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2002年の日銀による国債買入制限緩和の理由

 2002年1月16日の日銀金融政策決定会合において、国債の買い切りオペの対象を「発行後1年以内のもののうち発行年限別の直近発行2銘柄を除く」ことで拡大することを決定した。これは1月17日より実施されることになった。

 これが決定される過程について詳しいことは、7月にも発表されると思われる当時の金融政策決定会合の議事録を確認したいが、この件については当時の私のコラムが残っており、今回はこれを元にして、なぜ日銀による国債買入の制限が緩和されたのかを探ってみることにする。「」内が当時私が書いたものである。

 「昭和42年1月、戦後初めて発行された国債が1年経過した時点で日銀は発行後1年たった国債を買い切りオペに加えることを決定した。財政法で禁じられている日銀による国債の直接引き受けを避ける意味合いから1年というルールを設けたものと思われる。これにより国債を半ば強制的に引き受けさせられていた銀行の国債は1年たつと日銀の買い切りオペで吸い上げられるようになり、当時7年の国債も実質1年の国債と同様であった。」(2002年1月16日の債券ディーリングルーム「若き知」より)。

 当時発行されていた国債は7年満期の国債であった。10年に期間が延びたのは1972年(昭和47年)1月からである。銀行は半ば強制的に引き受けさせられていたとの表現があるが、これは当時発行された国債の引受先が大蔵省の資金運用部と国債引受シンジケート団であり、引き受けた銀行はその国債を自由に売却することができなかったためである。

 「ところが次第に国債の発行額が増加しこのままだとインフレを引き起こす可能性が指摘され金融機関の保有する国債の市中売却が認められた。日銀の国債買い切りは資金供給手段のひとつとしてその後も続けられた。」

 1977年に金融機関の取得した国債の流動化がスタートしている。日銀による国債買入で吸収される国債の比率が低下し、都銀等の預金増加額に占める国債引受の割合が急増していたため、借換債の発行をしていなかった特例国債の市場売却については、各金融機関の自主的な判断に委ねられたのである。ただし、引き受け後一年間は引き続き売却を自粛することとされた。また建設国債に対しても借換方式を見直すことを前提に流動化が開始されたのである。ただし、銀行による国債などの本格的なフルディーリングが認められたのは、つまり何ら制限なく売り買いが可能となったのは1985年6月であった。

 「国債発行額がさらに増加したことやデフレの進行により日銀は段階的に国債買い切りオペを増額していった。ただし日銀券発行残高までという制限もつけた。」

 あっさりと歴史が飛ぶが、日銀は2001年3月に量的緩和策を導入し、それとともに国債買入額を増加させてきた。ただし、日銀が保有する国債の額を日銀券発行残高までにするという自主ルール、いわゆる日銀券ルールを設けたのである。

 「そして本日、日銀はついにこの1年ルールを変更することにしたのである。米国でもFEDは資金供給手段の手段として米国債の買い切りを行っており、しかも直近発行銘柄を除くという条件付きである。日銀はすでにTBの買い切りなど行っており実際に1年というルールが必要かとの問題もあり、1年ルールの撤廃を求める声も強かった。」

 このあたりが1年ルールを撤廃した理由となったとみられる。FRBによる米国債の買い入れが、直近発行銘柄を除くという条件となっていたことは、確かに日銀としても見直すための要因となったと思われる。

 ちなみに米国でも連邦準備法により国債引受は禁じられている。また、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっている。

 TBというのは短期国債であり、現在はFBとともに国庫短期証券として発行されているが、期間1年以下の国債である。つまりすでに日銀は発行されて1年経たない国債を買い入れていた。そして市場からも1年ルールの撤廃を求める声が強かったように記憶している。

 「しかしそれは限りなく国債引受に近づく。そこで来年度の国債発行額が30兆円に押さえられ、とりあえず財政の規律の喪失に直結しないこの時期に発表したものと思われる。もしくは今後は公的資金の導入、もしくは景気悪化のための財政出動の可能性はあるために、国債増発観測が出てくるタイミングでの発表はむずかしくなることも確かである。今回の発表で債券市場は素直に買いで反応した。今回の銘柄拡大自体は債券市場にとってはプラスとなろう。しかし、財政構造改革が挫折するようなことになると日銀の国債引受といった意味合いが強くなる可能性もあるために注意も必要であろう。」

 なぜこのタイミングでの発表であったのかについては、議事録を確認したいが、財政ファイナンスと認識されないよう気をつけていた可能性はあったのかもしれない。いずれにしても、日銀による国債買入は「財政ファイナンス」とは切り離して、市場への資金供給手段としての認識である、ということをかなり意識していたことは伺える。

 しかし、日銀はその後基金という別腹を設けて、さらに国債の買入を進めている。目的はどうあれ、中央銀行が国債を大量に買い入れているのは事実であり、すでに国債残高に占める日銀の保有シェアは10%近くになっている。国債消化のために日銀の果たす役割というか、需給における影響は大きくなりつつある。今後も日銀への追加緩和要求が高まり、その結果、基金による国債買入の額を増加させたり、買入国債の条件を緩和するようなことになれば、次第に財政ファイナンスとして意識されてしまう可能性もないとはいえない。このあたりも日銀が追加緩和を慎重にさせる要因のひとつとなっているのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2012-07-02 09:32 | 日銀 | Comments(0)
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