にも個人的に疑問を持っています。

牛さん熊さんは、近年のTIBORの推移を
どのように受け止めていらっしゃいますか?

よろしければご意見をお聞かせください。
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー